第二話 裏切り
次の日、朝日が昇るとともに龍牙は起き上がった。
いつもはもっと遅くまで寝ているのだが、昨日のこともあって、上手く寝付けなかったのだ。
(父さんは一体何をするつもりなんだ。それに制裁って・・・)
などと堂々巡りしている内に夜が明けてしまったのである。
(結局何も思いつかなかったな。
とりあえず、龍影様のところに行ってみるか。)
龍牙が立ち上がろうとしたその瞬間、今まで感じたことのないほどの激しい揺れを感じた。
「な、なんだ!?地震?」
その揺れが止んだかと思うと、次に大きな爆発音が轟いた。
「なんだ、今の音は!?」
言うやいなや、龍牙はすぐに部屋から外へ飛び出した。
すると、そこには龍牙にとって信じがたい光景が広がっていた。
目の前にあったのは、常は平和で美しい建物が並んでいるはずの白狼村ではなく、家屋は崩れ、火の海と化した地獄であった。
龍牙は、これは夢だと思った、いや思いたかった。
こんなことが起こる訳がない。何かの間違いだ、と。
だが、いくら目を瞑ってもそれが変わることはなかった。
龍牙がそうこうしている間にも、新たな爆発が起こっていく。
今度は村の象徴とも言える龍影の住む宮殿が爆砕したのだ。
「龍影、様。龍影様!龍影様を早く助けに行かなくっちゃ。」
それを見た龍牙は我に帰り訓練の時に使用している服に腕を通し、部屋を飛び出した。
そこへ向かう前に、屋敷に住む人の安否を確認した。
裏庭へと使用人や家族を集めていると、執事の駕燕が今、龍牙が一番恐れていたことを告げた。
「若様、旦那様と龍幻様がお部屋にいらっしゃいません。」
龍牙の家族は、父親の蒼龍、母親の燗薙、龍牙、弟の龍尾、そして龍牙の兄にあたる龍幻の5人である。
その言葉を聞いた瞬間頭のいい龍牙は知ってしまった、あの父、蒼龍の企みに。
だが、今はそれどころではかった。
「とりあえずみんな、早く非難所に。ここじゃ、危ない。」
この命令に対し反論するものはおらず、皆、素直に従い、裏にある非難所の入り口へと向かった。
龍牙はそれを確認すると、使用人達や母親の目を盗んで宮殿の方へと駆け出した。
心の中で攫犀の無事を祈りながら。