表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/140

第壱拾五話 風の鎚


「・・・見つけた。」


羅門は目を開くとマントの中から左腕を出した。

全く陽の光を浴びていないような白いその腕は不気味に歪み始め、一瞬にして巨大な、大量の触手を持つムカデと化した。

その腕の先端にある容易く人を丸呑みできそうな巨大な口からは唾液がだらだらとだらしなく垂れていた。

羅門はその腕を一瞥すると、一度振り上げ、その頭から地面に叩きつけた。


その重量を表す凄まじい音が響き渡る。


腕はそのまま地面を下へ下へ進み、ついにはそれにつられ、羅門自身もその穴の中へ引きずり込まれた。




「なっ!?」

その光景に勝家の動きが一瞬乱れる。

「隙あり。」

それを亞琥都が見逃す筈もなく、その横腹に強烈な回し蹴りを叩き込んだ。

「ぐふっ」

肺の中の空気を絞り出された勝家は吹き飛ばされ、何度も地面をバウンドする。

しかしそこは流石と言うべきか、何回目かで体勢を立て直し、亞琥都へ駆け出した。

だが、そこに先ほどまでの勢いはない。

それに向かって亞琥都は銃を持つ方と逆の腕を振るう。

すると、勝家はなにかに弾かれたように後ろに吹き飛ばされた。

今度は体勢を立て直すことすら出来ず、背中から地面に落ち、地面の上を滑った。

「がっ!!はっ、はっ、はっ」

一瞬意識を失っていたのか勝家は思い出したかのように荒い呼吸を繰り返した。

「終わりだな。」

そこへにやけ面の亞琥都が歩み寄った。

その手に握られているのは左手にはあの銃が、もう一方にはなぜか金槌(かなづち)が握られていた。

「力が均衡している状態で負傷したんだ。勝負は決まったな。」

亞琥都は右手の金槌を振り上げた。

「じゃあな。楽しかったよ、勝家。」

「お主の、名はなんだ?」

荒い息のまま尋ねる勝家に目を丸くすると亞琥都は笑い出した。

「はははっ!!冥土の土産にってか?だが悪いな、俺はそこまでは優しくないんでね!!」

そしてそれは振り下ろされ、地面を砕く音と共に広場は砂煙に覆われた。




暁天城広場


そのころ、蘭丸は羅門が開けた穴の中を進んでいた。

「勝家殿・・・」

なぜ蘭丸が穴の中に入れたのか。


それは15分ほど遡る。


蘭丸は密かに本丸を出て穴に近い茂みに潜んでいた。

勝家が一瞬の隙をつかれ亞琥都の攻撃を受けた。それは羅門の奇抜な行動を見ていたのではなく、茂みに潜む蘭丸を見たためだったのだ。

蘭丸はそのことに罪悪感を覚えながらも勝家の目が語った指示に従うことにした。

もう1人の侵入者はどこに行ったのか、それを調べるにはあの穴を進むしかない。

だが、その前を亞琥都が守っている今、蘭丸が取れる行動はただ1つ。


勝家に敵を引きつけてもらう、


それだけだった。

勝家も戦いの中それしか活路がないことを理解していたのだろう、だからこそあえて何発かもらい、亞琥都を穴から遠ざけたのだ。

激しい戦闘はより周りへの警戒が疎かになる。

亞琥都もまた穴を守るという目的があったにも関わらず、トドメを刺そうと穴から10メートルも離れた勝家の下へと歩いて行った。

蘭丸はそれを見逃さず、できるだけ音を出さないように茂みから飛び出し、穴の中に飛び込んだのだ。


「っ。」

蘭丸は暗闇の中、一度頷くとまた奥へと歩を進めた。







暁天城広場


砂煙が未だ立ち込める中、亞琥都は穴の前にどっかりと腰をおろした。

その息は意外にも荒れていた。

「なかなかだった。だけど、なぜだ?」

亞琥都はゆっくりと周りを見渡す。

「なぜ、誰も来ない?」

これだけの派手な戦いをしていて誰も気づかない訳がない。というよりは、

「見られているのか」

亞琥都は周囲から無数の視線を感じていた。

だが、そのどれも戦う意志がないのが分かった。

「いったい・・・、っ!?」

突然、前から飛んできた刃に亞琥都は驚き、銃身でその横腹を弾いた。

だがその刃はまるで生き物のようにまた亞琥都に襲いかかり、その根元についていたのであろう鎖で銃を持つ右腕に絡みついた。

「ぐっ」

ジャラジャラと耳障りな音を奏でながらその拘束は強さを増す。

亞琥都は引きずられまいと踏ん張りながらその鎖を辿っていくと、それはまだ濛々と立ちこめる砂煙の中へと伸びていた。

「やっ、と捕まえたぞ。」

その砂煙は何かに煽られたように一気に吹き飛ばされ、その中から三連棍を握る満身創痍の勝家が現れた。

「こいつを直撃させてまだ立つか。」

「うおぉ!!」

棒立ちのままの亞琥都に勝家は殴りかかった。


「いいぞ。」


だがそれは容易くその左手に受け止められた。

「その心意気に敬意を表して、この力で逝かせてやるよ。」

白い風邪が亞琥都の左腕にまとわりついてゆき、

「ぐっ!!」

弾かれるように引っ込めた勝家の手に無数の切り傷を刻みこんだ。

勝家は血まみれの手からまた亞琥都に目を向け、

「これで終わりだ。」

またその金槌は振り落とされた。

もう力が残されていない勝家がそれをかわせる訳もなく、そのまま意識を手放した。

そんな勝家が最後に見たのは・・・



その腕に輝く小さな紋様だった。







魔天道の首都の名前を江戸から京都に変えました。

もしまだ直せていないところがあれば、お手数ですが、誤字報告として教えて下さい。

お願いします。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ