3口目
この世界でのお金の単位は【ガパ】です。
一ガパは一円となります。
それから……。
ポアール商店街にいたクーちゃんと別れた私は、中央広場の食料品市場でダンゴさんが食べれそうな食べ物を探しました。
どうやらプリンやゼリーなど、ダンゴさんのようなプルプルした物が好きみたいです。
……ちなみに口はありませんが、どの角度からでも体内に取り込んで、いつの間にか消化しています。
スゴいですダンゴさん!
◆
『ピョン!』
『ぽてっ』
「……? ダンゴさん。どうしました?」
昼下がりの街。
私の頭の上から飛び降りたダンゴさんは、なにかに向かって移動を始めました。
「ふふ♪ なにか面白い物でも見つけましたか? 案内してください♪」
ピョンピョンと跳ねながら移動するダンゴさんを、私は後ろから付いて行きます。
すると、建物の陰に隠れてキョロキョロと辺りを警戒する怪しい人を見つけました。
あの男性は、よく見ると私の知っている人のようですね。
なんとなく後ろからゆっくり近づいて驚かしましょう。
「……わっ!」
「ぎゃああああああああーー!」
これはこれは。予想を上回る驚きっぷり。
「こんにちは勇者様♪」
「……な、なんだハナちゃんか……ビックリしたよ本当に」
彼は私がアルバイトをしている酒場シメフクロウの常連客です。
元々は勇者をしていたらしいのですが、今は無職で実はなかなかお酒を注文してくれません。
大体いつもタダで飲める水です。
どうやらダンゴさんは怪しい行動をする勇者様を発見して興味が湧いたようですね。
「なにをしてるんですか勇者様?」
「……別に、なにもしてないよ……なにも」
明らかになにか隠してますね。
「まさか借金取りに追われてるとか?」
「なぜそれをっ! べ、べつべつににに……そんなことないないズラ!」
どうしましょう。スゴくわかりやすいこの人。
「…………ハナちゃん。無理を承知でお願いが」
「貸しませんよお金♪」
「すこぶる早ぇな返事! しかも笑顔で!」
ごめんなさい。勇者様には一ガパたりとも貸したら絶対よくない、と酒場のテンチョーに言われてますので。
「いいじゃんケチ! この間は宝くじ当ててたし、商店街の福引きで一等賞を当てた噂もあるし。そんなに運がいいなら少しくらいお金貸してくれてもいいじゃないか! こちとら真綿で首を絞められてる感じで借金溜まってるんだよ!」
「私そんなに幸運じゃありませんよ。しょっちゅう道ばたで転びますし、昨日だって店で三回ほど転んでテンチョーに注意されました」
「……それ君がドジなだけだよ」
「ミューミュー!」
なんだか今ダンゴさんにもバカにされた気がします。
「あれ? こんな所にモンスターが?」
はっ! そうでした。ダンゴさんを勇者様に紹介しなければ。
私はダンゴさんを両手ですくい上げて勇者様の前へ。
「この子はダンゴさんと言って私のお友達なんです。ソースをかけて食べちゃダメですよ」
そうだ。勇者様に聞いてみましょう。
「勇者様。実はこの子がオスなのかメスなのかわからないんです」
「いや、俺アイテム鑑定の資格は持ってるけどモンスターはあまり……でもスライム型はオスとかメスとか性別はなかったんじゃないかな?」
「はわわ~♪ じゃあダンゴさんは男の子で女の子なんですね」
「……そ、そんなとこかな。ま、いっか。そうだ。情報料として少しお金を」
『ガシッ!』
これはビックリです。勇者様の背後に背が高くて怖そうな男の人達が立っていました。
勇者様が捕まって逃げ場なしです。
「――ッ! 離せっ! 嫌だー! やめろー!」
引きずられて行く勇者様。
「ハナちゃんお願い! 俺に金貸して! 必ず返すから! 頼む! 助けてー!」
「ダメです♪」