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6口目


【灯台付近の浜辺】


『ポヨン』

『……プニュン』


「結局ギルドからの依頼で護衛してた殿下って何者だったのよシナギク?」


「それはボクの口からは言えないことになってる」


『ポヨン』

『……プニュン』


「じゃあダンゴがオーク兵達を追い払った力みたいなのは?」


「それはボクにも解らないよ」


『ポヨン』

『……プニュン』



「あの……お二人とも……ダンゴさんでキャッチボールするのやめてもらえませんか……」


 ダンゴさん目がグルグルです……。


「……ミュ~」



「はは、ごめんハナ。ニンジンあげるから機嫌直して、ね?」


「むぅ~。私にじゃなくてダンゴさんに謝ってくださいよ!」


 かわいそうにダンゴさん、プルプル震えながら二人を警戒しているみたいです。


「ところでハナ殿。今日はこのような場所に一体なにを? 誰かと待ち合わせでも?」


「そういえばあたしも知らない」


「はい、待ち合わせですよ。もうすぐ来るかもですね」


 お二人には知らせていないのですが、今朝ほど私の家に手紙が届きまして。


『グググググ……』

『ザッパァァァァン!』


 ルシャラちゃんが遊び(冒険)から帰って来るそうです。


 ルシャラちゃんの私物である幽霊船が“いつものように”海底から勢いよく現れます。ルシャラちゃんの幽霊船は普段から海面ではなく潜水しているみたいです。

 そして船内から一人の少女が姿を現し、腕を組んで高笑い。


「ニャーハッハッハッ!」


 猫の半獣人。


 長い黒髪に大きな緋色のリボン。とても似合うポニーテール。

 左目の下には泣きぼくろがあり、服は紅色の着物。その上からは白衣を着こなしています。


「……あたし帰るわ」


「はわっ!? クーちゃんそんなこと言わずに」


 クーちゃんはルシャラちゃんに会うといつもこんな感じです。

 せっかくダンゴさんも海の底から船が現れたことで興奮して、機嫌を直したというのに……。


「相変わらずじゃのハレンチ娘。わらわが会いに来てやったのじゃぞ、もっと喜ぶがよい」


 船から飛び降りたルシャラちゃんは私達の前になんなく着地。


「ハレンチ娘言うな!」


 ルシャラちゃんはよくクーちゃんのことをハレンチ娘と言います。


 ハレンチとはランチみたいなものでしょうか?


「冒険は楽しかったですかルシャラちゃん? なんでも今回は南の孤島に行ったとか」


「うむ! なかなかに楽しめたぞハナ。皆に土産もあるのじゃ」


「わ~い♪」


 喜ぶ私とは裏腹に不機嫌そうなクーちゃん。


「どうせガラクタなんじゃないの?」


「なんじゃと!」

「なによ!」


 も~また二人でケンカして……。

 いつもお姉さんぶるクーちゃんもルシャラちゃんの前ではムキになって子供みたいです。


「ニャー!」

「ワンワン!」

「フシャーー!」

「ガルルルル……」



「犬猿の仲……犬猫の仲? どちらにせよいつも通りだね」


「そうですねシナギクちゃん。でも本当はお二人ともスゴく仲良しさんなんですよ」


 ――はわっ! 先ほどまで互いににらみ合っていたお二人が、今度は私の方を睨んでます。……怖い。


 ……気を取り直して。

 ルシャラちゃんはニャンニャンと鼻歌交じりで手に入れてきたお土産を白い大きな袋から取り出し始めました。


 見たことのない不思議な形の果実やら、キレイな珊瑚礁さんごしょうなど。

 どれも素敵ですね~♪


「とてもいい子なハナには多めに土産をやるぞ」


「へ? そうですか? どうしてですか?」


「どうしてって。“ソレ”は妾にくれるのじゃろ? ちょうど実験体が欲しかったところなのじゃ」


 まだ半獣人としては子供なルシャラちゃんですが。実はいろんな物を開発したり、実験が大好きなスゴい発明家なのです。


 そんなルシャラちゃんが物欲しそうな顔で指をさす方向には、私の頭の上で瞳をキラキラさせながらお土産を見つめるダンゴさんが。


「ダダダ、ダメですよダンゴさんは! 実験なんて。お友達なんですから」


「なんじゃ……つまらん」


「ミュミュ?」


 今日はダンゴさんとは離れずに守らないとですね、なにをされるかわかりませんよ。


「あ、思い出した。そういえばルシャラあんた。貸してたあたしの【カイザーナックル】返しなさいよ」


 クーちゃんの言うカイザーナックルとは、手に装備する打撃系の武器のことです。とても痛そうで危ない武器なのです。お仕事で使うのでしょうか。


「にゃ?」


「そういえばボクの【ブロンズダガー】も」


「にゃにゃ?」


 呆気にとられた表情で首をかしげるルシャラちゃん。


「返す? あれは妾にくれた物ではなかったのか? 実験に使ってしまってもう無いぞ。失敗してしまったがの」


「…………は?」


 一瞬その場で凍りついたように固まるクーちゃんとシナギクちゃん。


 我にかえるとクーちゃんはすぐにルシャラちゃんの胸ぐらを掴んで怒りだします。


「なにしてくれてんのよあんた! 七万ガパしたのよアレ! それでもまけてもらった方なんだから!」


「……ボクのブロンズダガーが」


 苦笑いをしながら、振り子のように揺さぶられるルシャラちゃん。


「う、うにゃあ~ん……」


「ちゃんと弁償しろバカ猫!」

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