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第四話 親子喧嘩

「本当にすいませんでした。ほら、パパも謝りなさい。」

「パパははさっきも謝ったし、それに謝るなって言ったのは麗那だろ?」

「それとこれとは違うの。」

わあわあと言い合う蔦轡と麗那を見ながら龍牙は鶯劍につぶやいた。

(先生、もう今日は帰りませんか?後日また来るってことで。 )

(いや、よく考えてみろ。このまま帰ったらまたこの無駄な言い合いを聞くはめになるんだぞ。ここは、龍牙、任せた。)

(ええっ!?僕ですか!?)

鶯劍に顎で行けと命令された龍牙は恐る恐る声をかけた。

「あの〜

「「うるさい!!」」はい、すいません。」

2人に大声で怒鳴られ、半泣きの状態で鶯劍を見ると・・・寝ていた。

「ちょっ、先生!!なに寝てるんですか!?弟子にこんなことさせておいて。」

あくびを一つした後、けだるそうにする鶯劍。

「そりゃあ、一度喧嘩を始めたあいつらを止めるのははっきり言って、三歳児が魔物を倒す並みに無理だからに決まってるだろ?」

「分かってるなら、早く言って下さい!!ていうか、もしかして遊びました、俺で?」

こめかみをピクピクさせながら、腰のナイフに手をかける龍牙。

「い、いやな、ただ待ってるのもつまらないな、と。」

その迫力に押されたじたじになりながらも返す鶯劍。

「ほう、つまらないから俺で遊ぼうと。へえ、先生という立場に立てたらこんなことできるんですね。初めて知りましたよ。

先生、実は最近また新しい技を思いついたんで付き合ってもらえませんか?ここで。」

最後の方を棒読みで言う龍牙に怖じ気づき、作り笑いする鶯劍。

「ははは、いや、実はな、ちょっと腹が痛くてな悪いが無理だよ。」

「大丈夫、その技は背中を使いますから。」

冷や汗だらだらになりながらもまだ抵抗しようとする鶯劍。

「いやいや、腰ならなおさら、ほら、俺、腰悪いだろ?」

それに対して悪魔のような笑みを浮かべる龍牙。

「なら、なおさらですよ。この技、成功すると腰痛が治るんですよ?」

目を泳がせ必死に言い訳を考える鶯劍に詰め寄る龍牙。

「先生・・・、覚悟!!」

「ぐはああああああ」




「すいません、またせてしまって。」

壮絶な親子喧嘩に勝利した麗那が謝った。

「いえ、別に大丈夫ですよ。」

にこやかに答える龍牙。

「あの〜」

「はい?」

「鶯劍さん、どうしたんですか?なんか抜け殻みたいになってますよ。」

麗那の視線の先には、激痛のあまり気を失ってしまった鶯劍がソファに横たわりピクピク震えていた。

「大丈夫ですよ。あの先生(バカ)ならすぐに回復しますよ。」

「はあ、そうですか。」 そう言いながらも鶯劍に近づく麗那。

「あの、鶯劍さん大丈夫ですか?」

麗那が鶯劍の肩に手を置いた瞬間、鶯劍は跳ね起き、麗那の手を握った。

「もちろん大丈夫に決まってるじゃないか、

 ぐはあ!!」

どこからか飛んできた銅像が顔面に直撃した。

「そんなに死にたいか、変態オヤジ。さっさとこっちに来い。」

龍牙が銅像を投げたフォームのまま冷たく言い放つ。

「は、はい。」

シュンとなっている鶯劍を見ていた麗那は、

(これじゃあどちらが先生なのか分からないわね。)

と自分のことを棚に上げ、苦笑いを浮かべるのだった。



鶯劍と麗那が席につくと、さっきまでのおちゃらけた雰囲気がない蔦轡が話し始めた。

「私は昨日、鶯劍に言われた通り、周辺の街の状況を調べたのだが・・・これを見てくれ。」

蔦轡は自分のデスクの上にあったヒドゥン国の地図を机の上に広げる。

「×印が付いているのが見えるか?付けられた場所は、そこの住民は知らないだろうが、全て支配権が帝国に移っていた。」

「なんだと!?」

鶯劍は食い入るようにしてその地図を見る。

「私も自分の耳を疑った。

だが、そこに派遣している諜報員達がそう報告したんだ。」

「もう、すでに国の半分もの都市が占拠されているだと?」

「ああ。しかも、あろうことか、この国の中枢都市である『ビザルク』は帝国と協定を結んでいたらしい。」

その蔦轡の言葉に龍牙はピンときた。

「ふん、この国にいる『四神』を手に入れるためならなんでもするということか。なめられたものだな。」

鶯劍は吐き捨てるように龍牙が言おうとしたことを言った。

その反応を見て、蔦轡はあることを口にした。

「そこでだ、どうだ、手を組まないか?」

「どういう意味だ?」

「そのままさ。この里では、麗那は守りきれない。かといって、どこか知らないところに出すというのも得策ではないと思う。それでだ、一緒に協力して守らないか?」

その提案を聞き、鶯劍は額に手をあて考えこむ。

「龍牙、少し外してくれないか?」

突然、鶯劍はそのようなことを言い出した。

「なんでですか?」

「理由は言えない。頼む。」

「・・・分かりました。」

龍牙は立ち上がり、蔦轡に頭を下げ、出て行った。

それを見ていた麗那も立ち上がり、龍牙を追おうとするが、蔦轡に手を掴まれた。

「残りなさい、麗那」

「なんでよ?」

今まで見たことがない自分の父親の真剣な顔に戸惑う麗那。

「麗那ちゃん、君はこれを知った方がいい、いや、知らなくてはいけない。」

蔦轡のかわりに答える鶯劍。

「なんで、彼はだめで私はいいんですか?」

「あいつがこれを知ったら何をするか分からないからな。」

鶯劍も真剣な目で麗那を見る。

「分かりました。で、その話っていうのは?」

麗那はソファに座り直し、尋ねた。

それに対し、鶯劍も深く座り直し口を開いた。

「実は、俺の故郷、白狼村が1ヵ月前、世界政府による攻撃を受けたんだ、俺達を全滅させようとしてな。

戦況は、完璧に向こう側が優勢だった。まあ、そりゃあこちら側から何人か、しかも重役までも引き抜いていたからな。 王宮は半壊し、さらに鉄壁と思われた地下の避難所ですら攻撃され、村の半数がやられた。

だが、あいつらはそれだけでなく暗殺部隊を編成し、龍影である攫犀へ奇襲までかけてきたんだ。

なんとかそれは撃退したが、最悪のものを置いていったんだ。」

「最悪のもの?」

麗那が聞き返した。

「ああ、あいつら、死ぬ間際に攫犀に呪術をかけていきやがったんだ。その呪いの効果は寿命の短縮、つまりあいつの寿命を減らされたんだ・・・。

そして、今朝、俺のところに思念伝達術(テレパシー)を通して、攫犀が意識を失って倒れたと報告があった。

医者によると、もって半年らしい。」

その時、勢いよくドアが開き、血相を変えて飛び込んできた者がいた。

「先生!!龍影様が倒れたって、どういうことなんですか!?」

それは龍牙だった。

その姿を見、鶯劍は深くため息をついた。

「聞いていたのか。」

「それは本当なんですか!?」

龍牙は鶯劍ににじりよりながら尋ねた。

「・・ああ、本当だ。」 少しためらったが、鶯劍は事実を話した。

「なら、早く村に・・」

「それはダメだ」

龍牙が言い切る前に鶯劍が声を張り上げた。

「なんで、なんでそんなに平常心でいられるんですか!?龍影様が死にそうなんですよ!?」

「それをあいつが望むと思うか?」

龍牙の目を見て逆に問う鶯劍。

「それは・・・」

「あいつはそんなことを望んではいないはずだ。」

「なら、あの人を龍影様を見捨てるんですか?」 俯きながらも言葉を紡ぐ龍牙。

「あんなに、周りの人のことを第一に考えて自分のことをかえりみずに動いていた龍影様を。」

龍牙の目には涙が溜まっていた。

「龍牙・・」

「俺を弟のように可愛がってくれたあの人を、あなたは!!」

「龍牙!!」

突然怒鳴られたことに驚き、龍牙はビクッと肩を震わした。

「誰も、あいつのことを見捨てたりはしていない。」

「だ、だけど先生は村に戻らないって。」

「つまり、村に戻らなくても龍影を助ける方法があるということだろ?鶯劍。」

蔦轡が鶯劍が言わんとしていることを代わりに告げた。

その言葉に反応した龍牙が鶯劍を見ると彼は頷いていた。

「ああ、その通りだ。」

「どうすればいいんですか!?」

龍牙は鶯劍の腕を掴み、揺する。

「単純だ。ただ、その術者を倒せば勝手に解除されるらしい。

もしかしたら、他にもなんらかの条件があるかもしれないが、今分かっているのはこれだけだ。」

「で、その術者は?」

龍牙は掴む手にさらに力をこめ握る。

「そいつの名は・・・」


ドゴオオオォォォン


その時、その里の遠くで大地を揺るがす大爆発が起きた。







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