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プロローグ

どうも、始めまして我狼龍牙です。初めての作品ということで誤字脱字やおかしな文章、またはストーリー上の矛盾などもあるとはおもいますが、どうか温かい目で見てください。

誤字脱字など報告していただけたら幸いです。


???


「こんな初歩的な罠にかかるとはな。」

 暗い部屋の中、1人の青年が佇んでいた。

 いや、佇まさせられていた。

 その足下には不気味に光る紋様が浮かんでいる。

「これはどういうつもりだ?ヴェニス。」

 動きを封じられた青年は、目だけをその部屋の扉へと向けた。

 そこにいたのは1人の男。

 ヴェニスと呼ばれたその男は自分の白髪の頭をなで、青年に向かって歩きだした。

「見ての通りですよ。あなたは力を持ち過ぎた、ただそれだけのこと。」

 男は青年に顔を近づけ、続けた。

「あなたが『あれ』の使用許可さえ出していればこうならずにすんだものを・・・

非常に残念ですな。」

「あれは世界のバランスを崩す」

「だが無限の利益を生む」

 ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべるヴェニスに青年は顔をしかめた。

 それすら気にせず、ヴェニスは腕時計に目をやる。

「おや、もう時間だ。

さて、それでは・・・様、安らかな眠りを」

 その言葉に合わせて、紋様の輝きを増し始めた。

 それを見た青年の顔に浮かんだ表情は恐怖ではなく、

「くくくっ」

 笑みだった。

「はははははっ!!」

「何がおかしいのですか?気でも狂いましたか?」

 青年にはにこやかなヴェニスの顔の裏には明らかな殺意が見てとれた。

 だが青年は笑うのを止めない。

「いや、お前は俺と10年も一緒にいてまだ俺の性格を分かっていないのかと思ってな」

「なんのことやら」

 ヴェニスは手に持つ赤いルビーがはめ込まれた杖を構えた。

「もう、よろしいですか?」

「俺はな、」

 だが、それよりも早く、青年の体は銀色に輝き始め強い風が青年を中心に巻き起こった。

「うっ!?」

「往生際が悪いんだよ」

 青年の体から噴き出した光は、屋根をごっそり吹き飛ばしたかと思うと、勢いをそのままにまるで巨大な柱のように天高く伸びた。

 そして、天まで伸びきった夜空を切り裂く一筋の光はきれいに6つに分かれ、それぞれ別の方向へと飛んでいった。



「生意気なガキだ」

男は今はいない、青年が 立っていた所を一瞥すると、その光の行く先を見ることもなくきびすを返し、そのまま部屋を立ち去った。










『ヴェスペリア』


 それはある少年の戦いと冒険の記録、その最初の舞台となる世界。

 この話は、4つに分かれた大陸のうち、南の大陸の山奥にある、小さな村から始まる。





ヒドゥン国 白狼村


 『白狼村』、そこは戦乱の時代が近づきつつあるヴェスペリアの中では珍しく、周りの村や国の文化の影響を受けることなく、独自の文化を育み、皆が平等に過ごせる社会を確立した村であった。

 このような状態を作り、維持できるのには理由が2つ。

 一つはこの村が位置する場所。 この村は、周りを山に囲まれた盆地の中にあるため、周りから攻められにくく、守りやすい地形になっているのだ。


 だが、そのような条件が揃っていても時代が流れるにつれ、技術は進歩する中、攻め込まれることが度々あった。

 そこで登場するのが『龍人兵』と呼ばれる者たちである。

 この村は昔からこの村の北にある標高4千メートルもある山に巣くっている龍たちを崇め、貢ぎ物を捧げ、その見返りとして、ある契約を行った。

 その村で生まれくる者の体内に龍の力を埋めこむということを。


 その埋め込まれた力を扱い戦う者たちのことを『龍人兵』と呼ぶのだ。


 そんな『龍人兵』は子供達にとって憧れであり、目標でもあった。

 この流れは、白狼村にさらなる平和と活気を齎していた。




 誰もがこのような平和な暮らしは永遠に続くと思っていた、




 この平和を乱す大事件が起きるまでは。






 時は 870年8月16日、 『白狼村』に、王家が長年に渡って待ち望んできた男児が誕生した。

 とても生気に満ち溢れた普通の子供だった、ただ一点を除いて。


 基本的にこの村で生まれる子供には、宿った龍の種類によって違う紋様が体の一部に描かれるのだが、その子は違った。

 その子供の紋様は火、水、雷、木、土、風のどれにも当てはまらない独特のものだった。


 なによりその紋様の大きさが普通ではなかった。通常、手の甲ほどしかないのだが、その子供には、背中一面に刻まれていたのだ。

 この異様さにその場にいたもの達は驚き、龍人兵や民を治める冷静沈着な33第目龍影ですら驚愕の色を見せた。

「この子こそ、予言の子に違いない」

とその場にいた者達は口々につぶやいた。


 『予言』とは、この村には村の創設者である初代龍影の時代に書かれた予言書のことである。

 口々に呟かれていたのはその書の一節に

『後に背一面に紋様を刻まれし赤子がうまれる。

 そのものはその強大な力を使い乱世を統ずる覇王となる』

と記されていたのだ。


 その子供は文書に従い、『我狼龍牙(がろうりゅうが)』と名付けられ、本人に知らされることなく、実の親から引き離され、我狼家が育てることとなった。

 それも、その実の親2人を村から追放までして。

 実は、この白狼村は世界政府との間の関係がこじれつつあった。

 政府側からの開国するようにとの要望を断っていたからだ。

 その状態はコップ一杯に入った水と同じだった。後一滴、例えそれが小さくてもなにか起きればまた戦争が起こる。

 その(きた)るべき戦乱のために、村には戦力が必要だった。







 そのような不安定な状態のまま早々と9年が過ぎた。

 そのころになると龍牙はメキメキと頭角を表し、学力、武術などにおいては大人顔負けの出来だった。

 だが、龍牙は常に窮屈さを感じずにはいられなかった。

 いくら大の大人と同じだけのことができても、龍牙も年頃の少年である。

 そんな息の詰まるような退屈な日々に心底辟易していた。


 そんな中、唯一安らげるのは親しい友と遊んでいるときだけだった。

 その友とは燗耶(かんや)燐堵(りんど)、弟の龍尾(りゅうび)華蓮(かれん)、そして龍牙が思いをよせていた凛榎(りんか)の5人だった。

 龍牙は2日に一度、この友達と遊べる2時間を糧に日々を生活していた。




 ある日の朝、龍牙の父、蒼龍(そうりゅう)がいらただしげに廊下を歩いている音で目が覚めた。

 時計を見るといつもより蒼龍は早くに起きていることに気づいた。

 素早く起き上がり服を着替える。

「父さん、おはようございます」

「ああ」

 やはり不機嫌そうに返された。

 なぜだか気になったので、すぐ横を急ぎ足で歩いていた使用人に聞いてみると、なんと33代目龍影が引退を発表したのだそうだ。

 それだけでもすごい問題だが、それ以上に注目を集めるのは次の龍影は誰にするかということだ。

 それを尋ねると、今日、龍影直々に本人に伝えに行くのだそうだ。

 蒼龍は昔から龍影の座を狙ってきた。

 つい最近村を悩ませていた魔物を50匹倒すということもやってのけたのもそのためだろう。それで、「次こそは」とでも考えているのだろう。


 そうこうしている間に使いの者がやや急ぎ足で蒼龍に近づいた。

「旦那様、龍影様がお越しになられています」

「なに?すぐに客間に通さぬか、馬鹿者が」

 蒼龍はそう怒鳴りつけるなり、すぐに客間に向かった。

 それを見送り、龍牙は欠伸を1つ零した。

「さあて、ご飯でも食べようかな・・・」

 ぶつぶつと独り言を呟いていると、客間の方から執事の駕燕(がえん)が急ぎ足でこちらに向かってきた。

「若様、客間にお急ぎ下さい」

 珍しく大きな声で話してきたことに驚きを感じながらも、その気迫に圧倒された龍牙は理由すら聞かずに客間に直行した。




「失礼します」

 恐る恐る襖を開けると、そこにはいらただしげにすわる蒼龍と、それを全く意に介していない33代目龍影、攫犀(かくさい)が向かい合って座っていた。

 その海の底のように重い空気の中、父、蒼龍の横に座るとそれを横目で確認した蒼龍が切り出した。

「さあ、『息子』を呼びました。そちらのご用件をお教え願いましょうか」

 すると攫犀は、ジッと蒼龍ではなく龍牙を見ながら話し始めた。

「ご存知かと思いますが、私はこの龍影の職を辞することにしました。そのため次の龍影を決めねばなりません。今日は私が選んだ者にそのことを伝えに参りました」

 淡々とした口調の攫犀の言葉を聞き、蒼龍は高ぶる感情を必死に抑えながら口を開いた。

「そうですか、そうですか。

しかし、ならなぜ私の息子をお呼びになったのですか?私1人で事は足りるでしょうに」

「なにを言われますか。このことはまず最初本人に伝えなくてはならないと法典にかかれているではないですか。

 もしやあなたはそれに背くおつもりで?」

 攫犀は少し軽蔑の色を含んだ口調で言った。

「なら、なおさら当人である私1人でよいではないですか」

「あなたがつぎの龍影?」

 こらえられないと言わんばかりに攫犀は笑い出した。

「はははっ。違いますよ。私が次の龍影に選んだのは・・・」

 言葉の途中で攫犀は龍牙の方に向き言葉を続けた。

「あなたのご子息である我狼龍牙です」

 その言葉に蒼龍は固まった。どうやら、思考が追いついていないようだ。

 何秒後かに蒼龍は我にかえり叫んだ。

「なぜですか!?なぜ私ではなくこの10にも満たない子供を選ぶのですか!?」

 殺気も混じらせたすごい剣幕で詰め寄り尋ねる蒼龍に対して、攫犀はさらっといいのけた。

「あなたでは自分の身よりも民や村を第一に考えることができないからです。それに比べ、龍牙には思いやりがあり、またその他のことにかんしても大人顔負けの才能を持っていると判断したからですよ」

 その説明の途中から蒼龍の顔は青ざめ、震えていた。

「そ、そんな。ありえない。わ、私は認めないぞ」

 最後には叫びながら蒼龍は客間を飛び出した。

 それを見送ると、攫犀は龍牙に話しかけた。

「龍牙、お前はただ頷くだけでいい。それでこの話しは全て終わりだ。

頼む、龍影になってくれ」

 龍牙に頭をさげる攫犀。それを見た龍牙は、

「・・・わかりました」

 途切れ途切れながらも了承した。




 これが白狼村の壊滅へ向かう第一歩であると知らずに・・・









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