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第五話 四兄弟

龍牙達がポイントに近づくのを上に潜む4人は今か今かと待ち構えていた。

「そろそろだよな雅壱兄さん?」

「ああ、雅繰、雅光、雅迅、配置につけ。」

「「「了解」」」

雅繰はポイントの真上に来ると、地面に両手をつく。

雅光はチャグラムを取り出し、くるくるとまわし、今か今かと待ち構えていた。

雅迅はというと、落ち着かない様子であたりを歩きまわっていた。

そんな弟達を見ながら、雅壱は神経を研ぎ澄まし、ターゲットの位置を確認する。

「・・・3、2、1、GO!!」

雅壱の掛け声に合わせ、雅繰は地面に穴を開け、飛びこむ。残りの2人も間を空けずに飛び降りた。

「なっ!?」

だが、そんな3人が着地する前に、無数の斬撃が襲った。

3人は空中では動けず、それぞれの武器でそれらをはじく。しかし、そのあまりの威力に体勢を崩してしまう。

そこを狙い、2つの影が3人に肉迫した。龍牙とケイミーだ。 雅繰は体勢を崩したまま、引き抜いたハンドガンの引き金を引く。

しかし、2人にはかすりもせず、虚しく壁に弾痕を残した。

「くそがっ!!」

壁を蹴り、体勢を立て直した雅光が逆に龍牙に迫る・・・が、

突然、その龍牙は膨らみ始め、雅光の攻撃と同時に破裂した。

その中に光るものを雅光が見たときにはハリネズミのように体中に大量の針が刺さっていた。

「うわあぁぁぁ!!」

「残念。ハズレだ。」

雅操が声がした方へ目を向けると、なぜか龍牙はそのすぐ下に立っていた。

「雅光!!くそっ!!」

雅繰も壁を蹴り体勢を立て直しながら龍牙に向けて連射する。しかしその弾丸もまた、龍牙の体ではなくその後ろの壁にめり込むばかりだった。

「銃っていうのはね。」 そんな雅繰のすぐよこではケイミーが銃を構えていた。

「こうやって使うのよ。」

ダン!ダン!ダン!ダン! ケイミーが一度引き金を引く度、雅繰の体に弾痕が1つ生まれる。 ケイミーの銃が弾を撃ちきったときには、雅繰の腕と足からは大量の血が流れ、今にも千切れそうになっていた。

雅操は痛みに顔を歪ませながら口を開いた。

「なぜだ!?なぜこの奇襲がわかった!?」

「わかったもなにも、最初から気づいてましたよ?」

「なに!?」

龍牙の言葉に驚愕の色を見せる雅操。

「あなた方は俺達をはめようとしたみたいだけど、逆にこちらの罠にかかっただけなんですよね。」

「なぜだ・・・なぜ気づけた!?」

「あなたにその説明は必要ないでしょう?」

龍牙はニヤリと口元を歪めると雅操の首に手刀を当て、気絶させた。

「てめーら、殺す!!」

そんな兄達の惨劇を見た雅迅は何の策なく2人に突っ込んだ。 それに左右から挟撃しようと2人は動こうとする。


が、2人の足は地面に縫い付けられたかのように、全く動かなかった。

「なっ!?」

今度驚くのは龍牙達だった。

「ふん。この状況で何も考えずに突っ込むとでも思ったんですか?」

さっきとは違い余裕のある顔で龍牙とケイミーを見やる。

「もしそう思ったのならあなた方は不合格ですね。」

雅迅は下にだらんと伸ばしていた右手を曲げ、握りこんだ。

すると、それに合わせ、龍牙達の動きを縛る強さも強くなる。

「糸か。」

所々に血を滲ませた龍牙が呟く。

「うーん。まあ、正解でいいでしょう。」

龍牙の答えに投げやりに答える雅迅

「僕の使うものは、『冴糸(ごし)』という僕の一族独自の武器です。だけど、結構面倒くさいんですよね。なにせ実体がないんですから。」

「実体が、ない?」

「ええ、これは自分の冥力を編んだものなんですよ。」

雅操の言葉にハッとなる龍牙。

「これで頭のいい君なら分かりますよね?なぜ、あなた方に気づかれずに冴糸を引っかけることができたか。」

「まさか!?」

龍牙は『眼』を発動し、あたりを見回す。

「まさか、な。」

その眼に映ったのは空気中に紛れこんでいた冥力の粒だった。

「つまり、周りに相手にバレないよう、自分の冥力を充満させておけば瞬時に生み出せるんですよ。今みたいに、ね。

おっと、無駄話がすぎたようです。」

周りの冥力を集め、雅迅は右手に細身の片手剣を生み出し、振りかぶる。

「消えてもらいましょうか!!」

雅迅が龍牙に切りかかる。

「させない!!」

少し離れた所で待機していた麗那が叫び、手に持つ身の丈ほどある杖を振る。

「『アイス・ダスト』!!」

龍牙とケイミーの周りを白い氷の粒が舞い、まるで白いベールのように2人を隠した。

「この期に及んで、無駄ですよ。」

「いや、そうでもないみたいだぞ。」

雅迅のニヤついていた顔が固まる。

「くっ。」

雅迅は突然後ろに飛び退いた。

「そんなに驚かなくても。」

なぜなら、さっき雅迅がいた場所のすぐとなりに縛られているはずの龍牙がいたからだ。

「なぜだ、なぜ動ける。」

「麗那のおかげですよ。麗那のこの『アイス・ダスト』のおかげでね。」「こんな、氷の粒で冴糸が切れるわけがないだろ!?」

あまりの動揺に我を忘れ叫ぶ雅迅。

「ええ、普通の氷なら切れませんよ。普通ならね。」

龍牙の不適な笑みを見て、雅迅は悟った。

「まさか、この氷にも!!」

「その通り、あたしもあなたと同じ、練り込んであるのよ大量の魔力を。」

「ばかな、この冴糸を切るほどの魔力を練り込んだら普通、その物質自体が保てないはず。」

「ああ、だから+αでコイツは加えたんだよ、冥力を。」

「そんな・・・術の同時発動なんて、そんな、ありえない!?」

「それがありえるからこの状況になってるんじゃないの?」

麗那のこの状況での満面の笑顔に雅迅は軽い恐怖を感じた瞬間、

「ふっ!!」

下から、ケイミーの鉄鞭によって突き上げられた。

しかし、雅迅はとっさに顔を横にすることでかわし、後ろへ跳ぶ。

「ふぅ。」

1つ息をつき、また構え直す龍牙を見る雅迅。

「で、どうするんですか?」

「お前が俺達の妨げになるのであれば、ねじ伏せる。それだけだ。」

「それはシンプルで分かりやすくて結構。




「ですが、誰も僕はこの冥力に実体を持たす能力しか持ってないといってはいませんよ。」

「なんだと?」

「ですよね?雅壱兄さん。」

「ああ。」

「うっ!?」

いつのまにか後ろに立っていた雅壱に動きを封じられる麗那。

「麗ちゃん!!」

拘束された麗那を救い出そうと駆け出すケイミー。

「よそ見してる暇はないですよ、ケイミーさん?」

「!?」

だが、突然目の前に現れた雅迅の拳が腹部にめり込み、崩れ落ちてしまった。

「ふん、元3番隊隊長もこの程度か。で、」

雅迅は自分の拳を見つめていた視線を龍牙にずらす。

「君はどうしたんだい?」

仲間を人質に取られた龍牙はというと、何を考えているのか分からない目で雅迅を見ていた。

「見とれているのかな、この力に。」

「その力、人間のものじゃないよな?」


龍牙が突然口を開いた。

目をパチクリして笑いだす雅迅。

「ハハハッ。正解ですよ。」

腕をまくり上げる雅迅。

「コイツのおかげですよ。」

するとそこにはコイン一枚ぐらいの大きさの、黒い石が埋まっていた。

「これは、これを装着したものの戦闘力を何倍にも上げる、『レインフォース』という装置でしてね。優秀な成績を残した者に贈られる特別なアイテムなんですよ。」

「つまりその『レインフォース』とやらを壊せばいいんだな?」

雅迅の説明にニヤリと笑いながら返す龍牙。

「シンプルでいいな。」

「調子に乗るな!!」

空中に冴糸を生み出し、龍牙を縛ろうとする雅迅。だが、

「もうネタバレしたものを出すなよ。」

腰に差していた雷鮫を引き抜き様に振り回し、冴糸を切り刻む。

「かかりましたね。」

雅迅が腕を引くと、同時に龍牙はまた縛り付けられてしまった。

「言ったでしょう。この冴糸は僕の冥力を編んだものだと。なら、それを切ったところですぐにまたつなげられるのも、道理だとはおもいませんか?」

笑いがこらえられず、吹き出し声高に笑う雅迅。

「クククッ、あれだけ、見下していた相手に騙されるのはどんな気分ですか?」

雅迅は龍牙の表情を確認しようと歩み寄ると、龍牙の肩が震えているのに気づいた。

「おや、そんなに悔しかったんですか?大丈夫ですよ、すぐにその悔しさを忘れさせてあげますよ。」

また手に冴糸で編んだ剣を生み出す。

「永遠にね。」










「クククッ、アーハッハッハッ!!」

振り上げられた剣を見ずに龍牙は笑い始めた。

「なにがおかしい。」

「いや、まさかここまでうまく行くとは思ってなかったんでね。」

「なんだと?」

切っ先を龍牙に突きつける雅迅。

「知ってるか?」

それを全く気にせず続ける龍牙。

「他人の冥力を流しこまれると、それが流れた部位から腐敗が始まり、最終的にその者の命を奪う。分かるか?」

「なにが言いたい。」

「さっき俺があの糸を切り裂くのに冥力を纏わせたナイフで切り裂いた、ということは?」

「だから、なにが言いたい?」

「ここまで言ってわからないか?つまり、さっき俺がお前の糸を切った時に流し込んだんだよ、俺の冥力を。繋ぎ直せると予想してな。」

「な、まさか!?」

「ああ、お前の体は今、腐敗が始まっている。まあ、そんな弱点ばっかりの技を使うからそうなんだよ。」

(まあ、本当はそこまで流せてないんだけどな。騙されてくれよ。)

「騙されるな、雅迅。」(はい、俺の淡い期待終了。)

「兄さん。」

「冴糸は『縛る』よりも『切り裂く』技だ。そのために、冴糸は細い。ならば、中に通す冥力の量も少ないはずだ。」

雅壱は龍牙へ目を向ける。

「なら恐らく腐敗には至らないはずだ。

だから、そいつの言うことは偽りだ。」

「やっぱり、そういうことか。」

「はあ、せっかく穏便に済ませようとしたのに。仕方がないな〜、」

龍牙は頭をボリボリ掻き、目を閉じる。

「消えてもうか。」

その目は右は血のように紅く、左は氷のように冷たい碧に輝いていた。








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