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10/13

9口目


 今日は生憎あいにくの曇り空。


 私とクーちゃんは傘を持ちながら、市場の大通りを歩いているところです。


 フェノクロスには市場が多く、今回は少し薄暗い所にある食堂街を抜けてコパッケ横丁を目指します。

 コパッケとは私達の住む世界での古い言葉の一つで、希少や異界物などの意味があるんですよ。


 クーちゃんがオススメしていた呑み屋さんを通りすぎたところで、ちょうど地下街から出てきたシナギクちゃんと合流できました。


「こんにちはシナギクちゃん」

「オ~ッス」


「どうも。おや? ハナ殿、ダンゴちゃん殿は今日は一緒ではないのですか?」


「一緒ですよ。ここに♪」


 今日のダンゴさんは私の肩掛けカバンの中でスヤスヤとお昼寝中です。


『ポツポツ……』


「――あ、降ってきたわよ雨」

「本当ですね」


「本降りになる前にルシャラ殿のお店に行きましょう」


 傘を差しながら、私達三人はルシャラちゃんがお店をしている【猫ノ亭】に向かいます。



「クーちゃん、シナギクちゃん着きましたよ」


 雨の匂いが香るなか、私達はルシャラちゃんのお店に到着しました。


 ルシャラちゃんのお店はなかなかに古く、時代を感じさせる木造建築で、飾り吊るされている赤提灯あかちょうちんと横開きの扉にお店の名前が書かれています。

 しかし呑み屋さんというわけではありません。


「のど渇いた。あの猫なんで飲食店とかにしなかったのよ」


『ガラガラ……』


「おじゃましま~す!」


 お店に入ると自動的にランプに火が灯り、蓄音機からは音楽が流れ始めました。


 ルシャラちゃんのお店は雑貨屋さんで、珍しそうな物から、何に使うのか分からない物まで沢山あります。

 ……少し散らかっていますが。


「出てきませんねルシャラ殿」


「どうせ店の奥で下らない実験とかしてるんじゃないの……」


 そう言うとクーちゃんは、お店の片隅に置かれている、なんらかの術式が施されている自動人形の両手を掴んで遊び始めました。


 私とシナギクちゃんはというと、物珍しげな表情で辺りを見回します。


 薬草、漢方、鉱石や鉱物。

 ルシャラちゃんは錬金術にも興味があると言っていたので、おそらく変な形をした物質はその失敗作かと……。


「趣味が悪いわねぇ……」


 そういうクーちゃんの目の前には、無数にある生き物の骨の標本。これらも売り物なのでしょうか?


「ボクは好きだけど……あ、この石知ってる。クォーツ、アメジスト、ムーンストーン、それにコレはオパールだ」


「物知りですねシナギクちゃん。この結晶はなんでしょう?」


「ちょっとハナそれ魔結晶じゃない。レア物よ。なんでアイツこんなの持ってるのよ」


 私達の話が盛り上がっていたその時です。

 なにか実験にでも失敗したのでしょうか? お店の奥から沢山の猫と一緒に、黒い煙に包まれながらルシャラちゃんが現れました。


「にゃは、お主ら来ておったか」

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