第壱拾参話 覇道の蒼迅
やっとユニークが300を超えました。(少ないな〜)
だけど、それでも自分の作品を読んでもらえるのは大変嬉しいです。どうかこれからもよろしくお願いします。
「ふん。なんだ?
世界政府独立治安維持部隊とか大層な名前をつけているくせに、この程度かよ、全く。がっかりだぜ」
天空に舞う白銀の龍はため息とともにもらした。
「お、やっと敵さんのお出ましか」
龍牙(?)の言うとおり残った艦隊から出てきた兵士達が戦闘体制に入るのが見える。
「ったく、よりにもよってこの俺様を待たせるなんて、どういう神経してんだ?」
龍牙(?)は不機嫌そうに目を細めると翼をはためかせた。
そうこうしてる龍牙(?)を、鉛の玉の嵐が襲った。
だが、その攻撃は翼を自分自身に巻きつけることで回避する。
「この爪牙様相手に鉛玉しか使わないのかよ。もしかしてお前ら、なめてんのか!?」
その言葉が言い終わると同時に爪牙はその兵士達の『目の前』で腕を振り上げていた。
「そんなつまらない奴らは」
振り上げた腕に力をこめ
「死にな」
叩きつけた、『地面』に。
また派手な轟音とともに盛大に砂ぼこりが舞い上がった。
その茶色の煙幕が取り払われた時そこにあったのは、爪牙を中心に半径50メートルほど地面がめくれ上がり、剣山のように兵士達を貫くといった、現実とかけ離れすぎた光景だった。
「さあて、次は誰だ?」
それを見た政府軍側は、恐怖のあまり発狂する者、足がすくみその場に倒れ込む者、仲間の無残な姿を見つめる者、背を向けて逃げ出す者、 そこにいる誰一人としてまともな思考ができていなかった。
それは兵士に限ったことではない。
艦内にいる乗務員ですら、戦艦から飛び出し逃げ出す者が続出するほどだった。
「あ、有り得ない。あんな子供に、我が軍の半数以上がやられるなど・・・ありえん!!!」
テルムはこの現実からかけ離れすぎた光景を目の当たりにし、動揺を隠せずにいた。
「ふん。この程度で済んだのだから良かったじゃないか。」
そんなテルムの後ろから嫌みにも聞こえる声がかかった。
「なん・・だと!?どういう意味だ、蒼龍!!」
そこにいたのは、名前の通り蒼を基調とした鎧に身をつつんだ蒼龍だった。
テルムの怒鳴り声に全く動じず、淡々と言い放った。
「私はただ、あの神龍相手に被害が戦力の半分程度に収まってよかったなと言っているだけだ・・・」
テルムは蒼龍が言葉を言い終わる前に、胸倉をつかんで怒鳴りつけた。
「貴様!!戦力の半分を失うということがどういうことか分かっているのか!?
これだけの軍を作るのにどれだけの莫大な資金を投じていると思っているんだ!?
それすらもわからないほどお前は馬鹿なのか!?
なにもしないくせにべらべらとしゃ・・・」
「離せ」
「・・・なんだと?」
テルムは訝しみながら胸倉を掴む右手を凝視している蒼龍の目を見た。
「離せと言っている。」
蒼龍は殺意に満ちた深い碧眼でテルムを睨みつけながら、腰に差している大太刀の柄に手をおいた。
「な、何を言っている。この艦隊の総司令官である私に命令など10年早いわ!!このひよっこが・・・・ん!?」
テルムは顔に暖かい水滴が下から飛んできたのを感じた。
左手でそれに触れ、見てみると、それは紛れもない『血』だった。
(なぜ血がこんなところに?)
違和感を感じながら足下を見てみると、そこには何か肌色の物がぽとりと落ちていた。
視線を前に戻すと、そこに見えたのは鞘から少しはみ出てた大太刀の柄を握る蒼龍の左手と、その胸倉を掴んでいたはずの手首から先がない右腕だった。
地面に落ちていた物、それは服を掴んだ形のまま切り落とされた紛れもない『自分の右手』であった。
「うわぁぁ!!
手が、俺の手が!!」
だんだんと麻痺していた痛覚が戻り、テルムはそのあまりの激痛にもがいた。
そんなテルムを蒼龍は見下ろしながら言い放った。
「お前こそ調子にのるなよ、若僧。
私はすでに100年以上もこの世で過ごし、さらにあの神龍の力を身を持って体験している。
それに比べまだ3、40年しか生きておらず、神龍どころか龍の力すら知らぬお前に指図される覚えはない」
テルムは左手で右手首をおさえながらそんな蒼龍を睨みつけた。
その態度にイラついたのか蒼龍は舌打ちをすると、テルムを蹴り飛ばした。
神速ともいえる速さで放たれた蹴りはテルムの腹を捉え、5メートルも離れた司令室の壁にテルムを叩きつけた。
叩きつけられたテルムは、白目を向き、横たわったまま口から泡を吐き、痙攣していた。
「ふん。この『覇道の蒼迅』に刃向かうからこういうことになるのだ」
軽くテルムを睨みつけた後、蒼龍は指令室へと向かった。
蒼龍は入るとすぐ隣にあった通信機を手に取り、告げた。
「今、司令官が倒れた。よって、これより本隊の指揮は私、我狼蒼龍がとる」