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第八話 敵(かたき)

もう少しでユニーク9000。


頑張りますよ~。



「ユウ、鶯劍、後、龍牙と言ったか?来い」

「はっ。」

信長の呼び出しにユウは即座に、鶯劍は面倒くさそうに、龍牙は足下にある刀を拾い上げそれぞれの鞘に納め、その後を追った。




暁天城最上階 『魔窟』


「入れ。」

「はっ。」

「失礼します。」

信長に三者三様に応え、『魔窟』と書かれた部屋へと入った。

そこは信長の自室らしいのだが、その内装は白狼村の岩山にあった神殿を彷彿させるものだった。

何本か柱が等間隔で並び、その先には祭殿のような少し底上げされた場所がある。

外観と似つかわしくないこの部屋で特に異質なのは、祭殿の壁に埋め込まれるようにして置かれた、高さ2メートルはある大きな鎌を手に持つ女神の像だった。

信長はその像の前に置かれた椅子に腰掛けると3人に近づくように目配せした。

龍牙は何か不穏な空気を感じながらも、先を歩く鶯劍の後を追い、信長の前へと移動した。

それを確認すると信長は重い口を開いた。

「お主等3人を連れて来たのは、お主等のこの戦いに置いて何を成し得たいのかを正確に把握しようと思ったからだ。」

3人はそれに全く驚いた様子を見せない。もう少しで始まる戦争を前に重要な任務につく者達の目的を知っておくのは当然と思っていたからだ。

「そうだな。まずはユウ、お主からだ。」

「はっ。」

ユウはいきなりの指名に驚くことはなかった。

「僕の目的は、(かたき)をこの手で殺すことです。」

「その敵とは誰だ?」

「・・・帝国軍『ジャッジメント』第三位 アルタ・シルベスターです。」

「ほう。『時の魔女』か。名前からすると、お主の親族か?」

「はい。あいつは僕の姉だった者です。」

「もう家族ですらない、と?」

「あいつは・・・僕の両親を殺したんです。」

ユウの口が真一文字に結ばれる。

「だが、殺したところは見ていない。」

「それがなんですか?

両親は『時』の系列の魔法で殺されていました。

それに、両親の亡骸を無表情で見下ろすあいつの姿も僕は見た。

間違いありません。」

隣にいるユウを見ていた龍牙は、その瞳は怒りに染まっているのが分かった。

「その目的を成し遂げたとして後悔はしないのか?」

「しません。」

「ならよい。次は龍牙、お主だ。お主は何を望む。」

頬杖をついたまま信長は視線だけを龍牙に移した。

「俺は・・・」

「ん?」

「俺は、父さんと兄さんを止めたい。」

「ほう。」

「そして探すんだ、俺という存在を。」

「聞いていた通りだな・・・」

「えっ?」

「なに、こっちの話だ。気にするな。」

「はあ。」

「鶯劍、お前はなんだ?」

自分だけ軽く流されたように感じる龍牙が口を開く前に信長は鶯劍に声をかけていた。

声をかけられた鶯劍も特に気にした様子もなく応えた。

「俺の体をいじくり回したやつを見つけ出す。」

「見つけてどうする?」

信長の問いに鶯劍は胸に手を置き、答えた。

「『こいつ』に裁かせる。」

「いいだろう。合格だ。」

信長は立ち上がり龍牙達の前に立つ。

「改めて、鶯劍、龍牙、我が魔天道に歓迎する。

そして保証しよう。お主等のその願い、叶えてやる。」

信長の瞳を見た龍牙はなぜかその言葉に妙な安心感を覚えた。

「だがそのためにはまず、お主等2人には力をつけてもらおうか。」

信長はユウと龍牙の肩に手を置き何事か呟くと、3人は一瞬にして消えた。

「俺は待機か・・・」

鶯劍の呟きは虚しく『魔窟』の中に響いた。





そんな風に3人が連れ回されている中、5階に残された5人は濃姫によって講義を受けていた。

「・・・というわけどす。分かっていただけましたか?」

「つまり、こちらから帝国(むこう)にスパイを送り込んでいるように、西の国の中にも不特定多数の敵兵が紛れ込んでいる、と。」

サヴァリスの言葉に満足げに濃姫は頷く。

「で、それを僕達に言ってどうする?」

「私達はあなた方3人の身の安全を保証する。

その代わりとして顔の割れていないあなた方が潜入する。いい案だと思いません?」

「愚策だな。」

珍しく毒づくサヴァリスに濃姫は微笑む。

「なぜそうお思いに?」

「簡単。この5人でサリアと麗那ちゃん以外の3人がすでに顔が割れている。

それに僕は仮にも『元』ジャッジメントなんだ。大抵の帝国兵は僕の顔を知っている。

つまりその作戦は本末転倒している。」

そのサヴァリスの説明に濃姫はニッコリと微笑みながら手を叩いた。

「正解どす。

どうやら本当に頭が切れるようどすな~。

さて、本題に移りましょ。」

「本題?」

5人は怪訝な表情を浮かべる。

「この『魔天道』に紛れ込んだ帝国兵(イヌ)の排除どす。」







そんな話し合いがされている中、龍牙とユウは信長と共に広大な荒野の真ん中にいた。

「始めようか。」

信長の言葉に2人は頷く。

「ユウ、主の力量は分かっている。だが龍牙、お主のは能力しか分からぬ。」

当然だ、と龍牙は思う。

「今できる限りの力を解放してみせよ。」

「えっ?」

「ふむ。『アナザー』をすでに2つか。なかなか、だがまだ1つ『対話』すらできていないようだが、どうだ?」

この言葉には龍牙も驚きを隠せなかった。

「ええ。だけど、なぜそれを?」

「我の内に宿したモノが教えた、それだけだ。

それより、早ようやってみせよ。」

「・・・はい。」

釈然としないまま龍牙は2人から間合いをとり、首飾りに下がった銀色と紅色の破天石を弾いた。

すると龍牙の右手には旛龍が、左手にはあの紅い槍が出現した。

それを確認し、龍牙は目を閉じる。

自分の体中を駆け巡る冥力の流れ。それを制御し、旛龍と槍にそれを繋げる。

また、同時に自分の体の表面に流す冥力に神龍の力を流し込む。

このような複雑な操作を通して表に具現化したのは、全身を堅い銀色の鱗で覆い、背中からは同じく銀色の鱗で覆われた剛翼。そして、その右手に持つ旛龍は、その巨大な刃をさらに一回り大きくしていた。

だが、その左手に握られた紅い槍は何も変化を見せない。

自分の扱える力を全て解放した龍牙は目を開き、その灼眼と碧眼で体中を見渡し、すぐに何も変わっていない槍を見て戸惑いの色を見せる。

「なんで・・・」

「『対話』をまだ完了していないからだ。

だが、まあいい。お主の力は分かった。もういいぞ。」

龍牙は全ての力の発動を停止する。

それを確認し、信長はユウと共に龍牙に近づき口を開いた。

「ユウ、主はあの部屋の中だ。」

信長が示す先には先ほど龍牙が濃姫と戦った場所と同じものがあった。

「あれは先の魔力バージョンだ。主はあそこで10分で自分の魔力を放出できるようにしろ。」

「放出、ですか?」

「そうだ。一気に魔力を放出し空にすることで回復した時の魔力の総量を増加させる一般的な方法だ。

だが、ここで普通と違うのは、これだ。」

信長が取り出したのは、

「魔鉱石、ですか?」

「そうだ。主にはこの魔鉱石を付け、常に魔力を一定量供給された状態で魔力の放出を10分でやってもらう。」

「・・・分かりました。」

ユウは素直にそれを受け取るとその膜の中に入っていった。

龍牙はそれをしばらく見ていたが、信長の影に隠れたので、目で追うのを止めた。

「で、俺は何を?」

「龍牙、お主はその2つの『アナザー』との『対話』をするのだ。」

「『対話』?」

「そう、自分の中に眠る2つの『もう1つの(アナザーソウル)』と話すのだ。後はその2つが導いてくれる。」

信長はそう言い残すと来た時のように一瞬にして姿を消した。







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