中洲彩香の苦悩
今回は中洲の話だけです。
尺を取り過ぎました。
「はぁ、、」
数日後の昼休み、俺は屋上であの出来事について思い出していた。
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俺は数日前、中洲彩香の本当の姿を目撃してしまった。
「、、いつからいたの、、」
「、、お前が神屋の事をクソ女って言った辺りから、、」
「、、そう、、、」
突き刺す様な視線を俺に送る中洲。
ヤベェ、殺される!
「えっと、、俺はもう帰るからじゃぐぇ」
「、、待って、、」
逃げようと方向転換をした俺の首根っこが、中洲によって締められる。
「、、入って、、」
「は、はい、、」
俺は言われるがまま、教室(死地)へと足を踏み入れた。
「座って、、」
「あ、あい、、」
、、あぁ、俺の人生はこんなところで終わりになるのか。
1人心の中で悟りを開き、支持されるがままに体を動かす。
しかし、中洲は何かしてくるわけではなく先程から無言を貫いている。
なにこれ、、超気まずいんですけど、、
俺は沈黙を破ろうと声を掛ける。
「えーと、、何の用事もないなら帰らせて欲しいんだが、、」
「、、、、、、、」
中洲は何の反応もない。
ただの屍のようだ。
あ、それは俺か。
いや、誰がゾンビだ。
俺が頭の中で一人ノリツッコミをしていると、唐突に中洲が頭を地面に擦り付け始めた。
いわゆる土下座というやつである。
「は?!」
「お願い!誰にも言わないで!」
「えっ、ちょっ、おい!」
「何でもするから!言わないでください!お願いします!」
中洲は自分の頭を床に叩きつけ始めた。
「と、とりあえず頭を上げてくれ!これじゃまともに話もできねぇ!」
× × ×
それから色々あり何とか中洲を落ち着け、時間が時間なので、学校を出て近くのファミレスに移動した。
正直言って、もうこいつの事情とかどうでもいいから帰りたい。
風呂に入ってご飯食べて布団の中でレッツパーリーしたい。
なんて願望を通すわけにも行かず、俺は店員さんからドリンクバー用のコップを二つ受け取る。
「なんか飲むか?」
「えっと、、じゃあメロンソーダで、、」
「わかった」
俺はドリンクバーのボタンを押し、中洲の分と自分の分をコップに注ぐ。
「ほれ」
「あ、ありがとう、、」
俺はジンジャーエールを一口飲む。
「、、で、何でさっきあんなになってたのか、事情を聞かせてくれ」
俺は話を切り出した。
「えっとその前に、今から言う事は誰にも言わないって約束して」
「ああ、約束する」
まぁ、俺にはそんな話をする奴はいないんだが。
「じゃあ話すよ」
「ああ」
それから、中洲の独白が始まった。
自分は昔から可愛くて、クラスの女子に邪魔者扱いされて友達がいなかった事。
友達になりたくて、クラスの女子のお願いを聞いていたら、いつのまにか断れなくなっていた事。
友達になったのは良いが、お願いという建前の命令を受けている事。
今のこの現状を変えたいと思っている事。
「バスケ部に入ったのも、クラスのバスケ部の女子達が面倒でやりたくないから、代わりに入ってやってくれって言われたからしょうがなく入部したんだ」
「お前、自分で自分の事可愛いとかよく言えるな」
「え?事実を言っているだけだよ?」
多分そういう所が気に食わないんだろうなぁ、、
見た目いい奴って性格に難がある奴多いな、と二人の美少女(残念)の顔を思い浮かべながら思った。
「てか、うちの高校の部活のシステム緩すぎないか?」
新人で部長とかなれんのかよ。
普通に考えればありえない話である。
「天校のバスケ部って弱小だからさー。適当にやってても部が残ってればいいみたい」
「へー」
特に興味をそそられる話でもないので、俺は適当に相槌を打ちジンジャーエールを飲み干した。
「学級委員も無理矢理か?」
「うん」
俺には分からない。
何故そこまでして、友達になりたいのか。
「、、友達って、そんなにいいものか?」
「少なくとも居ないよりかはいいものなんだと思う。本当の友達なんてできた事ないからわかんないけど」
思っていたより淡白な返答に、俺はずっこける。
「けど、知らないから友達が欲しいんじゃん」
「、、その言い方だと今まで居なかったみたいに聞こえるが」
「いないよ?本当の友達なんて」
、、だったら、なんでお前は友達(偽)と一緒にいるんだよ、、
俺のその言葉が声に出る前に、中洲は言う。
「でもね」
彼女はそう言い、一呼吸置き語り始めた。
「おじいちゃんが言ってたんだ、友達を作るって言うのは、自分の心を見てくれる人を増やす事だって。だから私は、私の心を見てくれる“本物“の友達を作りたい」
本物、か。
本物なんて果してあるのだろうか。
本物の形は人それぞれ違う。
本物なんてただの妄想で、自分の理想で、一方的な願望の押し付けだ。
そんな不確かなものを、、いや、やめよう。
俺の考える本物と、中洲が欲しがっている物は別物なのかもしれない。
「どうしたの?」
俺が考え込んでいると、中洲が聞いてきた。
「あ、ああ、いや、何でもない」
さっきまで考えていたことを頭から消し去る様に頭を振る。
「おじいちゃんっ子なのか?」
俺は至極どうでも良いことを聞く。
「うん、ちっちゃい時良く遊んでくれてたんだ」
「そうか」
中洲は今の自分の現状を変えたいと思っていると言った。
それは具体的にどう変えるのだろう。
「お前、これからどうするんだ?」
俺は中洲にこれからの計画を聞く。
「え?家に帰ってお風呂入ってご飯食べて」
「いや、そう言うことを聞きたいんじゃなくて、学校での事だ」
「あ、あー、いや、特に決めてない、かな、、」
中洲は肩を落とし下を向く。
「正直、私もどうしたら良いのかわかんないの」
「まぁ、そうだろうな」
当然の返答だった。
分かっているのならとうの昔に解決しているだろう。
ならなぜ解決していないのか、答えは単純。
こいつはクラスの女子達に依存してしまっているのだ。
友達の為だと考えて行動してしまう。
ただ利用されているだけだと知りながらも、お願いを断らない。
いや、断れないのだ。
昔の俺と同じ様に。
断ることによって、友達が居なくなってしまうのではないのかと恐怖しているのだ。
そんな簡単に切れる繋がりなら、捨てれば良いと今の俺は思う。
俺は中洲の事を知らぬ間に、昔の自分として見て居た。
何とかしてやりたいとは思う。
だが、手出しをしていいのだろうかと考えてしまう。
これはこいつの問題だ、部外者の俺が何かしたとして、現状は変わらない。
ならせめて、助言だけでもしてやろうと思った。
「まぁ、、なんだ、そんなに難しく考えんな」
「え?」
「周りがどうこうじゃ無い、自分で考えて決めて、自分自身の答えを出して、その答えを周りの奴に聞かせればいい」
「最初は受け入れられないかもしれない、拒絶され上辺の関係すら無くなって赤の他人になるかもしれない」
「、、、、、」
中洲は真剣に俺の話を聞いている。
「だけど、お前はそんな上辺の関係が欲しいんじゃ無いんだろ?」
「、、、お前が欲しいのは本物の友達だ。だから、そんな脆い関係は“捨てちまえ”」
「、、、、っ!」
俺から言える事は言った。
後はこいつがどうするかだ。
「えっと、ありがとう。愚痴を聞いてくれて、かなり楽になったよ」
「、、そうか」
「そろそろ帰ろっか」
「ああ」
中洲と俺は会計を済まして店から出る。
「じゃあな」
「うん、また明日」
そう言って俺と中洲はそれぞれの帰路へと着いた。
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昼休みが終わり、午後の授業が始まる。
5時限目は数学だったが、今日は何となく受けようと思い教室に戻った。
ガラガラ
5分前なのにいつも通り教室は騒がしい。
俺は自分の席に着き、ノートと教科書を出し、机に突っ伏すフリをして中洲を見た。
中洲は、いつも通りに女子数人と一緒に談笑して居た。
顔は笑っているが、心は退屈しているのだろう、いつもより喋っていない。
話を聞き、相槌を打つ。
俺なら退屈すぎて寝るまである。
そうこうしているうちに授業開始のチャイムが鳴り、先生が入って来る。
「号令」
「起立、礼!」
中洲が号令をかける。
『お願いします』
そして、退屈な授業が始まった。
× × ×
5.6と授業を受け放課後。
俺は生徒会室に向かう。
今日は中洲の特訓は休みなので、のんびりラノベを読みながら過ごそうと思った。
廊下はリア充達が群がって居た。
邪魔だ!失せろ!
リア充たちを軽く睨め付けながら歩く。
渡り廊下に差し当たった所で、俺は喉が渇いたので自販機で飲み物を買う。
ピッ
ガコン
「、、、、はぁ、、うめぇー」
コーヒーで喉を潤し、再び生徒会室に向かおうとした時、
『オラァ!立てよー!』
と、物騒な声が聞こえた。
なんだ?喧嘩でもしてんのか?
俺には関係ないなと思い、歩き出そうとした所で聞き覚えのある声が聞こえた。
『、私は、、もうあんた達の言う、、事なんて聞かない!』
中洲?
『あんた、達なんて、、友達じゃない!』
俺は声のする方へ走って向かった。
『は?何言ってんのあんた、自分の置かれてる状況わかって言ってんの?』
中洲と数人の女子達は掃除用具倉庫の裏にいた。
俺は壁に隠れて現場をカメラに押さえておくことにした。
スマホの撮影ボタンを押す。
「あんたさぁ、本当気に食わないんだよねぇ」
リーダー的な女子が言う。
「やっちゃいなよ!」
「そうだそうだ!」
周りの下っ端どもが同調する。
「気に、食わないとか、、知らないよ、、」
「は?」
中洲はヨロヨロと立ち上がりながら言う。
「私、の事が、、羨ましいだけなんでしょ?」
中洲は不敵な笑みを浮かべる。
「、、くっ!」
リーダー女子が中洲の胸ぐらを掴む。
「だからこんな事をやって、、自分の方が、上だって、、思いたいだけなんでしょ?」
「、、、惨めだね、」
中洲が静かに言った。
「アンタなんか!!」
リーダー女子はとうとう切れたのか、ポッケからハサミを取り出した。
俺は壁にスマホを置き、中洲のもとに走る。
「死んじゃえばいいんだ!」
ハサミの先端が中洲へと近づいていく。
「やめろ!」
俺は咄嗟に大声で叫ぶ。
間に合ってくれ、、!!
景色がゆっくりと後ろに流れていく。
、、届けぇーー!!
伸ばした右腕で中洲の体を抱きとめた。
バッ!
「!?」
リーダー女子がこちらを見ながら驚いている。
「おい!中洲、大丈夫か!」
「痛てて、、」
中洲は腰をさすりながら起き上がる。
みたところ怪我は無さそうだ。
どうやら間一髪のところで間に合ったらしい。
良かった、、
俺は立ち上がりリーダー女子を思いっきり睨みつける。
「ひっ!」
リーダー女子が怖がって逃げて行き、それに続いて下っ端どもも逃げた。
「中洲、立てるか?」
俺は中洲に向けて手を伸ばす。
「うん、、て、ちょっと!腕!」
なんか中洲がすげぇ驚いている。
「腕?」
俺は自分の腕を見る。
、、、、赤色?
、、、液?
、、ハサミ?
あ、、
俺は自分の腕がどうなっているのかを視認し、理解した。
「痛っでぇぇぇええ!!!刺さってる!刺さってる!!誰か抜いてぇ!!」
「あ!、、、えっと救急車、、119、、あ、あのもしもし!」
「死ぬー!!俺死んじゃう!!!」
白色の車に乗せられ、激しくなるサイレント共に、俺は静かに目を閉じた。
尺を短くする為に小道には救急車に乗ってもらいました。
次話の投稿は未定です。