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第二話 地震

「どうやら、トドメまで刺されたようだが、どうするんだ?クロド。」

ガイスの問いに対し、クロドは全く反応をせず、ただ黒い(ブラックダスト)となって消えゆく自分の下部であり友で合ったものを遠くから見るだけだった。

「ふん、ざまぁないね。あれだけ大口叩いてこれとは、いくら新米とはいえヒドすぎやしないかい?全く、『ニヒリズム』も落ちたもんだね。」

キリアは座っていた岩から立ち上がり、尻を払う。

「キリアのは言い過ぎだが、今回の敗因はお前にあるぞ。相手を格下と決めつけ舐めてかかり、さらには自分がみていない間に手下をやられる。全てお前一人の問題だな。」

「待て!!」

そう言い残し立ち去ろうとするガイスをクロドが呼び止める。

「私を待たせる理由がどこにある?」

「今日のことを『あの御方』に報告するのか?」

「だったら、なんだ?」 クロドの方を向き直るガイス。

「奴らが俺の城を抜けるまで報告を待ってくれないか?」

「・・・」

ガイスは目を細め、クロドを見た後小さく答える。

「・・いいだろう。」

「恩にきるぜ、旦那」




「えっ!?昨日の夜にそんなことが!?」

朝になり、起きてきた2人に、昨晩の出来事を話すと、真っ先にケイミーが反応した。

麗那はというと、朝が弱いのか、全く反応を示さなかった。

「ケガとかは?」

「大丈夫、ピンピンしてるから。」

心配そうにしているケイミーに笑いかける龍牙。

「それよりもすぐにその眠り姫を起こして、出発するぞ。」

自分の荷物を纏めていた鶯劍が全く3人の方を見ずに伝えた。

「今すぐですか?」

「ああ。」

龍牙の質問に、手を止めることなく答える。

「なんでまた?」

纏め終えた荷物を担ぎ上げながら鶯劍は説明した。

「考えてもみろ。普通待ち伏せるとしても人通りの多い街道を選ぶはずだ。だが、あいつらはここから山2つ越えたところにある街道ではなくこっちに待ち伏せていた。

つまり?」

「相手にこちらの移動ルートがバレている、と。なら、その辺りの地面とかに爆弾などのトラップもあるのでは?」

鶯劍の説明の意味することを理解した龍牙がさらに問う。

「だから、進行スピードが落ちるからこそ、早くに出るんだろう。」

「なら、ルート自体を変えましょうよ。」

龍牙の言葉にやれやれと首を振る鶯劍。

「あのな、一番知られていない安全なルートで待ち伏せられていたってことは他のところにもいるに決まってるだろうが。」

「じゃあ、少し危険なルートもあるんですか?」

「あることはあるが、そこは止めておいた方がいい。だいたいレベル的に言うとA+からBーぐらいだぞ?俺は余裕だが、お前らにはまだ無理だ。」

「でも、これじゃ八方ふさがりですよ。」

「とりあえずこのまま進んであまりにも厳しいようならそのもう1つのルートに変えるというのでいいんじゃないですか?」

鶯劍と龍牙の終わりの見えない話し合いに耐えきれず、ケイミーが口を挟んだ。

「そういうことにしておこうか。」

「分かりました。」

「十分後に出発だ。それよりも麗那!!起きろ!!」 激論を交わす3人の間ですやすや眠る麗那の頭に鶯劍は手刀を打ち出した。

「ふにやゃゃゃゃ!!」




「うぅ、痛い。」

まだ痛むのか、麗那は手刀を当てられた頭を抑え、呻きながら歩いている。

「大丈夫か?」

「痛いよ〜。」

龍牙の問いかけに間を空けずに答える麗那。

「全く、先生ももう少し手加減してくれたっていいじゃん。」

頭を抑えたまま膨れる麗那。

「重要な話し合いの時に寝ていた麗那も悪いぞ。」

そんな麗那の頭を撫でてやりながら龍牙がいう。

「は~い。すいませ~ん。」

ゴロにゃあと言わんばかりに目を細めながら、謝る麗那。

「全く謝罪の意志を感じないのは俺だけか?」

鶯劍は眉間にシワを寄せてそんな麗那をみる。その風景を微笑みながら見ていたケイミーが口を開く。

「まあ、いいんじゃないですか?それよりも後どのくらいなんですか?そのヘレン族の村というのは。」

「まずは樹林に入らないとな。だいたい樹林に足を踏み入れて1日ぐらいで着いたが、今はどうかは知らん。」

「じゃあ、まだまだじゃないですか〜。いい加減この景色飽きたよ〜、先生。」

鶯劍の言葉に脱力する麗那をよそに、龍牙はずっと気になっていたことを尋ねた。

「先生、その村で手に入れたい物ってなんですか?」

「ん?ああ、飛空挺だ。」

「飛空挺!?そんなの持ってたんですか?」

その言葉に龍牙よりも早くケイミーが反応した。

ケイミーがそれほどまでに驚くのも仕方がない。 この世界では交通手段としては徒歩が基本なのだが、4つの大陸が囲んでいる海を横切る海路、地上でも金額はかなり上がるが、平地を走る魔鋼列車。戦時などに利用される戦艦などがある。 だが、これらの移動方法では、移動中に魔物に襲われるという危険がつきまとってしまう。

そんな中発明されたのが『飛空挺』である。

初めはスピードを上げるということを目的に軽量化などが研究されてきたが、ある1人の科学者が今まで船や列車で使われてきた雷の魔石の反発力を利用する機器に、さらに風の魔石を加えるという今までにない発想で新たな、そして今までにない強力な機構を完成させたのだ。そのあまりの強力さに列車は愚か、船すらも耐えきれず浮いてしまうほどだった。

そこで考え出されたのが『飛空挺』である。

しかし、ここでもまた問題があった。金額(コスト)である。一回飛ぶだけで1人100万ウェルツ(10ウェルツでリンゴが一個買える。) かかるということで、利用層が一番人数の少ない上流貴族と需要が低いのだ。乗船経験のあるものですら稀であるにも関わらず、それを持っているとなると、数えるほどしかいないのだ。

「魔石が不足して高騰しているのに、よくもまあそんなもの買いましたね。」

呆れるようにしていう龍牙を見て、肩をすくめる鶯劍。

「俺が手に入れた時は逆に安くなってたしな。それよりも、」

足を止め、龍牙に近づき、

「お前にはロマンがないのか!?」

・・・キレた。

「えぇっ!?」

突然怒鳴られ、驚く龍牙。

「男にとっていや、人にとって、空を飛ぶということは夢だろ!?ロマンだろ!?

それを叶えたいと思って当然だろうが!?」

「あれ!?先生は飛べませんでしたっけ?」

「うっ!?」

ビクッと肩が跳ね上がる姿を見て、はは〜ん、と納得顔になる龍牙。

「へー、先生にもそんな欠点があったんですね。」

「地龍はな、基本的に地中を移動するからな、翼が退化したんだよ。つまり、俺のせいではない。」

「いや、誰も責めていないんですけど・・・」

自分で言った、もっともそうな理由に満足したのか、龍牙の言うことを全く聞かず、歩きだそうと、鶯劍が足を踏み出した瞬間、地面が激しく揺れ始めた。そのあまりの激しさに、龍牙達は立っていられず、その場に膝をつく。

「なん、だ、この揺れ、は?」

鶯劍がそう呟いた途端、多方向から嫌な音が発せられた。


ピキッピキピキッ


4人はそれぞれ音のする方に視線を向けると、周りに大きな亀裂が入っていた。

「おいおい、こんなマンガみたいな展開はなしだろ。」


ドガァッ


鶯劍の願いも虚しく、4人は地中深くへと落ちていった。





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