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第三章第一話 旅の始まり

やっと、龍牙が村を出てくれましたよ。とりあえずはこれで一区切り。これからは、新たな敵が!?こうご期待。

「先生、まずはどこに向かうんですか?」

龍牙が地図を広げながら尋ねた。

「ここから1日くらい歩いたところに『カリウス』という町がある。

とりあえずはそこに行って情報を集める。」

「ならさっさと行きましょう。」

龍牙は腕を上に伸ばしながら少しスピードをあげた。

「飛ばしすぎると後が保たないぞ。」

その鶯劍の注意を気にもかけず、龍牙はひたすら前へと足を踏み出した。




アルカディア帝国


中央省 皇帝の間


金色の物が多い贅沢さ溢れる、皇帝が1日の大半を過ごすこの部屋に今、2人の男が通された。

2人とも黒い足下まであるコートを羽織り、1人は、長い髪を後ろで束ね、腰に人の丈ほどある刀を差し、もう1人はフードをかぶり、無言で髪を結っている男の後ろを歩いていた。


蒼龍と龍幻である。


その2人の前には初老の男が座っていた。

それは、この世界で知らない者はいない、時のアルカディア帝国皇帝 アンドレアス4世であった。

皇帝は蒼龍達2人を見、笑顔を作った。

「久しいな、蒼龍。」

「はい。またお会いできて光栄です、皇帝。」

「で、そちらの者は?」

フードで顔を隠す龍幻に視線を向ける皇帝。

「私の息子です。

皇帝陛下の前だ、外せ。」

龍幻はためらいながらもフードを外した。

その下から現れたのは、頭と左目に包帯をぐるぐる巻きにした顔だった。

「その怪我はどうしたんだ?」

「いや、来る途中にリヴァイアサンに遭遇してしまいまして、その時に一発貰ってしまったんですよ。」

龍幻の代わりに答える蒼龍。

そのようにさらっと言ってのけたことに皇帝は驚きを隠せなかった。

「あのリヴァイアサンか?

大丈夫なのか?」

「こいつはあの程度で死にはしませんよ。」

蒼龍はぽんっと龍幻の肩に手を置きながら答えた。

手を置かれた龍幻の方に視線をむけた皇帝は、身じろぎ1つできず、龍幻の感情のない『無』を具現化したようなその目から視線を外せなかった。

呑まれる、とアンドレアスの本能が告げていた。

「皇帝、私達はいかようにすれば?」

「っ!!、あっ、ああ。」

蒼龍の声で我に帰った皇帝は、軽く咳払いをすると机の上に置いてあった2枚の羊皮紙を広げた。

「我狼蒼龍。」

「はっ。」

「お主には、伯爵の称号と共に『執政官』として『ジャッジメント』の一柱(ひとばしら)となることを命ずる。」

「はっ。有り難き幸せ。」

蒼龍の口端が歪む。

「蒼龍の息子よ。」

龍幻は無言でひざまずく。

「お主には『ジャッジメント』特務部隊隊長の任を言い渡す。詳細は私の秘書の方へ。」

「承知しました。」

蒼龍は口元をほころばせたまま龍幻と共に部屋を出た。



だが、その目は猛獣のように鋭く輝いていた。





2人が出て行ったのを確認すると、皇帝は深く溜め息をつき、背もたれに身をあずけた。

皇帝は自分が異常に疲れているのを感じた。

(あの2人、やはり圧が桁違いすぎる。こちらに引き入れて正解だったな。)

そう考えながら皇帝は机の上にあった冷えたコーヒーを一気に飲みほした。




ヒドゥン国 若き森


「そろそろ、休むか。」そこは、今まで歩いてきた森の中にできた道の途中にある広場だった。

「なんでですか?まだ明るいのに。」

信じられないといいたげな顔を鶯劍に向けた。

「寝床はいいとして、食料を探さなくてはな。」

「食料ならここにあるじゃないですか。」

背中に担いでいるバッグを揺らしながら尋ねる龍牙。

そんな龍牙を見て、溜め息をつく鶯劍。

「そういう日持ちするものは念のためにとっておくんだ。

この旅はいつ終わるか分からないしな。」

「そんなものなんですか?」

「そんなものだ。」

「じゃあ、早く寝床を見つけて、食料調達に行きましょう。」

軽く伸びをしながら、鶯劍の方へと向かい、通りすぎる前にボソッと声を潜めた。

「あの後ろに張り付いているやつは何者でしょうか?」

(ほう、やはり気づいていたか。)

「さあな、だが、気にすることはないと思うぞ。」

「分かりました。

それより先生、雨が降りそうですよ。

早く、寝床を探さないと。」

「まあ、待て。すぐに作る。」

「へ?作るって?」

鶯劍は背中のバッグを下ろし、両手を地面にそえた。

「ふんっ。」

するとその前には土と木でできた家が建っていた。

「うわぁお。」

「これくらいで十分だろ。さっさと中に入れ。降って来たぞ。」

ぼーっと土の家を眺める龍牙の背を叩く鶯劍。

「いたっ。は~い。」






「結構降ってきましたね。」

それなりの広さがある土の家のなかで龍牙はぼやいた。

「食料調達どうします?っていうか明日大丈夫ですか?」

鶯劍は目を閉じ何か考えているようだった。

「先生?」

「行くぞ、龍牙。」

「はい?この雨の中をですか?」

外は真っ暗でどしゃ降りだった。

「ああ、修行を兼ねてな。」

「修行、ですか。何をするんですか?」

龍牙もまさか初日からやるとは思っていなかったようだ。

「雨に濡れずに外を歩く修行だ。」







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