悪役令嬢は王太子に婚約破棄を永遠にさせない
「どうしても?」
「ええ」
「婚約を破棄してくれないと?」
「ええ、絶対に嫌です」
この世界は悲しくて、理不尽なことが多くて。
とても切なくて苦しくて悲しくて……でも私は彼のことが好きで好きで好きで。
だからこそ許せなかった。
だからこそ私は笑う、笑って絶対に嫌と言い続ける。
愛した理由は聞かれると難しい、愛し続ける理由はわからない。でも愛している。ほかの人を愛した。だから許してくれ? 許しません。
あなたも愛しているって言ってくださいましたわ。
心変わりをするなんて許しません。
「ねぇ、フェリカ、僕は彼女を愛してしまったんだ」
「それはあなたの都合ですわ、王太子様。うふふ私は絶対に婚約破棄などは認めません。だって私は何も失態は犯しておりませんもの」
私は笑う。
王太子様は困った顔でこちらを見ている。
だけど許してなんかあげない。
「私は、アリス嬢をいじめていませんもの」
「確かに調査の結果はそうだった」
優雅に笑って見せましょう。
いじめてなんかおりません、そんな愚かな女ではありません。
困った顔の王太子様にクスクスという笑いを返し、私はその唇にただ……ただキスをする。
重ねるだけのキスをして、そして笑う。
「フェリカ?」
「私はあなたを愛しています」
「僕は!」
「絶対にあなたを離さない、そして私は絶対に婚約破棄は致しませんわ」
愛している。愛している。この心が狂いそうなほどこの方を。
だからこそ、この方の愛がなくても私は絶対に許してなんてあげない。
魔法学園でずっと一緒だったのに、その瞳が違う人を追っているのに気がついてはいた。
でも許してなんてあげません。ずっとずっと愛しているといい続けてきました。
アリスさんの微笑みを見るたびに心が痛かったですわ。だけど絶対に私はあなたとはお別れしてさしあげません。
人の心は変わる。誰かが言いましたわ。
でも私の心は永遠に変わりませんわ。
勝ち誇ったようにこちらを見るアリスさんに優雅に笑いかけました。
するとこちらを戸惑ったように見てましたわ。
【あの方の愛は私にあります】
【そうですか、それがどうかしまして?】
私が笑うと、ひっと怖がっておられましたが、うふふ別に庶民や貴族など差別はしておりません。
私からこの方を奪う方はみな敵ですわ。
甘ったるい声も、媚びた話し方も……私は個人的には好きませんが、でもただ一つ、愛しい方の愛を奪おうとしたのが許せませんでしたわ。
でもいじめてはおりません。
愚かなこと……。
「陛下に誓いましたわよね? 私と婚姻しますと」
「フェリカ!」
「あなたがどんな手段を取ろうとも絶対に婚約は破棄しませんわ」
アリスさんがどんな手段を取ろうともつぶして見せる。
愛している。
この思いが自分勝手なものでも。
フェーリシカ・カージェス。公爵令嬢の私のこの想いが身勝手といわれようとも。
金の髪に青い瞳、その声、その眼差し、いいえこの方のすべてを……。
幼い時、私の手を取り、優しく花冠を差し出した。
幼い時、私を見つめ、大好きだよと囁いてくれた。
大好きですとささやいたら、僕もだよと返してくれた。
あなたを私は愛しておりますわ。
10歳のときからこの8年間ずっとずっと愛し続けておりますわ。
光の中私たちは笑いあい、愛を誓いました。
裏切りは許しませんわ。
もじもじお父様の後ろであなたを見た私に遊ぼうと笑いかけましたわね。
はいと頷くと、にこっと笑ったあなたは笑った。
たぶんあの笑顔で最初に好きになりましたわ。
だからこそ許してあげませんわ。
私のすべてをあなたに。
あなたを愛しておりますわ。
この生命すべてをかけて、だから許してなんてあげませんわ。
「魔法学園の卒業式で結婚式をあげましょう。楽しみですわね。アリスさんにも見てもらいましょう」
「フェリカ、僕は絶対に!」
「愛しておりますわ、王太子様、いえディーン様。愛しておりますわ。ずっとずっとずっと」
愛しています。私は今度は深いキスをディーン様にプレゼントします。
幼い時に婚約者にされ、でも会うたびに愛しさが増していった。
愛しいという言葉に愛しているという言葉も返してくれた日々は遠い。
だからあなたを離さない、だからあなたの裏切りを許せない。
永久に、永久に愛していますわ。
私のディーン様。




