第壱拾五話 離別
後少しで第一章終了です。
「父、さん。なんで?」
「戦場において生き残るために『敵』を殺したにすぎないだろ?」
龍牙はその言葉に衝撃を受けた。
蒼龍にとって龍牙は単なる『敵』でしかないと思いしらされたのだから。
「ふん、無様だな、『神龍』お前はその程度か?」
龍牙はその言葉を聞き、頭が真っ白になった。
蒼龍は龍牙のことをただ単なる『神龍をその身に宿した者』としか見てはいなかった。
そしてその言葉は同時に龍牙の最後の望みを握り潰した。
龍牙は唇を噛み締め、涙を流した。
「な、なんで、なんで、俺を、みんなを、仲間を裏切った!!!!?」
その言葉にやれやれとため息をつきながら、蒼龍は答えた。
「この世の全てを手中に納めるためだ。」
龍牙は唖然とした。そんな子供の夢みたいなことができるわけがない、と。
それが顔に出ていたのか、蒼龍は龍牙の顔を見て笑った。
「はははっ、馬鹿らしいと思うだろ。
だがな、私は知ってしまった。これを可能にする力の存在をな。」
そう意味ありげに龍牙に目を向けた。
「なぜ裏切ったのかときいたな。だったらその答えは簡単だ。」
ニヤリと笑う蒼龍。
「それを手に入れるには、龍との契約を切り、政府のところに行く必要があった。ただ、それだけだ。」
蒼龍は息もつかず、さらに続ける。
「そのためならどんな障害でも消す。
たとえそれとなんらかのつながりがあっても、だ。」
龍牙はその言葉の真意に気づき、逃げようとしたが体が全くいうことを聞かない。
それを笑って見ていた蒼龍は腰に差した刀を抜き両手で持ち、構えた。
「さらばだ。『神龍』よ。」
龍牙はただ、目を瞑りその瞬間を待つしかできなかった。
龍牙はゆっくりと目を開いた、金属がぶつかりあったような音がしたにも関わらず、自分が死んでいないことに気づいたからだ。
そこで目に入ったのは、金色に輝く刀を持った見知らぬ男が蒼龍の刀を受け止めている場面だった。
そしてその横で龍幻が右手を抑えうずくまっていた。
お互いに刀を弾き返し、少し間合いをとる。
蒼龍は自分の刀を受け止めていた見知らぬ男の刀を見て、目を見張った。
「金色の刀・・・、それに、その胸の紋章!!」
蒼龍は譫言のように呟きはっとなり声を張り上げた。
「なぜお前がいる!?『赤袴の鬼神』!!
50年前の大戦でお前は死んだはず!!
なぜお前がここにいる!!」
その男はサングラスごしに蒼龍を見据える。
「生き残ったからこそここにいるんだが?
まあ、一応、あいさつくらいはしておこうか。
私の名は、鶯劍 二つ名は、そちらのいったとおり、『赤袴の鬼神』だ。」
「ばかな。くっ、龍幻、撤退だ!!ここでは分が悪い。」
「はっ。」
龍幻の声と共に2人は疾風のごとく龍牙の前から姿を消した。
それを確認した後、鶯劍と名乗った男は龍牙の方へと近づいてきた。
緊張が途切れて出てきた疲れで、鶯劍が手を差し出してきたところで龍牙の意識は暗闇に落ちた。