プロローグ
よろしくお願いします。
勝てない。
本能的にそう理解できてしまうほどの威圧感。押し潰されそうなほどの重圧。
そんなものを放つ怪物が数メートル先にいる。先ほど騎士の頭が一撃で消し飛んでからは、一瞬で恐怖が伝播し、誰もが絶望の表情を浮かべ動けないでいる。
いや、そんな中で別の意味で諦めたような顔をしている者がいる。
「はぁ~・・・ やるしかないかぁ・・・・一応仕事だしなぁ」
そうつぶやいた少年は、力の抜けた手のひらを上に向けた。
すると、少年の手のひらの空間が歪み、スマートフォンのような形状のものが出てきた。
そして、少年がそれを操作した瞬間、少年の着ていた服が光を発しながら変化した。さらにそれだけでなく、いつの間にか黒い指ぬきグローブ、背中には両刃の黒い剣が装備されている。
そのありえない光景に誰もが言葉を発せない中、一人の声が響いた。
「そんな・・・ 生明が・・・・・・・・《偽剣》?」
その声とほとんど同時に、少年----生明 零----は剣を肩に担いだ。
そして、
「えいやー」
やる気のない声とともに突撃していった。