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この街に来て4日が過ぎた。
結局、昨日1日はタカギの気まぐれな観光の後をついてまわるだけに終わった。
今朝も昨日と同じルートをほぼ同じ様な時間で回っているが、果たして今日はなにか収穫があるだろうか。時刻は既に正午を回っている。
朝食の時間が早いだけにそろそろ空腹を感じていてもいい頃だと思うのだが、タカギからはそんな様子は微塵も感じられない。
お腹減ったなぁ…。
と、タカギが一軒の店の前で立ち止まる。
「………」
花屋か…。
まだ昼食はおあずけのようだ。
…結局、タカギは昼食を採ることなく、花束を手に街外れの共同墓地まで歩き続けた。
誰か知り合いに接触を図るのではないかと、少しは期待していたのだが、ただの墓参りだったようだ。
「?」
老人は墓の前に花を供えると、しばらくして墓地の奥に向かって歩きだした。
街に戻らないの?
墓石の陰に隠れるようにして様子をうかがっていると、どうやらタカギ老人の目的がわかってきた。
墓地の向うから微かに、プロペラ音が聞こえてくるのだ。
老人が墓地の奥の山陰に入る。
ついに動きがあった!
微かにとはいえプロペラ音が聞こえてくる以上、そこにはブルームが、そしてライダーがいるとみてまず間違いは無い。
急いで位置を変え、老人の姿を用意しておいた双眼鏡の視界に捉える。
「さあ、何が出てくるのかしら?」
老人が歩いていく。その先には…
「!」
リズミカルなプロペラ音と共に現れたのは、見覚えのあるくたびれた機体と、小柄な黒髪の少年だった。
ソラじゃないの! なんで!?
思わず叫びそうになってしまう。
タカギ老人とソラは軽く挨拶をかわした後、親しげに何事かを話している。
ここからでは声まではさすがに聞き取れない。…が、見たところ初対面ではなさそうだし、話しながらタカギがソラの機体をいじっている。
老いたとはいえ、名設計技師が関るほどの何かがあのくたびれた箒にあるというのか?
会話の内容が解ればなぁ…。
そう長い時間ではなかったが、箒をいじっていたタカギが機体から離れた。
ソラが老人に軽く頷いて、箒の機首を上げる。
途端に、旋風が巻き起こった。
荒れた大地に風切音を叩きつけてソラの機体が急上昇する。
信じ難い加速だった。
とてもこの前と同じ機体とは思えない。
ゼロ速度からトップスピードまでの加速があっという間だった。
その様子をタカギが地上から見て頷いている。
しばらくして戻ってきたソラと何ごとか話すと、軽く手を上げて二人は分かれた。
街に戻るようだ。
どうやら…これは……追加調査が必要ね。