第弐拾参話 新地へ
次の日の朝、4人は宿の入り口に集合していた。
「準備できたか?」
「はい。」
「OK〜♪」
「大丈夫です。」
三者三様の返事を聞き、鶯劍はわざわざ見送ってくれる白斗の父に話しかけた。
「マスター、世話になった。」
「「「ありがとうございました。」」」
残りの3人も声を合わせて礼を言った。
「いえいえ、また来てくださいね。」
「ああ、そうさせてもらう。」
鶯劍は足下の荷物を龍牙に押し付け外へ出た。
「自分の荷物くらい持ってくださいよ。」
「却下だ。」
あからさまにため息をつく龍牙に苦笑いしながら、マスターは白斗を呼んだ。
「出口へは白斗に案内させますので。」
「ああ、助かるよ。」
「それじゃあ行きますか。」
白斗の言葉に4人は頷き、宿を後にした。
「ロスカ樹林に行くのであればここから出るのが一番早いはずです。」
だけど、と白斗は続ける。
「最近、ロスカ樹林で植物系モンスターや魔物が暴れているみたいですよ。」
「そうか。」
その反応に白斗は心配そうな声を上げる。
「やっぱり行かれるんですね…」
少し寂しそうな表情の白斗の肩に鶯劍は手を置いた。
「また戻ってくる。その時はまた案内を頼む。」
「・・・はい!!」
呆然とした後白斗は笑顔で頷いた。
「じゃあ、行きますか。」
「しゅっぱ〜つしんこ〜!!」
もうお馴染みとなった麗那の言葉を合図に、4人は歩き始めた。
「先生も結構不器用ですね。」
クックックッと含み笑いする龍牙。
「う、うるさい!!」
慌てて言い返す鶯劍の滑稽さに3人はしばらくの間、笑顔が絶えなかった。
???
またあの真っ白な部屋の中、黒いコートを着た者達が円形の机を囲んでいた。
机の周りには13のイスが並んでいるが、この集団のリーダーが座ると思われる椅子は空席だった。
「あの御方はどうしたんだ?」
黒いツンツンヘアーのクロドが口を開いた。
「計画の1つにあの御方でないといけない部分がありまして、そちらに向かわれています。」
フードをかぶっているため顔は見えないが、声からしてあの少年だろう。
「レイヴン、その内容はなんだ?」
今度はあの大柄で赤髪のガイスだ。
レイヴンと呼ばれたその少年は、虚空からあの本を取り出した。
「『あれ』の起動術式の構築です。」
「そうか。」
ガイスは腕を組み、背もたれに体を預けると目を閉じた。
「では、定期報告会を始めましょうか。」