表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/140

第三話 遠雷

「うわっ。すごい雷ですね、先生。先生?」

(今の雷、異常な量の冥力を含んでいたような、まさか!?)


鶯劍は目を閉じ、目に冥力を集中させ見開いた。


(『竈滅眼』)


その蒼い瞳は紅色へと変わり、その真ん中には十字架をかたどった久留子(くるす)が浮かんでいた。


鶯劍はその眼をある一点、先ほどまで彼らが戦闘していたところへ向けた。


 そこには先ほどまでなかった大きく窪んだ地面、そしてその中心に誰かが立っているのが見えた。


その一瞬後、さっきまで龍牙達が立っていた所に、黄色い閃光が走った。

眩い閃光が消えた後、そこにあったのは煙を上げるえぐられた大地と凪ぎ払われた木々だった。

「電気か。」


(まずいな。どうやら向こうもこちらと同等の探査能力を持っているみたい・・・ん?)


鶯劍はさっきの人影が見えた方へ目を向けるが、


「いない、だと?」


そのフードの男は忽然と姿を消していた。


「やつはいったい・・・」






 黒いフードの男は木々の枝を跳んで移動していた。


「あれが赤袴の鬼神か。あまりたいしたことはなかったな、特にあのガキなんて話にならないな。うん。」

 どこからか響く若い声。

「あまり期待してやるなよ。どうせあの程度だろうよ、田舎者だしな。

まあ、せめてあれを弾き返すくらいはしてほしかったけどな。」

 いつの間にかその横には新たに3人黒いコートを着た者達が現れた。


 1人は青髪に整った顔立ちという若い男、残り2人はフードをかぶっているため顔や性別などは全く分からなかった。


「あれがあの人と同じ『存在』とは思えないな、うん。」

「そういってやるなって。

 とりあえず、俺達『ニヒリズム』にとってそこまで障害にはならなさそうだって報告すればリーダーもオッケーくれるっしょ。」

 青髪が結論を出し、4人はそれ以上話はしなかった。






「・・あれはいったいなんだったんですか?」


「・・・俺にも分からん。ただ分かるのは、奴は敵だということだ。」

 2人して暗い顔をしながら賑やかな通りを歩いて行く。


 今、二人がいるのは、『カリウス』のメインストリート。


 各地の特産物が数多く売られていることで有名で、毎日多くの観光客や地元の人達で賑わっている。


 そんな通りを歩いていた2人だが、急に鶯劍が立ち止まり、すぐ脇の建物を見上げた。


「ここだ。」

「ここってただの民家じゃ?」

 龍牙の言うとおり、そこにあるのは一般的な普通の民家だった。


「カムフラージュだ。」

 石造りの頑丈そうな3階建ての建物の階段を上り、鶯劍はドアを叩いた。

「バッツ、いるんだろ?俺だ、鶯劍、っ!?」

 鶯劍の名を出した瞬間勢いよくドアが開いた。

 そこに立っていたのは、身長が1メートルほどしかない老人だった。

「先生、もしかしてこのひと」

「ああ、『レプラコーン』のバッツだ。」

 バッツは鼻にのせた小さい眼鏡をあげ、じろじろと品定めをするように龍牙を見てくる。


「なんじゃ、鶯劍。わざわざ自分の息子を自慢しにきたのか?」

「む、むすこぉ!?」

「ああ、こいつは最近弟子にとったやつでな。

 それより、情報をくれ。」

「ふむ。まずは中に入れ。話はそれからじゃ。」


 家の中に入った龍牙がまず第一に思ったのは、「小さいな。」


 その建物の中にある家具がバッツの身長に合わせているため、通常の半分ほどしかないのだ。


 もの珍しげに周りに見るのを止め、龍牙は鶯劍に疑問をぶつけた。


「先生。」

「なんだ?」

「なんでレプラコーンが街の中に住んでいるんですか? しかも情報屋って、変わり者にもほどがあるかと。」


 レプラコーンは通常、あまり街には近づかずに、集団でその手の器用さを使って作った衣服で生計をたてているのだ。


 鶯劍はその質問に首を横に振った。

「実は、かれこれ20年ぐらいの付き合いだが、そこのところは全くわからない。」

 じっと見ていた背中が急に振り返ったのに、龍牙は声を上げそうになった。

「そこにでも座れ。」

 バッツが指で示した先には普通の人には少し小さいくらいの一人掛けのイスが向かい合うようにして4つ並べられていた。

 龍牙はその1つに座り、鶯劍は荷物だけイスに置き、壁にもたれかかった。

 そこに、バッツが小さいカップをトレーに乗せて持ってきた。

 そのカップをテーブルに並べながら、鶯劍に視線を向けずに尋ねた。

「で、なんの情報が欲しいのかの?」

「ついこの間、うちの村を抜けたやつがでた。そいつの目的が知りたい。

 名前は我狼蒼龍。確か、神龍以上の力とか言っていたが。」

「それは恐らく聖霊王のことじゃろう。」

 イスによいしょと腰掛け、のんびりと返すバッツ。

「聖霊王?」

 聞き慣れない言葉に戸惑う龍牙。

「この世界には大量の聖霊が存在してるんだ。龍もその内の1つ。その中でもずば抜けた能力を持つ聖霊4種類を四大聖霊といい、その頂点に君臨してるのが聖霊王、つまりこっちでいう神みたいなものだな。

 だが、やつは人間と契約なんかしないはずじゃあないのか?」

 鶯劍の説明について行けず頭を抱える龍牙を尻目に、鶯劍は疑問に思ったことを口にした。

「まだ詳細は分からぬが、どうやらあるらしいぞ? 聖霊王を従える方法が。」

 その言葉を聞き、バッツの耳に口を寄せ、小声で尋ねる鶯劍。

「じゃあ、それに必要なものはなんだ?」

「北の果てにあると云われる『怒りの珠』、そして、南の果てにある『悲しみの珠』と・・・後は分からぬの。

 そういえば、あの小僧はもしや、」

「ああ、あいつが今の神龍の契約者だ。」

 2人(?)が後ろを向くと、いつの間にか龍牙は椅子の上で寝息をたてていた。

「全く人は見た目によらぬの。」

「ああ、全くだ。

 そうだ、バッツもう一つ聞きたいことがある。」

「なんじゃ?」

「実はな・・・」


 鶯劍は昼間にあった出来事を一部始終話した。

 バッツは最初は軽く流すように聞いていたが、最後の方になると身を乗りだしてさえいた。


「鶯劍よ、その者の左胸にガーゴイルの頭を模した銀の紋章がなかったか?」

 鶯劍は意識を記憶の海に巡らせた後、頷いた。

「ああ、確かに。知っているのか?」

「・・・『ニヒリズム』を知っておるか?」

「確か、十数人の小さな組織だったな。

 たしか、その少数にも関わらず、その組織1つで国1つを軽々と潰せると云われている、伝説のあれか?」

「ああ、正確には13人。リーダーの名は『ヴェイン』 確か二つ名は『堕天使』だったか。」

「実在するのか? あの古代兵器最強とまで言われたオメガを破壊したあの組織がか?」

「うむ。だが、かなり用心深いの。

 分かっているのは、奴らの目的は恐らく蒼龍と同じということくらいかの。」

「そうか。」

 鶯劍は龍牙の幸せそうな寝顔を見てため息をついた。

「つらい運命を背負ってしまったな龍牙。」

「やはり、なんにしても、戦力を揃えねば話にならぬぞ。」

「ああ、そうだな。」

「誰か紹介してやろうか?」

 少し考えこんだがすぐに首を横に振った。

「やっばり、自分で探すのが筋だろ?」

「ふっ、お前さんらしいの。」






 翌朝、龍牙と鶯劍は家の前でバッツに見送られていた。

「さっさと行け。行って歪み始めた世界を直してこんか」

「分かったから。そう叫ぶな」

「龍牙や。またおいで」

「はい。お世話になりました」


 龍牙は軽く頭を下げると先を歩き出した鶯劍を追った。


 小さくなっていく、まだ幼さの残る背中を見つめながら、バッツは思考を巡らせた。



 この過酷な旅の中、若き純粋な戦士が光をその身に宿し続けられるか。はたまた心を闇に染め上げるか。


「神のみぞ知る、かの。」



 バッツの表情はどこか楽しげだった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ