生徒会の初仕事
続きです。
変な所で終わっているので、読みにくかったらすいません。
俺が生徒会に入って一週間が経った。
この一週間特に変わった事もなく、各自が好きな事をして過ごし、放課後の自由な時間を送っていた。
そして例に漏れず、俺は今日もいつも通りに生徒会室に向かう。
リノリウムの床をかつかつと鳴らしながら、無人の廊下を歩く。
外から入り込む夕日の日差しがすこし眩しく感じる時間帯に、なぜ俺は学校にいるのだろう。
、、なんて、ここ数日同じ事を考えている。
数週間前までは放課後のチャイムが鳴ればそのまま直帰ルートオンリーだったのに、何で生徒会室なんかに向かってんだろ俺、、
今日何度目かのため息をつき、生徒会室のドアを開く。
ガラガラ
「うーす」
扉を開けると、中にはいつものメンバーと知らない女子生徒がいた。
「、、、では、私達は中洲さんの技術向上の手助けをすれば良いのですね?」
神屋はこちらを一瞥すると、あたかも何もなかったかのように会話を再開し出した。
「は、はい、そうです」
どうやら依頼の話をしている最中だったらしい。
清川はいつものごとくゲームをしている。
俺は邪魔をしないように、自分の席に着き静かに読書を始めた。
「では、明後日までにトレーニングの内容を考えますので、明後日から始めましょうか」
「はい、よろしくお願いします!」
小柄な女子生徒が勢いよく頭を下げて言った。
「それでは、失礼しました!」
ガラガラ、とドアが閉まる。
「、、依頼か?」
「ええ」
神屋はパソコンを取り出しながら言った。
「どんな依頼なんだ?」
「さっき聴いてたでしょう、バスケの技術向上の手助けよ鳥頭君」
「鳥頭じゃねぇよ、俺は記憶力だけは良いんだよ」
今日もこいつの毒舌は絶好調である。
「お前バスケ出来るのか?」
「やった事は無いけれど、見た事ぐらいはあるわ」
「そんなんで手助けとか出来るのかよ」
「依頼された以上、最後までやりとげて見せるわ。今から色々調べるから邪魔しないでくれるかしら」
神屋はパソコンの画面を見ながら言った。
へーへーすいませんね、、
それ以降会話は無く、俺は読書を再開した。
× × ×
私は急ぎ足で体育館裏に向かった。
「、、ごめん、お待たせ」
「彩香おっそーい」
着くと既に、玲央名は自慢の茶髪をいじりながら約束の場所で待っていた。
「えっと、、用事って何?」
「ん?いや、分かるっしょ。今から遊び、行くっしょ?」
ふざけるな。
私は心の中で叫ぶ。
「い、いやぁ、、私これから部活の練習があるから、、」
本来なら別の誰かがやっていたであろう、押し付けられた“部長”という肩書きに義務感を感じている。
たとえ名ばかりで、技術も経験も無いど素人であっても、ほっぽり出すことなんてできない。
だから、私は遊べない。
だけどその一言が、私は言い出すことができない。
「で、今から遊び行くっしょ?」
「えぇっ、と、、その、、私は」
「何?聴こえないんだけど?」
本当に嫌になる。
自分自身の愚かさに。
「、、う、うん、、行こっか、、」
「けってぃー。じゃあ“みんな”誘ってくるから、いつも通り財布よろー」
「うん、、分かった、、」
本当に嫌になる。
自分自身のお人好しに。
自己嫌悪をしながら、私は既に“みんな”を呼びに行った玲央名の後ろ姿を憎々しく睨む。
なんで私は、あんな奴らと一緒にいるんだろう。
なんでこんなクソみたいな人間に、こんなにも見下されなければいけないのだろう。
、、こんなはずじゃなかった。
もっと素敵な関係だと思っていた。
もっと信頼できる言葉なんだと思っていた。
だけれど、もうこの関係を、その言葉に当てはめることは出来ない。
「私は、“友達”が欲しかっただけなのに、、」
その呟きさえ、伝えることはない。
× × ×
翌日、いつも通り放課後生徒会室に向かう。
ガラガラ
「うーす」
中には誰もいない。
今日は休みなのか?と思いながら黒板の方を見ると、何か書かれていた。
“体育館集合“
依頼は明日からじゃなかったのか?めんどくせぇ、、
俺は体育館シューズを取りに教室に戻った。
この学校の体育館は教室棟の向かい側にあり、新しく建てたものなのでまだ綺麗で中が広い。
体育館に着き、シューズに履き替え中に入った。
中には神屋と清川、それともう一人この間依頼をして来た、中洲彩香がいた。
中洲彩香、バスケットボール部の部長で、学級委員もしている、俺と同じ2年5組の生徒、、らしい。
俺は記憶力は良いが、自分と関係のない事は基本的に覚えていない。
俺は常に一人を心がけているから覚える必要がない。
決して、ぼっちではない。
大事な事なのでもう一度言おう、、、、、俺はぼっちではない!
神屋と中洲は、バスケのシュート練習をしているようだ。
清川は体操座りで端っこに座って例のごとくゲームをしている。
俺は清川の近くに行った。
「よう」
「あっ、教官!こんにちは」
笑顔で言ってきた。
「お、おう、」
こいつ顔だけはいいんだよなぁ、、危うく好きになるとこだった。
「依頼って明日からじゃなかったのか?」
「神屋三等が予定を変更して今日からになったんですよ、、レベリングしたかったのに、、」
レベリングって、どんだけゲーム好きなんだよこいつ。
「そうか、、、あいつ張り切ってんな」
俺は神屋の方を見る。
神屋は、熱心に中洲にシュートの仕方を教えているようだ。
俺が出来る事は無さそうだな。
俺は、清川の隣に座って見ている事にした。
トントントン
体育館にボールの突く音が響いている。
「ふぁ〜あ、、ねみぃ、、」
する事が無いのでじーっと座って見ていたが、だんだんと眠たくなって来た。
、、歌でも聴くか。
俺はポケットからスマホを取り出し、イヤホンを刺してミュージックアプリを開いた。
「椎名蜜柑っと、あったあった」
最近流行っている歌手で、独特の世界観が魅力のシンガーソングライターだ。
再生っと、、
曲が流れ出した。
綺麗な水の音が聞こえる。
ー流されることしか知らない魚はいつか
ー悪意という波に呑まれ
ー自分も悪に染まってゆく
美しい歌声の女性が、悲しげに歌っている。
ーだが、その悪意という激流に抗い、打ち勝ち、激流から抜け出すことの出来た魚は
ー龍にだってなれる
曲調が変わり、風の音が聞こえる。
ー龍になった魚は
ー周りの魚に認めてもらえなくとも
ー決っして後悔はしないだろう
ー何故なら
ーその魚は自分自身が選択し
ー正しいと思ってした事なのだから
俺の意識は薄れていった。
× × ×
目を覚ますと、俺の視界は柔らかそうな大福二つで埋め尽くされていた。
「、、、え」
「あっ、起きましたか?」
「あ、ああ、、」
俺は体を起こし、自分の置かれていた状況を確認する。
「寝心地どうでした?もしかして、わる、かったです、か?」
中洲彩香が上目遣いで言ってきた。
どうやら俺は知らぬ間に寝てしまい、中洲に膝枕をして貰っていたらしい。
大事なことなのでもう一度言おう、
俺は中洲に膝枕をして貰っていた。
「いっ、いや!しょんな事ないぞ!めちゃくちゃ良かった!」
俺はテンパり過ぎて最初の方が噛み噛みになってしまった。
冷静になれ俺!そうだ素数を数えよう、1、2、、、だめだこれ素数じゃねぇ、、
「あの、、大丈夫ですか?」
俺が考え込んでいると中洲が心配をして来た。
「あ、ああ、大丈夫だ、問題ない」
俺は極めて冷静に言い放つ(問題がないだけで大丈夫とは言ってない)。
「すいません、私の練習に付き合ってもらって、、」
「依頼だったからな、俺は何もして無いが」
体育館には、俺と中洲の二人しかいなかった。
「練習の方はどうだったんだ?上手くやっていけそうか?」
何故そんな事を聞くかというと、昨日チラッと神屋のトレーニングメニューを見て見たのだが、鬼畜そのものだった。
「うーんと、、まぁ、大変でしたけど、私のためにやってくれている事なので、最後まで頑張ります!」
なんて純粋なんだこいつ、俺には眩しすぎる。
「えっと、まぁ、できる範囲で頑張ってくれ。俺もやれる事はやるから」
「はい!ありがとうございます!」
天使のような笑顔で言った。
あっ、ダメだ、俺の目が生き返っていく、、
これ以上見ているとターンアンデットされそうだったので、ケータイの画面を見て逸らした。
いや誰がゾンビだ!
現在時刻、午後19時丁度。
「俺は帰るがお前はどうするんだ?」
「私は服を着替えて帰ります」
「そうか、気をつけて帰れよ」
「はい!今日はありがとうございました!明日もよろしくお願いします!」
そう言って中洲は体育館を出て行った。
「、、俺も帰るか」
よっこらせと立ち上がり、スマホ片手に体育館から出ようとした時。
チャリン
「あ?」
腰辺りから聞きなれない金属音がした。
なんだと思い見てみると、ご丁寧にメモ書きを添えて体育館の鍵がベルトの穴に刺さっていた。
『ゾンビ君、蘇ったら鍵を返しておいてちょうだい。』
「、、あんのクソ女がぁ」
黒髪ロングな毒舌会長の顔を浮かべながら、俺はメモを握りつぶした。
× × ×
俺は体育館を出た後、鍵を返しに職員室に寄った。
トントン
「、、2年5組の赤坂です、鍵を返しに来ました」
「どうぞ」
中から声がかかる。
「失礼します」
中には、吉塚先生を含めた数人の先生しかいなかった。
「やぁ赤坂、こんな時間に君がいるなんて珍しいな」
吉塚先生は俺に気づくと、手を振りながらこちらにやって来た。
「そうですね、基本的に俺は定時になったら即帰宅ですから。依頼さえ無ければ今頃家でゲームしてますよ」
「相変わらず可愛げのない奴だな君は」
吉塚先生は呆れたように言った。
「男に可愛いとか要らないんですよ」
「そういうところだよ」
俺は吉塚先生に連れられ生徒指導室に連れて行かれる。
めんどくさいのに捕まってしまった、、
「で、どうだね私の依頼の方は」
「まぁ、順調なんじゃないんですか?」
「なんだそのよく分からない返しは」
先生はコーヒーをカップに注ぎながら言った。
「いや実際、よく分かんないんですよ、自分でも」
先生の入れてくれたコーヒーを飲みながら言った。
「そうか、、まぁ、引き続きお願いするぞ」
先生はソファに座りながら言った。
「はぁ、、依頼されたからには一応やりますよ」
「うむ、では行っていいぞ」
「はい、失礼しました」
、、やっと解放された。
外は暗くなり、帰宅ゲージが振り切りそうなのを我慢して、俺は急ぎ足で生徒会室に向かう。
、、ん?
生徒会室に向かう道中、いつもなら既に無人となっているはずの部室の一室が、なぜか今日は点灯しているのに気づいた。
「、、バスケ部室、か」
まだ中洲帰ってなかったのか。
お疲れと心の中で中洲を労いながら、部室の前を素通りする。
そのときだった。
『クソ女が!私が下手に出てれば、上から目線で言いやがって!何見下してんだよクソ女!』
室内から聞こえて来たであろう怒号が、俺に届くのと廊下一帯に響くのはほぼ同時のことだった。
、、な、なんだ?
俺は進路を180°変更し、部室の僅かに開いたドアの隙間から中を覗き込んだ。
中では、体育館で見せた天使のような表情など見る影もなく、般若のような形相で怒り狂っている、バスケットボール部部長 中洲彩香 がいた。
『だいたい、クラスの女共が悪ふざけで入部届けを出したから私はこんな思いをしてんだ!』
『何が「中洲さんなら出来るよー(笑)入部届け出しといたから部長頑張ってねー(笑)」だ!』
『テメェら私がいると男子に相手にされないから、厄介ごと押し付けてクラスの輪から追い出そうって魂胆だろうが!』
『ほんと許さねー!クラスのメス豚ども!絶対許さねぇ!!』
『学級委員だってそうだ、、、私が断れない事を良いことに、次から次へと仕事を押しつけてきやがって、、、』
『はぁー、辞めたい、、、』
少し落ち着いたのか、中洲は地べたに座り込んだ。
アイツはアイツで色々大変なんだなぁ、、
なんで他人事のように呟き、俺はそのまま退散。
トン
しようと方向転換した時に、左手がドアに当たってしまった。
ヤベェ、、
『誰かいるの!』
その雄叫びにも似た声に、俺は逃げ出す隙を失う。
ガラッと全開に開いたドアから、その雄叫びの正体が現れた。
、、、、、、、、。
、、、、、、。
永遠にも似た沈黙が、あたりを支配する。
、、、、。
、、。
、。
しかしその長い沈黙を先に破ったのは相手の方だった。
「、、、、えっ?!」
「よ、、よう、奇遇だなこんな時間に会うなんて、、あはは」
本当に奇遇。もうすっごい奇遇。奇遇中の奇遇。もうここまで来たら奇跡に等しいまである。(意味不)
「、、いつから、、いたの」
「えーっと、、お前が神屋の事をクソ女って言った辺りから、、」
「、、、、、そう、、」
中洲は俺を鋭い目つきで睨みつけている。
怖、、何だよこいつ、別人じゃあねぇか、、
「、、入って、、」
「は、はい、、」
俺はその一言に、死を覚悟した。
まだ続くかもしれません。
次話の投稿は未定です。