9ページ 西へ向かう その3
どうも、作者です。
今回はちょっと長めです。
では、どうぞ。
前回のお話~
砂漠の中央まで来たユーイ一行。西地方まであとちょっと!
朝早く。日が出る少し前くらい。
ヒューマ(現で言う人間)の少年と、二匹の妖精が黙々と砂漠の中を進んでいた。
「今日は、あの能力は使わないの?」
不意に少年……ユーイが口を開いた。妖精の片方、ユルグが答える。
「ああ、なるべくマナは温存しておきたい。それに、それほど状況が悪いわけでもない」
「そっか」
短い会話が途切れ、まただんまりになる。これに気を悪くしたのか、ユーイの後ろにいたリフィスが話し始めた。
「なぁ、ユーイ」
「ん、どうしたの?」
先を進むユーイがリフィスの方へと振り向く。ユルグは関心を示さず、ただユーイの隣を歩く。
「オイラ達って何の妖精に見える?」
リフィスは自分を指差して笑った。フードを被っているのでユーイからは良く見えない。
しばらくして、ユーイが確認するように尋ねた。
「えっと、確か妖精にも色々な種類がいるんだったよね」
「そう。だからオイラがこうやって聞いてるんだから」
ふむ……。ユーイは考えあぐねた末に、降参の白旗を上げた。
「わかんないなぁ……」
「じゃあヒント!オイラは絵筆を使う。ユルグは世界を旅している。これでどうだ?」
ユーイはヒントをもとにあてずっぽうで答える。
「…絵描きと旅の妖精?」
これにリフィスは若干困った顔をして、
「あー。まぁ当たり、かな」
「正解は、オイラは創造の妖精。で、ユルグが世界の妖精」
「創造と世界?」
想像しにくいワードにユーイは首をかしげた。
「簡単にいうと、オイラは魔法を守っていて、ユルグはレアルドを守っているんだ」
「なんだか、とてもたいそうなものを守っているんだね」
それを聞いたリフィスがちょっぴり謙遜する。
「いやいや。そんなことは…「止まれ」
急にユルグが制止をかけた。その声にリフィスとユーイはその場でぴたりと止まった。
すると、かすかに地中から音が聞こえた。何かがいる。
「あー、サソリか?」
リフィスが不機嫌そうにユルグにたずねる。
「ああ」
そう頷いたユルグは召喚した魔法銃と十字型の剣を手にしていた。
ユーイもなんとなく状況を理解して、腰に取り付けた鞘から鉄のショートソードを抜き、構えた。
「……来る!」
ユーイのその言葉と同時に、地中から三人を囲むようにサソリが這い出てきた。
砂色の甲殻を身にまとい赤くぎらついた眼を向けたそれは、通常のサソリより何倍も大きくなっていた。
一番初めに動き出したユルグは前方の二匹に青い弾丸を放った。
その動きは、あまりに速すぎてサソリの魔物は碌に反応できぬまま額の部分に直撃した。
ぱんっ、と渇いた破裂音が響き、その後にばしゃっ、と場違いな水の音がした。
弾丸が弾けて魔法が発動し、中から水を散らしたのだった。
そして二匹の魔物はあえなく黒い霧と化した。
「残り四つ……」
早々に魔物を片づけたユルグはユーイに加勢することにした。
「てやぁっ!」
ユーイが勢いよく振り下ろした剣はサソリのしっぽにはじき返される。
態勢を崩したユーイは紙一重でもう一匹のサソリの毒針をかわした。
ひゅっ、と目の前に飛び出てきた不意打ちにユーイは顔をひきつらせながら一歩後退する。
「あ、危なかった……」
気を引き締めて再び剣を構える。直後、青い影が横切ったかと思うとサソリの魔物が散り散りになってそのまま黒い霧となって消えていった。
「大丈夫か?」
声を聞いてユルグだとようやく分かったユーイは半ば呆然としつつも頷いた。
「そうか。あとは頼む」
ユルグはそう言ってリフィスの方に向かった。
一対一となったユーイはひとつ深呼吸してサソリの魔物へ斬りかかった。
魔物は鋏でそれを受け止め、毒針を突き出す。
「おっと」
ユーイはそれを軽く剣でいなし、水平に斬撃をかます。
鈍く光る刃はしっぽに命中し、毒針ごと吹き飛ばした。
そしてユーイは続けざまに突きを繰り出し、とどめの回転斬りを放つ。
「喰らえっ!」
突きは腹部の外殻のあいだに直撃し、回転斬りは両の鋏を斬り飛ばした。
クリティカルヒットの上にオーバーキルまでされた魔物はあっけなく黒い霧となった。
「そっちは……大丈夫だよね」
汗をぬぐいながら、見た先はリフィスが魔物をぼこぼこに叩いているところだった。
その視線に気づいたリフィスは消えかけの魔物を蹴っ飛ばして、ユーイのもとに向かってきた。
「さ、敵も片付いたしさっさと行こうぜ」
「うん」「ああ」
一行はひとまず準備を整え、再び歩き始めた…。
その後の道中では大したこともなく、日が暮れる頃には西のしるしが見えてきた。
しるしの奥では木が生い茂っている森となっていた。
「やっと、この砂漠とおさらばだな」
ユルグがぼそりと呟く。リフィスとユーイはその言葉に気づくこともなく、ただただ呆けていた。
心ここにあらず、といった一人と一匹にため息をつきながらユルグは先を歩いていく。
そんなこともありながら、一行の舞台は西へと移っていく……。
はい、最後の終わり方がすごく適当に見えますがスルーしてください。
次回か次回の次に新しく誰かが出ててきます。
なんとなく待っていて下さいね。
では。