第壱拾話 誕生日
龍牙は路地を疾風のごとく駆け抜けていた。
さっきの兵士が避難がほぼ完了したと言っていたから、恐らく今の爆発音は
そこまで考えた後、龍牙はさらに足を早めた。
頼む。間に合ってくれ!!
数分後、やっと大通りに出ようかとう時、その出口に4人がいるのが龍牙の目に入った。
「良かった。みんな無事か。」
安心した龍牙は4人の名を呼んだ。だが、聞こえているはずなのに4人は揃ってある一点から目を離さなかった。
訝しみながら、龍牙は走りより、燗耶の肩に手をかけた。
その瞬間、大量の爆発音が響き、龍牙に温かい水が吹きかけられた。
龍牙は手に着いたその液体を見て、驚きのあまり動けなかった。
龍牙が吹きかけられものそれは、
大量の『血』だった。
龍牙は恐る恐る、手から4人の方を見ると、4人は笑いながら龍牙を見ていた。
そして、ドサッという音をたてながら倒れた。
「みんな!?」
龍牙は4人に走りより一番近い燗耶の傍らに膝をついた。
「悪い。しくじった。」
燗耶の顔に浮かんだのは自嘲の笑み。
龍牙は何も言えず涙をこぼした。
「ホントにごめんな。みんなを守れなくて。」
龍牙はその言葉に対し強く首を横に振った。
「全部俺のせいだ。俺がみんなのそばにいれば・・・こんなことには。」
「私達は誰も龍牙を憎んでないよ。こうなったのも運命だとおもうんだ。だから・・・気にするな!」
華蓮は明るい笑顔を龍牙に見せた。そして、ゆっくりと目を閉じた。
「華蓮!!」
「僕も同感だな。」
「えっ!?」
華蓮の横に倒れていた燐堵が口を開いた。
「龍牙くんはなにも悪くないよ。悪いのは・・・あいつらだよ。」
憎々しげに壁に空いた穴の方を睨みつけた。
「龍牙くん」
「・・・どうした?」
「最後に1つだけお願いがあるんだ。」
「・・・ああ。」
「あいつらを僕らの分もぶっ飛ばして。」
龍牙は少し戸惑ったがすぐに頷きながら返事した。
「わ、分かった。」
その龍牙の答えに安心したのか燐堵は笑顔を浮かべた。
「ありがとう。よろしくね。
そうだ、燗耶、あっちに着いたら覚悟しなよ。今日の借り返すから・ね。」
そして燐堵は動かなくなった。
「燐堵~~!!」
泣き叫ぶ龍牙。それを見ながら、燗耶はぼそりと呟いた。
「そろそろ俺らも、かな。なあ、凛香。」
「みたい、だね。龍牙くん、あなたに私達から渡したいものがあるの。
ちょっとこっちに来て。」
龍牙は涙を袖で拭いながら凛香に近づいた。
「目をつぶって。」
龍牙は凛香に言われた通りにした。
龍牙は首に何かをかけられたと思ったら、その後、龍牙の唇に柔らかいものが押し付けられた。
龍牙が目をあけるとそこには目をつぶっている凛香の顔があった。
「ぷはぁ」
凛香は満足そうな表情を浮かべて、龍牙から唇を離した。その頬は赤く染まっていた。
「龍牙くん、自分の首もとを見て」
龍牙がいわるた通りに首にかかっているものを見ると、そこにはチェーンに繋がっている5つの色とりどりの円柱型の水晶のようなものがあった。
「これって、もしかして破天石?」
昔、この世界を創った神が使っていた杖は特大の破天石から作られた言われ、決して砕け散ることはないといわれる希少な鉱石だ。
「ああ。俺らがひげじいに頼ん、で作ってもらったんだ。真ん中の白銀色のがお前、赤が俺、青は、凛香、黄色が燐堵で、緑が華蓮をイメージし、て作ったらしい。
これが俺らの友情の証、だ」
燗耶は息も絶え絶えに言った。
「そして、これが私達からのプレゼント」
凛香が後に続けた。
「プレゼントって、なんで・・・」
ふう、と凛香と燗耶は息を吸う。
「「誕生日おめでとう!!!」」
龍牙はそれを聞いた瞬間、涙が止まらなかった。
そうこの日こそ、龍牙の10歳の誕生日だったのだ。
龍牙はそんな2人と、もう先に行ってしまった2人にむかって、泣きながらも、精一杯の笑顔を作った。
「ありがとう!!」
燗耶と凛香は笑いあう。
「龍牙、俺らの分も笑って楽しんでくれな」
「俺、約束するよ。 絶対、毎日が楽しいっていう生活送ってみせるから。」
「龍牙、大好きだよ。」
「凛香、俺もお前のことが大好きだ。」
龍牙は号泣しながら、声を張り上げた。
そんな龍牙に純粋な笑顔を浮かべて2人は言った。
「「ありがとう」」
そして、2人の目から光は失われた。