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第壱拾四話 再会

もうすぐ第一章完結です。


白狼村緊急避難所



鉄壁とまで言われた避難所を含む防衛ラインを突破され、多くの村人が殺されたことにより、村の指揮力は低下し、混乱していた。

それを収集するため、長である攫犀をはじめとする村の重役がここに集っているのだ。




会議室には重苦しい空気が流れていた。

その場にいる十数人の重役達は言葉を全く発していなかった、いや発せなかった。

その空気に耐えかねた攫犀が口火をきる。

「今、村は今までにないほどの被害をうけている。」

敵の進行状況などを示す地図が攫犀の向かいのスクリーンに映された。

「はっきり言って、このままでは、相手側に攻め落とされるのも時間の問題だ。私たちがどうにかしなくてはならないんだ。」

攫犀はそう周りの面々を見回しながら話した。

それを聞き、重役の1人が質問した。

「今の被害状況はどのような感じなのですかな?」

その質問に答えたのは攫犀ではなく、その右隣に控えていた、龍人兵1stクラス『紅蓮の双刃』こと叢炎(そうえん)だった。

「う~ん、今確認できているのは、死者は150、重軽傷者は600、多分、まだ増えると思うよ。」


その報告を受けると先とは別の重役が声を荒げた。

「村人の半数近くじゃないか!!このような不利な状況で、しかもこの人数で勝てる訳がない。

今すぐ敵側に和平を申しこむべきだ!!」

「そうだ。それがいい。どうせ勝てないなら被害は最小にすべきだ。」

「そうだ、そうするべきだ!!」

口々に、その意見に対して賛成を述べる重役達に、今度は攫犀の左隣にいた青冥が自分が聞き出したことを話した。

「これはさっきスレイターという敵方の兵士と戦った部下から聞いた話だが、その時そいつの口から『今回の作戦の目的はお前らの抹殺、つまり皆殺しにすることだ』という言葉を聞いたらしい。

 向こう側がこのような考えを持っている以上、和平は意味がないと思う。

 逆にそんなことを申し込めば、向こうは好機と見て一気にたたみかけてくるぞ。」

その言葉に会議室はまた重苦しい空気が漂うかと思われた。

だがそこへ見張りについていた龍人兵の1人が息を切らして、飛びこんできた。

「どうした?」

息を切らせたまますぐに片膝をつき報告を始めた。

「報告します。

つい先ほど敵本隊の上空に銀色の光が出現し、敵艦への攻撃を開始しました。」

「なんだと!?早くその映像を映してくれ。」

攫犀は少し離れたところに座る秘書に命令した。

「はい。出します。」

そしてカタカタとキーを叩く音が数回した後にスクリーンにその映像を映された。

「こ、これは。」

そこに映ったのは一度に半分以上の軍艦が消滅していくという衝撃的な映像だった。


そしてそれを行った銀色の光の方を見ると、それは、銀色に輝く一頭の龍だった。

そしてその首には5色に輝く首飾りがかけられていた。

「この首飾り、どこかで見覚えが・・・」

攫犀がそうぼやくと入り口から声がした。

「わしが作ったんじゃよ。」

その方向を向くとそこには1人の老人が杖をついて立っていた。

「先代!?なぜここに?」

それを見た攫犀がその場にいる人全員が思ったであろう疑問を口にした。

「そりゃあのう、かわいい孫のためじゃからのう。

あれはわしが龍牙のために燗耶に頼まれて作ったものじゃ。」

さらりと返すひげじぃこと先代龍影、我狼龍藝(りゅうげい)

その言葉にハッとする攫犀。

「まさか、龍牙が覚醒したんですか!?」

その言葉にゆっくり首を横にふる龍藝。

「あれは覚醒でもなんでもないよ。あれは一時的な感情の高まりによる暴走じゃ。」

あまりにさらっと龍藝が言い放ったので、そこにいる者達はただ唖然とするばかりだった。

「では、早く止めなければ。早く部隊を編成しろ!!」

「やめておけ。行っても殺されるだけじゃ。」

その他人事のような言い方に苛立ちを覚えながらも平静を装って尋ねる攫犀。

「ではどうしろというんですか?」

「ただ待てばいいのじゃよ。

あれは力を使いきると収まるはずじゃからの。

今、やることがあるとすれば、近くにすぐ回収できるように部隊を置いておくくらいかの。」

それにまだ不満がありそうな顔をしながらも攫犀はうなずいた。

「わかりました。

3小隊を朱雀門付近に待機させておけ。

残りは村にいる残党を排除ののち、人命の救助にあたれ!!」

「「「はっ!!」」」

その命令を受けるとすぐ、その場にいたものは霧のように失せた。

それを見届けたあと攫犀はぼそりとこぼした。

「龍牙・・・、絶対死ぬなよ。」






治安部隊本隊付近



そのころまだ龍牙の暴走は続いていた。

その姿は、一部が巨大化が始まり、もう人間としての原型をとどめてなどいなかった。

「ぐあ、く、おいおい龍牙、てめえどこまで怒ってるってんだよ。初めてだぜ、こんなのはよ。

俺の意識まで飛びそうになるなんてよ。くっ。」

そう爪牙はわめきながらも、彼らの腕は、足は、牙は、翼は攻撃を止めようとはしなかった。

しかし、それを受けている治安維持部隊の方の被害は尋常ではなかった。みるみるうちに立っている兵士や戦艦の数は減っていく。

最初は40もあった戦艦は今や、10も残ってはおらず、被害は絶望的だった。

だが、彼らもまた退くことができなかった。

なぜなら、世界政府における敗走とはすなわちその兵達の称号の剥奪かつ5つの降格、さらには周りから白い目で見られるということを意味することを知っていたからだ。

だが、その決死の努力も虚しく、また、爪牙の巨大化した右腕のなぎはらいによって数十人が吹き飛ばされた。


「がっ、やべえ、くそっ、限界か。くそっ。やっと奪えたと思っ、たのによ。」


急に龍牙の頭から力が抜けたように前に傾いた。

しばらくすると、その頭はびくっと一回はね、頭が持ち上げられ、前髪に隠れた銀色の目がきらめくのが見えた。

だが、その目からは全く生気を感じられなかった。

「グオオオオォォォォア」


龍牙の砲喉に呼応し、龍牙の体の表面から何万という銀色の鱗が放たれた。

その鱗はすべて空中でピタリと動きを止め、その鋭い先端が光り始めた。

「グオオオオォォォォ」


もう一度龍牙が吠えた時には、全ての鱗から強烈な光線を辺り一帯に振り撒いていた。


今までとは桁違いの音と爆風が辺りを襲う。

この爆風にも関わらず、なぜか、砂埃があまり舞い上がらなかった。

だがそれは、龍牙の周りをある一つのものを残して、すぐそばにあった岩山を含め植物全てを吹き飛ばすのではなく、原子レベルにまで分解し『消滅』させたのだ。

クレーターのように地面を広くそして深く抉られた中、唯一残っていたのは、指揮艦であるマンティコアだけだった。

マンティコアは一番龍牙から離れていたのが幸いし、さらには蒼龍の障壁によりダメージはほぼ打ち消されていた。

龍牙もすぐそれを見つけ、翼をはためかせ、突っ込んだ。

低空飛行をしながら右腕を前に突き出す。すると、その手は周りの鱗に浸食され、堆積を徐々に増やしながら変形を始めた。

その変形が終わると、龍牙の右手には口を大きく開く巨大な龍の頭があった。


龍牙はそれを左手で支え、右腕の先端へ冥力を集中させる。

するとさっきの鱗と同じ光が灯りはじめたと思うと、一瞬のうちに最初に艦隊の半分を沈めた時の3倍はあろうかという球体をその大きな口の中で精製していた。

龍牙は急にマンティコアから100メートルほど離れたところで止まり、腕を前に構えたまま、足で地面をけずり射撃の体制に入った。




そこへ、黒い閃光が走った。


一瞬の内に接近したそれは龍牙の左胸に、漆黒の刃が深々とつきたてた。

その突然の攻撃に、集中を途切らしたその右腕の龍は霧散し、さらに、龍牙は痛みからだろうか、その瞳にまた光が灯った。

龍牙は揺れる視線を自分のすぐ横に立つ人へと向けた。


そこにいたのは、突き刺した対象に全く見向きもしていない龍牙の兄、龍幻だった。


「兄さん、な、んで。」

まだ状況を理解できていない龍牙の質問に、全く答えず、龍幻は、龍牙の体から漆黒の刃を引き抜いた。


「ぐふっ」

龍牙は口から血を吹き出し、力なく地面に倒れこんだ。

体からは銀色の鱗が一枚また一枚と抜け落ちていく。

「自分達の身を守るためだが?」

龍幻とは違う昔から聞き慣れた声が龍牙の質問に答えた。


「父、さん。」


それは龍牙の父、蒼龍であった。







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