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4口目



 以前お会いした。アルバイト先の常連客の勇者様ですが。


 借金取りの人達に連れていかれてしまいまして。


 ……後日テンチョーから聞いた話だと、借金返済のために畑や色んな場所で働かされているみたいです。


 まじめに合法的に。


 なのでテンチョーは私に、うしろめたさを感じる必要はない。彼の自業自得でいい薬になると言っていただきました。



 ……さて。

 今日はクーちゃんと遊びに出掛けますよ。


 遅刻しないように早めに家を出ましょう。


 待ち合わせが午後の一時なので、三十分くらい前に家を出れば間に合うはずです。時計時計、今の時間は?


【午後一時――】


「…………あれ?」



【ポアール商店街・北口】


 遅い!

 ハナってばどこで道草食ってるのよ。


「ク~ちゃ~ん! ごめんなさ~い! ……はぁはぁ」


 ようやく来た。走るの遅いわね。


『モフモフ……』


「遅かったじゃない。これがデートだったら帰ってるわよ……って、あたしの尻尾をモフモフしないで!」


「クーちゃんデートしたことあるんですか?」


「な、ないけど……」


「すみません本当に。時計を見たら待ち合わせ時刻だし、ダンゴさん小さいから見つけるのに時間が……それに途中で道を間違えてイフリート街道からフレア山に……」


「ミュー!」


「なんで軽く冒険して来てるのよ」


 まったく相変わらず危なっかしい子ね。


 住み慣れた街で道を間違えるなんて、方向音痴だったっけこの子?



「へー、じゃあダンゴはオスでありメスでもあるんだ。あたしモンスターとはほとんど戦わないから知らなかったわ」


「そうなんですよ。勇者様が教えてくれました」


 あぁ……ハナの店によく来る人ね。

 ちゃんとモンスターとかの知識あったんだ。


「それにしても今日のクーちゃんの服装も大胆ですね。藍色のショートパンツが特に」


「ジロジロ見んなっての。この格好だと動きやすくて、戦いやすいし、楽で便利なだけなんだから」


 あたしは一応仕事として、となり町にある円形闘技場で【犬闘士】として働いている。


 仕事と言っても誰でも気軽にエントリーが出来る大会で、ショーのように対戦相手と戦って見に来たお客にアピールする。人気が出れば主催者側からお金が貰えるってわけ。


 安全で死者も出ていない、腕に自信がある者にとっては小遣い稼ぎの出来る場所ね。


「……で、今日はどうするの? 買い物でもする?」


「わ~い♪ クーちゃんとお買い物するの久しぶりです。じゃあ今回はダンゴさんの服を買いに行きましょうか。いつまでも裸というわけには」


「――――」


「……ん?」


「ハナ。あんたダンゴが服を着るとでも? ダンゴに合う服が売ってるとでも?」


「…………え?」


 あたしは呆れながらも遠慮なく、ハナのほっぺたをつねる。


「あ・ん・た・ね! 少しは考えてから物を言いなさいよね。行動もそう!」


「しゅ、しゅみましぇん……うぅ」


 この子は本当に昔からこうなのよね。


 天然で。小さい頃から一緒にいたあたしはよく振り回されて世話焼いたし。

 今でもだけど……。


 いつも明るくてイイ子なんだけどね。


 老人ホームでのボランティアとか評判良くて可愛がられてるみたいだし。


 そういえば。お店のくじ引きでハズレのティッシュですら大喜びする子だった。


「じゃあ気を取り直して食料品市場でお買い物しましょう」


 なんだか嫌な予感が……。


「ハナ、もしかして料理を?」


「はい。クーちゃんに振る舞いますよ♪ 自家製のハムやチーズがありますし、最近オリーブを育てるのにハマっちゃってて」


「…………」


 ありきたりな話だけど、ハナの作る料理はお世辞にも美味しいとは言えないかな。


 昔あたしに作ってくれて食べたスコーンの味は忘れない。


 あからさまに下手で不味いとは言いづらく、昔よりはマシなのだけど、本人は自覚していない様子。


 ルシャラはまた別で、アイツの作る料理は独特なんだけど。


『ガヤガヤガヤ……』


「クーちゃん。あそこの八百屋さんに人だかりが?」


「あ~あれじゃない、広告が貼ってあるわよ。一部の野菜や果物が半額セール中っての」


「はわわーー。それはぜひ欲しいです。行かなければ」


「じゃあダンゴ預かるから行って来なさいよ。待ってるから」


「はい!」


 ハナはダンゴをあたしに預けると、嬉しそうに八百屋に向かって行った。


『プニプニ』


「ミュー」


 あたしは頭の上でくつろいでいるダンゴを、指先でつつきながらからかう。


「あんたも苦労しそうだねダンゴ」


「ミュミュ?」

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