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16ページ 不思議な人

 前回のお話~

 ユーイが回復しました。


「……んあ、もう朝……?」


 窓から差し込んでくる光で目が覚める。まだ眠いんだけどなぁ。

 ふかふかのベッドから起き上がると、やっぱりユルグが起きていた。

 ユルグは僕に気づくと、挨拶代わりに丸い手を上げた。


「うん、おはよう。ユルグ」


 縦に頷きながら、武器を拭くのをやめて、相変わらず爆睡しているリフィスに

 武器の先端を向ける。

 と、同時にリフィスが目覚め、素早く右に回転しながらソファの足にぶつかった。


「ノウッ……」


額を押さえながらリフィスは悶絶する。あれ、前にも見たような気が……。


「詰めが甘かったな」


 笑みを浮かべながら、ユルグが武器を手放す。

 すると、武器は光を帯びて徐々に消えていった。もう何回も見たけど、やっぱり不思議だ。

 


 さて、全員起きて朝食も取り終えたところで。

 もう一度、方針を聞いておこうかな。


「ねぇユルグ。ケルンを出たらもう西の国へ出発するの?」


「そうだな。足りないものがあったらここで補充しておけよ」


「ん、分かった」


 えっと、足りないものは……、食料とその他諸々くらいかな。


「じゃ、出ようか」


 僕は重いリュックを背負って、ユルグとリフィスはいつもどおりのていで階下に降りた。


「もう、出発するのかね?」


 リフィスが宿を出る手続きをしていると、二階から降りてきたお爺さんが僕に聞いてきた。

 足まで覆う程の黒いローブを着ていて、長く白い口髭と澄んだ緑の瞳が特徴的な人だ。


「はい、そうですけど」


 あれ、緑の瞳……ってもしかして。


「……リナのお爺さんですか?」


 僕の質問にお爺さんは微笑んだ。


「いかにも。ユーイ君、だったかな」


 縦に頷く。


「君がいなかったら、わしも生きていなかったかもしらんかった。本当にありがとう」


「い、いえ。それ程大したことは何も……」


 何だか逆に困ってしまう。家族そろって恩義深いのかな。

 ともあれ、差し出された手を握る。とても暖かった。

 ふと、後ろからユルグにつつかれた。そっか、もう行かなきゃ。


「では、僕たちは行きます」


 手を離して、おじぎする。


「うむ。気をつけて、な」



 と、いうことで。

 旅の準備を整えて、町の外に来ていた。


「さ、進もうか」


 舗装された砂道を歩き始める。

 後ろでふたりがなにか話していたけど、何を言っていたかは分からなかった。

 多分、旅のことだと思う。

 なんとなく、昨日の出来事を思い出してみた。リナの魔法……すごかったなぁ。


「魔法、かぁ」


 確か、魔石が直れば使えるとかいってたっけ。どれくらい強いんだろう。


「あ。そういえば、お前に伝えてなかった」


 僕の呟きに反応してかリフィスが隣にやって来て、僕のリュックからはみ出した守護の剣を指差す。

 

「守護の剣の魔法はすんげぇ強力だ。それ故にマナも無茶苦茶に消費しちまう」


 はぁ。要するに……。


「魔石が直っても、僕じゃあ魔法は使えないってこと?」


「んー。今のお前の体力だったら一回使ったら一日気絶する」


 うわぁ。燃費が悪いってレベルじゃないよそれ。


「結局駄目じゃないか……」

 

 すっかり肩を落としてしまった。


「まぁ、毎日ユルグと特訓してたらいつかはまともに使えるようにはなるんじゃないか……多分」


 多分、ねぇ。

 

 そんな会話をしていたら、いつの間にか森の中に入っていた。

 結構深く、広いようで怪しい雰囲気が漂っていた。

 

「魔物が出るかもしれん。気をつけろよ」


 ということで、周りを見ながら慎重に進むことに。

 あ、あの茂みとか怪しそう……。

 がさっ

 一斉に注意が向いた。やっぱり何かいる。

 リフィスが少し近づいてみる。武器は持ってないけど、あの強さなら多分大丈夫だろう。

 がさがさっ


「そこだぁっ!」


 茂みから何かが飛び出してきた。と、同時にリフィスが抱きつきに近いタックルをかます。

 攻撃は見事に命中し、がしゃんっと鈍い音を鳴らしながら何かは倒れた。

 赤い立派なトサカのついた兜に、全身に着込まれた重く硬そうな防具。

 茂みから出てきたのは、ユルグ達と同じくらいの背丈をした小柄な騎士だったのだ!

 ……でも、騎士?

 顔は見えないし、子供だったらこんな鎧も装備できないはず。

 やっぱり魔物なのかな。


 ふと、また茂みから声がした。


「おーい、マーフィー!」


 声は近付いてきて、やがて同じ場所に声の主がやって来た。

 見上げる位の長身と同じく長い金色の髪。そして糸目。

 

「おお、ここにいたのか!良かった良かった……」


 その人は、ちいさな騎士の頭を撫でてこちらを向いた。

 長身を覆い隠すように真っ白なマントがはためく。


「すみません、こいつが迷惑をかけませんでしたか?」


 微笑みながら、騎士を指差す。

 

「いや、別に何もしてこなかったぜ。それより、ソイツってもしかして……」


 リフィスが聞こうとしたところを、優しい顔をした男の人はやんわりと手で制した。


「立ち話もなんですから、休める場所でゆっくり話しましょう。ね?」


 ……一体どんな人なんだろう? 


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