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15ページ 癒しの魔法 後

 


 前回のお話~

 ばったり会いました。以上。


「あ、こん……痛っ」


 挨拶を返そうと思ったら、つい右の手を動かしてしまった。

 痛みで、一瞬視界が朦朧とする。


「大丈夫ですか!?」


 女の子が慌ててこちらに駆け寄ってきて、僕の手をとってくれた。

 少し落ち着いて、視界が戻ってくる。おかげで転ばずにすんだ。


「うん。大丈夫……じゃない」


「ですよね」


 お互い息をついた。

 ちょっとした間の後、女の子が口を開く。


「あの、迷惑かもしれませんが、お怪我を治しましょうか?

 こう見えても、魔法使いなんですよ」


 そう言って、少しはにかんだ。

 そうだ。言われてみれば、杖を持っていたということは魔法使いであるも同然じゃないか。

 でも、何だか申し訳ない気もする。


「受けたいのは山々なんだけど、僕は今お金がないんだ」


 すると女の子は大袈裟なほどに手を振りながら、お代は要らないと言ってくれた。

 

「じゃあ、お願いしようかな」


 ということで、関係者用の客室に案内された。

 クッションが付いた木のソファが対に並べられていて、その間には細長いテーブルがある。

 壁にはおしゃれな絵画が飾ってあったけど、僕の素人目では全く価値が分からなかった。

 とりあえず、座っておこう。

 ……。

 

 ほんの数分後。がちゃり、とドアが開けられる音がした。

 中に入って来た女の子は、道中で会ったときと同じ手軽そうなローブを着ていて、手には杖が

 握られていた。


「では、始めましょう」


 部屋の中が静かなので、変な緊張感がある。少し不安だ。


「えっと、僕はどうすれば良い?」


「そうですね。まずは怪我をしている部分を見せて下さい」


 怪我しているのは肩だから、服ごと脱いじゃおう。

 うわー、かなり酷い状態だ。これ、本当に治るのかな。


「失礼します」


 女の子はそう断ってから肩にそっと触れて、その次に何かをトンと当てられた。

 すると、これまた何かが広がっていく感覚を覚える。痛くはない。


「いきますよ……えいっ」


 そんな言葉とともに、今度は刺されるような痛みを感じた。

 のも一瞬で、肩の腫れが嘘みたいに退いていった。不思議と体も軽い。


「すごい……一体どうやったの?」


「いえ、そんなに大したことはやっていないんですよ」


「この杖の魔石で”治癒”の魔法陣を展開して、後は柄でつついて魔法を発動したんです」


 う……うん。分かったようなわからないような。



 さて、服を着直して、と。


「治してくれて本当にありがとう。……えっと」


 お礼はしなくて良いと言われたけど、やっぱり何か恩を返したい。

 せっかくここまでしてくれたのだから。


「お礼、何がいいかな」


 気持ちを察してくれたのか、少し思案顔になる。


「そうですね……。では、旅のお話を聞かせてもらえますか?」


 そう言って、ゆっくりと微笑んだ。


「うん、良いよ。じゃあ、どこから話そうかな……」



「……で、今は妖精フェアリーのユルグ、リフィスと一緒に旅をしているんだ」


 ひとしきり話し終えて、時計を見ると結構な時間がたっていた。

 流石に父さんとの旅から話すと長かったかな。

 とりあえず一息つくと、聞き手になっていた女の子がふと話し始めた。


「良いですね、旅って。私ももっと広い世界を見てみたいな……」


「なら、旅に出ればいいんだよ」


 その言葉を聞いてか、女の子はこちらをじっと見た。

 おかしいことでも言ったのかな。

 

「ふふっ……ですよね、旅をすればいいんですよね」


 そう言って、女の子は立ち上がる。


「お話、とても楽しかったです。……お名前は?」


 あぁ、そうだった。名前、全然聞いてなかった。


「僕はユーイ。君は?」


「私はリナ・イーリアと言います。リナと呼んでください」


「分かった。リナ、また会うときは、僕と、僕達と一緒に旅をしよう。

 大変だけど、きっと楽しいよ」


「……はい!いつか、そう遠くない日に」


 短いような、長かったような、不思議な時間だった。


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