13.5ページ 修行その1
どうも、作者です。
ユーイ君と行ったり来たりですがご勘弁を。
「……んあ」
どれくらい眠っていたんだろう。全然覚えがないや。
大きく伸びをして、とりあえずベッドから降りる。
時計は丁度一日の半分を指していた。夕食まで後一時間くらい。
「……起きたか」
若干不機嫌そうなユルグが僕の剣を担いでこちらにやってくる。
そして、剣を僕に放り投げてきた。
何だろうと思いながら、一応剣を受けとる。
「どうしたの、ユルグ?」
そうたずねると、ユルグは呆れ顔でこう言った。
「修行したいと言ったのはお前だろう……」
あ、あ、。そういえばそんなことを言ったかもしれない。
確か……昨日の夜、寝る前に。
「行くぞ」
そう言って彼は部屋を出てしまった。僕も慌てて後を追う。
※
宿屋を出て、街を抜け、外れのだだっ広い草原に来た。
「ここらで良いだろう」
ユルグが数歩前に進んで振り返り、僕と向かい合う形になる。
「さぁ、剣を抜け」
え、実剣で?
戸惑ったけど、とりあえず剣を構えて深呼吸をする。
そしてもう一度剣を構えなおすと、それを合図と受け取ったのか早速
ユルグが仕掛けてきた!
※
だっ、とユルグは地面を蹴り走り出す。
小さな身体からとてつもない威圧を放つその姿は、並の者では怯んでしまう位のものだった。
一瞬で呆然としていたユーイの眼前まで迫り、高く跳躍した。
草を踏んだ音で、ユーイはようやく今の状況を確認し、反射的に剣を横に構える。
ユルグはそれを気にするでもなく、両手に持った短い木刀を思い切りユーイに叩きつけた。
「っ!?」
重い衝撃が走る。まるで巨人に踏まれたかのような。
頭がショックで鈍くなり、剣を支える腕が馬鹿みたいに震える。
まずい。
ユーイは殆ど無意識の状態で、剣身を木刀の輪郭に沿ってずらしていく。
反動から立ち直ったユルグは素直に受け流された。
だが、ユーイには反撃する余裕もなく、恐怖と衝撃で小刻みに動く体を必死に
押さえてなんとか姿勢を保つ。
一方ユルグは、軽やかに空中を回転しながら、元の位置に着地した。
「気を抜くなよ」
そう言って今度は木刀を投げつけてきた。
木刀はくるくると宙を舞いながら、まっすぐにユーイに向かっていく。
「落ち着ついて……前を見て……」
ユーイはそう自分に言い聞かせ、木刀をはじく構えをつくる。
体を投てき物に合わせて立ち、両手でしっかりと剣を握る。
「ここだっ」
木刀が回るタイミングを掴み、的確に剣を滑り込ませていく。
剣身に軌道をずらされた木刀は明後日の方向に飛んでいった。
「上手いな。だが……」
どんっと鈍い音が、ユーイの背後で響く。
びりびりと右肩から流れた痺れが右手に伝染り、思わず剣を手放してしまった。
「あ……」
安堵とその他諸々の感情がないまぜになって、全身から力が抜けていく。
ユーイは思わずその場でへたり込んでしまった。
「大丈夫か?」
相も変わらずいつもの表情で、ユルグが手を差し伸べる。
召喚されていた木刀はもう消えていた。
ユーイはありがとうと言って素直にその手を受け取り、立ち上がる。
さっきまでの様な、張り詰めた緊張感は無くなっていた。
※
「そろそろ夕食の頃だろう。戻るぞ」
「う、うん……」
宿に帰る道中、ユルグから色々評価を聞いた。
一言にまとめると、防御は良いからスタミナと攻撃をどうにかしろっていうことだった。
分かり切っていたような気もするけど、やっぱり修行はやった方がいいかな。
まぁ、それはまた別にして。
痛い。無茶苦茶なほど肩が痛い。
すごく首周りが熱いし、そもそも肩が動かない。
というか、ユルグが全然気づかないとはどういうことなのか。
……顔にでないのかなぁ。良いんだか悪いんだか。
……どうにかなることを祈るしかない、ね。
はい、ということで。
次回はユーイ君が肩を治してもらったりとか色々やります。多分。
ではっ