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第一章第一話 夜中に

 それから数ヶ月間、龍牙は龍影となるための基礎訓練をすることとなった。

 その内容は、山のように積まれた依頼達成の書類のチェックの仕方、会議の中での龍影の役割、そして龍人兵の統制の方法など様々である。

 それは龍牙にとってとても興味深いことばかりで、毎日驚きの繰り返しであった。

 しかし、ただひとつだけ龍牙には不満があった。

 それは、その訓練のために遊べる自由時間がさらに少なくなったことだ。

 この時龍牙はまだ9歳、いくら大人顔負けの知力を持っていても、やはり子供は子供。

 龍牙は、時々、夜中に家を抜け出しては燗耶達と遊ぶということを繰り返していた。




 そんなある日、またいつものように無駄に高い家の(へい)を乗り越えようとしたとき、通りの方で人の話す声が聞こえた。

 龍牙はとっさに見つからぬよう茂みの中に隠れ、耳を澄ました。

 声からすると2人とも男のようだが、その内の一方は龍牙には聞き覚えがあった。

「そうか、やっとか。」

 よく聞いてみると、それは蒼龍の声だった。

(父さんはこんな夜中に何をしてるんだろう。しかもあんな暗い通りで 。)

 不思議に思った龍牙は、その話の内容を知ろうとさらに耳を澄ます。

 するとその耳に、蒼龍とは違うもう1つの声が言い放った衝撃的なことが入ってきた。

「蒼龍様、本当に世界政府の方に下るのですか?」

 龍牙はそれを聞いたときネジが空回りしているように、全く意味が理解できなかった。

(父上が世界政府に下る?いったい?)

 そう考えてると蒼龍が周りに誰もいないのを確認し声を潜めながら男を叱りつけた。

「この馬鹿者。その事が他の者に知られたらただではすまされんのが分からんか」

「申し訳ありません。ですが・・・」

 叱りつけられた男もしどろもどろになりながらも問い直した。

「なに、心配することはない。今日1日隠し通せれば、我らの勝ちだ」

 声を潜めながら笑う蒼龍。

「さあて決行は明日だ。しくじるではないぞ」

「で、ですが。」

「ふん、怖じ気づいたか。お前はただ私のいうことに従えばいい。

 他の者にも伝えておけ、いいな?」

「・・はっ」

 その声を最後にその男の声は消え、蒼龍の呟きのみが聞こえてきた。

「明日、明日だ。私の有能さを理解できぬ者共に制裁を・・・な・・・か」

 龍牙に背を向け、家の中へと向かいながら呟いたせいだろう、最後のほうは龍牙にははっきりと聞き取ることはできなかった。

 だがそれでも、さっきの男がいっていた『世界政府に下る』という言葉は龍牙に不安を与えるには十分だった。


 しばらくじっと身を隠していたが、燗耶達の元へ行くのも忘れ、自分の部屋へなんとも言えない不安を抱えたまま歩き出した。







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