4.魔法学校の入学手続き
二人に魔法学校の紋章が描かれたIDカードが手渡された。
「今の気持ちを、どうぞ忘れないでいてくださいね。
サクラさんの何か人の役に立ちたいという姿勢は、実は魔法使いにとても大切な基本となることです」
「魔法使いの基本ですか?」
「そうです。魔法を扱う力は、奉仕するために授かるものなのです。
この力を自分の欲望を満たすためだけに使ったら、人は魔法に恐怖を感じるようになり、それは単なる暴力と同じことになってしまいます」
大椿女史は、サクラに、にっこりとほほ笑みかけた。
「ですから魔法の力は、誰か他の人のために役に立てることができて、始めてその意味をもつのです」
大椿女史はモモの方に向き直ると、言葉を続けた。
「それから、モモさんの人生を楽しむという姿勢は、今この地球に最も必要なことです」
「えっ?本当ですか? 楽しむことが役に立つんですか?」
思わずモモは問いただした。
「楽しんでいる人をみているだけで、周りの人たちも皆が楽しくなっていくでしょ?」
モモは大きくうなずいた。サクラも横で大きくうなずいていた。
「あなたが楽しいという思いを広げるために、きっと魔法は役に立つはずです」
モモの笑顔が輝いた。
「人生に苦労はつきものだと大人たちは口を揃えて言うし、苦労は人を成長させるって言うでしょ。
確かにそうなのですが、日々体験することの中に楽しさや、面白さを見つけられたら、苦労や試練を冒険やチャレンジだと思えるようになりますよね」
「高校生であるあなた方が、これから経験する受験勉強も同じですよ。
大人たちの言葉に惑わされないでくださいね。
知識を吸収すること、その知識を使っていくことの楽しさ、面白さを見つけていきましょうね」
合格の喜びと興奮で、その後、どうやってそれぞれの家に帰り着いたのか、良く覚えていなかった。
ただ、理屈ではなく、おなかの底から湧き上がってくる喜びを噛みしめていた。
魔法を使って、奉仕をしていける。
魔法を使って、楽しみながら、人の役に立つことができる。
二人はそれぞれに、喜びに包まれたまま眠りにつき、そして・・・