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第9話

第9話 「監獄の王」

法廷の天井が崩れ落ちる。

白い瓦礫。

黒い炎。

砕けた時計の針が空中へ舞い上がる。

「逃げるぞ!!」

真の声。

怪盗団が一斉に走り出す。

だが。

法廷の出口が閉じた。

巨大な白い壁がせり上がる。

「はぁ!?」

龍司が殴りつける。

しかしビクともしない。

その時。

天井の裂け目から、“目”が完全に姿を現した。

巨大。

ビル数十個分はある。

白い瞳孔。

その周囲を、無数の時計の針が回転している。

『観測完了』

『反逆因子確認』

『対象――トリックスター』

声だけで空気が震える。

杏が耳を押さえた。

「なにこれ……!」

ジョーカーは目を離せなかった。

なぜか。

“知っている”。

この存在を。

だが思い出せない。

その時。

もう一人のジョーカーが、初めて焦った顔を見せた。

「……来るのが早すぎる」

明智が睨む。

「お前、あれを知ってるな」

沈黙。

そして相手は低く言った。

「あれが“王”だ」

法廷全体が静まり返る。

『零番個体』

巨大な目が、もう一人のジョーカーを見る。

『処分対象』

相手は舌打ちした。

「……チッ」

その瞬間。

巨大な白い腕が天井から伸びる。

空間そのものを引き裂きながら迫ってくる。

「伏せろ!!」

轟音。

法廷半分が消滅した。

消えた。

破壊ではない。

“存在そのものが削除”された。

「な……」

祐介が絶句する。

もう一人のジョーカーは後方へ飛ぶ。

だが白い腕は執拗に追う。

『失敗作』

『不要』

「失敗作……?」

すみれが呟く。

その時。

もう一人のジョーカーが叫んだ。

「お前らまで巻き込まれたいのか!」

全員が驚く。

敵のはずだった。

なのにその声には、わずかな焦りがあった。

ジョーカーが睨む。

「お前の目的は何だ」

相手は数秒黙る。

崩壊する法廷。

降り続ける瓦礫。

その中で。

「……世界を終わらせる」

低い声。

「だが、“あれ”の世界よりはマシだ」

巨大な目が輝く。

『反逆思考確認』

『削除』

白い光が収束する。

モルガナが叫ぶ。

「ヤバい!!」

ジョーカーは即座に前へ出た。

「アルセーヌ!!」

黒い炎。

「サンドリヨン!!」

紫の氷。

「ロビンフッド!」

緑の閃光。

怪盗団全員のペルソナが同時に出現する。

光と闇が激突した。

轟音。

法廷そのものが吹き飛ぶ。

そして――

全員の身体が宙へ投げ出された。

「うわあああ!!」

落下。

白い空間。

終わりのない奈落。

ジョーカーは落ちながら周囲を見る。

仲間たちも落ちている。

だが。

巨大な目だけは、ずっとこちらを見ていた。

『見つけた』

『二度目の反逆者』

その言葉と同時に。

ジョーカーの脳内で、何かが繋がった。

記憶。

封じられていたもの。

白い都市。

燃える空。

そして。

自分の前に立つ、“王”。

『何故だ』

『何故、人類を諦めない』

その時の自分は、笑っていた。

『決まってるだろ』

記憶の中のジョーカーが答える。

『あいつら、バカだからな』

『放っとくと勝手に転ぶ』

『でも』

『それでも前に進く』

記憶が途切れる。

現実へ戻る。

ジョーカーの瞳が揺れる。

「……俺は」

その瞬間。

落下の先に、“海”が見えた。

白い海。

そこには無数の人影が沈んでいる。

全員、仮面を付けていた。

「まさか……」

真の顔が青ざめる。

「東京の人たち……?」

『そうだ』

巨大な目が告げる。

『彼らは幸福だ』

『苦しまず』

『悩まず』

『自由に傷つかない』

白い海から、無数の腕が伸びる。

怪盗団を引きずり込もうとする。

「嫌っ……!」

杏が叫ぶ。

その時。

もう一人のジョーカーが空中で振り返った。

そして。

初めて、本当に感情のある声を出した。

「ジョーカー!!」

全員が驚く。

相手は黒いアルセーヌを呼び出した。

『反逆せよ』

黒い炎が爆発する。

白い腕を焼き払う。

「お前らはまだ落ちるな!!」

「……!」

ジョーカーが目を見開く。

相手は笑った。

どこか寂しそうに。

「お前だけは――」

言葉が途切れる。

次の瞬間。

巨大な白い槍が空間を貫いた。

ズドンッ!!

「がっ……!」

もう一人のジョーカーの胸を、白い槍が貫く。

すみれが叫んだ。

「!!」

白い海へ血が落ちる。

巨大な目が無機質に告げた。

『零番個体』

『処刑完了』

だが。

刺されたまま、相手はジョーカーを見て笑った。

「……今度は、間違えるな」

その身体が白い海へ落ちていく。

ジョーカーが反射的に手を伸ばす。

「待て!!」

しかし届かない。

黒い炎は海へ沈み、

やがて見えなくなった。

そして直後。

怪盗団全員が、別の空間へ吸い込まれていく。

最後に見えたのは。

巨大な目が、静かに笑う姿だった。

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