第壱拾四話 期待
龍牙は泣きつかれて寝始めた麗那をゆっくりとベッドに寝かせ、その頬を撫でた。
「俺、誓うよ。もう、麗那に、こんな悲しい顔をさせないって。」
龍牙は立ち上がり、ユウに顔を向ける。
それにユウはゆっくりと頷き、2人は奏花を残し、一階へと向かった。
一階ではケイミーと黎明が何事か話していた。
龍牙達が降りて来たのを見ると、ケイミーは立ち上がり声をかけた。
「ねぇ、鍛冶屋に行くの付き合ってくれない?」
「えっと・・・。」
「ええ、いいですよ。」
口ごもる龍牙の横でユウが即座に答えた。
(ちょっとユウさん)
(大丈夫だから僕に任せてくれないかい?)
(・・・分かりましたよ。)
「はい、そこ!!こそこそ話さないでさっさと行くよ!!」
「あっ、待って下さいよ!!」
2人は慌てて先に飛び出したケイミーの後を追って戸口へと向かった。
3人はケイミーが前、龍牙とユウがその後に続くようにして歩いていた。
「ねえ。」
突然ケイミーは立ち止まり口を開いた。
必然的にその後ろを歩いていた2人の足も止まる。
ケイミーは振り返らずさらに続けた。
「麗ちゃんに何かあった?」
いきなり核心を突く質問に龍牙は戸惑った。
しかし、そんな龍牙をまた無視してユウが答えた。
「目を覚ましたんですよ。」
「ホントに!?」
ケイミーはユウの言葉に即座に振り返り満面の笑みを浮かべたが、龍牙とユウの顔色からなにか感じとったのか、真顔でゆっくりと尋ねた。
「何か、あったの?」
ユウは口を開こうとしたが、それよりも早く龍牙が説明を始めた。
龍牙の説明は簡単なものだった。
麗那は目を覚ましたが、その目は薄ぼんやりと色を認識するくらいの視力しか残っていない。それを麗那は必死に隠そうとしたこと。その目には涙が溜まっていたことを。
ケイミーもその説明を聞いて今にも泣きそうな顔をしていたが、目をゴシゴシとこすると、俯く龍牙と壁にもたれかかるユウの手を取り、歩きだした。
「ちょっ、どうしたんですか?ケイミーさん?」
「いいから、着いてきて。」
「はあ。」
(私の予想さえ合っていればあの人なら・・・。)
ケイミーは自分の思った通りであることを願ながら、ある場所へと向かった。