第三話 火粉
ついに100話到達~!!
これからもよろしくお願いします!!
(あれ?俺、落ちてるのか?)
朦朧とする意識の中、龍牙は自分の状態を理解した。
ロスカに吹き飛ばされ、翼を出すこともできずに落ち続けていると。
(体が、動かない・・・)
背中にできる限りの冥力を集めるが、まだ体は覚醒仕切っていないのか、全くと言ってもいいほど操作できていなかった。
(おい、こんなところで、こんなところで死ねるかよ・・・)
心の中で呟いても何も変わることはない。
(俺は父さん達を止めないといけないんだよ・・・)
『助けてやろうか?』
心の中に突然響いてきた声に龍牙は驚きを隠せなかった。
(旛龍か?)
『ふふふ。さあな。』
(旛龍じゃないのか!?じゃあお前はいったい・・・)
『そんな暇はないみたいだ。もう一度聞く。助けてやろうか?それともそのまま死ぬのか?』
(・・・何をすればいい?)
『願え』
(願う・・・)
『願うのだ。ただ《勝ちたい》と。』
(勝ちたい・・・)
『そうだ。勝利を欲するのだ。』
(勝ちたい・・・)
『強く、強く願うのだ。そうすれば、その思いが《火種》となり、やがて《炎》となる。』
(そうだ、俺は・・・)
「龍牙のやつ、しくじったか。」
また1つ、空賊団の飛空挺を落としながら鶯劍は呟いた。
「まだ、あの若大将にはかなわないか・・・。ん?」
ロスカのいる『リーフベルト号』へと向けていた視線の端に、鶯劍は赤い、いや紅い粒が舞っているのを捉えた。
なにともなしにその元をたどっていると、その先にあったのは、
「まだあるのか・・・」
まだ落ち続ける龍牙だった。
だが、さっきまでとは違う。
その体からは紅い火の粉が舞い上がり、徐々にではあるが落下速度が緩まっていた。
「龍牙、お前はどこまでいくんだ?」
(俺は、俺は・・・)
まるで龍牙の決心を表しているかのように、周りを舞っていた火の粉は収縮を始める。
(勝つんだ!!)
そして、その目が見開かれると同時に、それは真紅の炎と化した。
その膨大な灼熱の炎は、周りの空気を巻き込み、上昇気流を生み出した。
完璧に落下が止まった龍牙は、足の裏を爆発させ、その勢いのままロスカの待つ『リーフベルト号』へと飛びこんだ。
『リーフベルト号』操縦室
「また来たのか。」
ロスカは飛びこんできた龍牙に振り返らずに声をかけた。
「気づいたんだ。」
「ん?」
差し出した右手には紅く輝く一本の槍。
それは火柱をそのまま固めたような特異な形をしていた。
「あの人達を止めるならあんたなんかに負けてちゃだめだってな。」
龍牙の言葉と共にその槍は真紅の炎に包まれていく。
「俺は勝つんだ!!」
「!?」
刹那、爆弾のような爆発が操縦室を吹き飛ばした。
モクモクと黒煙を吹き出す操縦室の中、龍牙は自分の手にある槍を見つめた。
『気分はどうだ?』
そんな龍牙の頭の中にあの声が響く。
「悪くないな。」
『そうか。』
「だけど、まだだ・・・」
『ん?』
そう呟く先では黒煙が吹き飛ばされた。
その先から現れたのは、槍を横に凪いでいるロスカだった。
「それがお前の『アナザー』か?」
笑みを浮かべるロスカは無傷どころか汚れ1つついていなかった。
「ああ。」
龍牙はそう答えながら槍を下段に構える。
それに対しロスカは構えもせず、槍を指の上に乗せ、ぶらぶらと揺らしていた。
「悪いけど、あんたに負ける気はない。」
その言葉に感心したような表情を浮かべると切っ先を龍牙へと向けた。
「俺もだ。」
ロスカのその声を合図に2人は激突した。