第壱拾壱話 告白
「よっこらしょ。」
ユウはかけ声と共に背負っていた、龍牙が入っているであろう繭をベッドの上に降ろす。 その横には麗那が寝かされている。
残るケイミーは近くの椅子に座っていた。すでに怪我は回復して、あとは疲労のみだったので、寝ようかと思っていたが、麗那達のことが気になってしまい寝るに寝れなかったのだ。
誰もこんな変わり果てた2人を見て何も言えずにいた。
「あれはいったいなんだったんですか?」
この沈黙を破ったのはケイミーだった。その声は微かに震えていた。
「あれというのは?」 鶯劍が全く分からないと言うように無機質な声で返す。
「とぼけないで下さい!!あの麗ちゃんの背中から生えていた白い翼ですよ!! 鶯劍さんは知ったいるんでしょう?」
「・・・」
「鶯劍さん!!」
「私が答えましょう。」
「ユウ!」
口を開こうとするユウを宥めようとと鶯劍は声を上げる。しかし、ユウはそれに対し首を横に振った。
「彼女にも知る権利があります。だけど、」
ユウは一度言葉を止め、黎明を見やる。
「君は退室してもらいたい。」
その言葉に、黎明は表情を全く変えず、静かに部屋から出ていった。
その寂しげな後ろ姿を見送りながらケイミーはユウに抗議する。
「なんで、黎明さんが!?」
「考えてもみろ。あの女はついさっきまで帝国の犬だったんだ。それを信用できる訳ないだろうが。」
冷たい鶯劍の言葉に言い返そうとケイミーは口を開くが、言葉が出てこない。
その通りだと、ケイミーは納得してしまった。そこへユウがだめ押しと言わんばかりに口を開く。
「それに例え本当に抜けたとしても彼女は村を第一に考えている。いつか、利害が食い違うかもしれない。なら、少しでも情報を流出させないのが得策だと思いますよ。」
「分かりました。」
ケイミーは浮かした体をまた椅子に沈める。
それを見届け、ユウはまた口を開く。
「麗那ちゃんはその身に神雀を宿しているのはご存知ですよね?」
「はい。」
頷くケイミー。
「確かに彼女の体の中に神雀が眠っています。しかし、」
「それは神雀のほんのひとかけらなのです。」
「神雀の・・・かけら?」
「ええ、彼女の中には神雀本体は眠っていないのです。」
「じゃあ、麗ちゃんの体の中にいるのは?」
「神雀の強大な力だけです。」
「どういうことなんですか?」
それが意味することが出来ずにケイミーは尋ねる。
「彼女は一応、神雀の宿主とされています。しかしそれは真実を隠すために捏造された事。」
「捏造って、いったい誰が。」
「朱雀里の研究機関ですよ。」
「!!?」
「彼女は本当はこの世に存在するはずのないロストチルドレンの1人なんですよ。」
「ロストチルドレン・・・」「彼女は研究機関の中で、聖霊を宿した人造人間の研究の中で生まれたんですよ。しかし、その現れ方が異常だった。
突然、研究所の壁に黒い魔法陣が描かれたと思うと次の瞬間には彼女がいたというんですよ。」
「当時、研究員総出で麗那の正体の解明を行いました。」
「そしてとんでもない事実を発見してしまった。」
鶯劍が続ける。
「あいつは、麗那は、他の世界にいる者の・・・」
「かけらなんだ。」
「かけら・・・じゃあ、もしかして他にも!?」
「ああ、恐らくは力を失った神雀をその身に宿す者がいるはずだ。」
「必ず、な。」