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魔法のペンより強い剣  作者: 七夕 ナツキ
第1章 レイと魔法
7/8

幕間その1,『休戦協定』

「負けを認めるか? 弟よ」

「ぐうぅ……」


 二人の少年、いや、一人の少年と一匹の得体のしれない化物ばけものは戦いを終えたようだった。


 黒髪の少年の足元に膝をつく少年、もとい化物。

 その化物は悔しそうにこぶしで床を殴っている。


「ほら、言わないと戻してやらないぞ? どうする? おい?」


 黒髪の少年は厭味いやみったらしく化物に問いかける。

 少年、じゃなかった、化物は、その歯を食いしばったままだ。


「お、いいのか。 慈悲は無いぞ?」


 化物の頭がわなわなと震えだす。

 遠目でも、頭に血が上って、怒り心頭なのは一目瞭然いちもくりょうぜんである。


 言わなければいけないけれど、言いたくない。

 幼いながらの、些細ささいな抵抗だろう。


 しかし、いやらしい目で弟を見つめる兄の瞳には面白がっている様子しか見受けられなかった。


「あぁああぁ、クッソぉ! 何なんだよマジで! はいはい、負けましたよ! お兄さんにはかないません! これでいいんだろ! 馬鹿兄! 一回死ねばいいのに! なんでこんなやつが俺の兄弟なんだよ! あぁ、むかむかする」


 ありったけの罵詈雑言ばりぞうごんを並べてはいるが、それはとどのつまり強がり以外の何物でもない。

 不本意だが、一応負けを認めたようだ。


「なんか、その態度は気に食わねぇけどなぁ。 本当はお兄様って言ってここにひざまずいてもいいんだぜ? お前は俺に『お願い』してるんだからな」


 化物は、顔を真っ赤にしている。


 ここは公衆の面前だ。

 そんなことをするなんて、いくら子供でも男のプライドってもんがある。

 まさに、羞恥の極み。俺だったら確実にあいつの顔殴ったな、今。


 しかし、ここまで来たからにはどうなろうと構わない、という心理が働いたのか。

 化物が腰を上げようとした。


 が。


「ははっ、傑作けっさく! いやいや、俺もそこまで鬼畜きちくじゃないぜ? 実の弟に跪いてお願いさせるなんて、流石さすがに、なぁ。 でも、お前がそうしたいって言うんなら、させてあげてもいいけど、どうする? 弟君よぉ」

「ああぁぁあッ! もういいから! 早く元の姿に戻せ!」

「しょうがねぇなぁ……」


 そういうと、少年は杖を振り下ろし、ほぼ同時に呪文を唱え始める。


「我が力よ、改めて我の内へとかえたまえ。 いしずえノ術、第1段、《解術ラクス》」


 そう言って、少年は目の前の化物に向かっててのひらかざした。

 たちまち、化物の姿はまばゆい光にさえぎられ見えなくなった。


 そして、気のついた時には、そこに立っていたのは、赤い髪の少年だった。


「ああ、やっと戻った……」

「だから、闘う前にあれだけ忠告したのに」

「いや、もう負けねぇし。 次は無いぞ、覚えとけよ」


 臭過ぎる捨て台詞を吐いて、彼は立ち去っていった。

 ずいぶんと態度がころっと変わるものだ。


 この戦いは、今後しばらく続くのだろう。

 さしずめ、これは、休戦協定、とでも言ったところなのだろうか。


 なかなか、面白かったぜ。


 俺は何故か、小さく拍手を送っていた。


幕間です。でも本編と余り長さが変わりません。

ここでは、様々なキャラ目線で色々と語っていけたらなぁ、と思っております。

今回は、1話「喧嘩」のその後の展開です。

兄弟二人の絡みを書くのが楽しかった、それだけです。

何の伏線も張ってないのであしからず。

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