第二十二話
こうして我々一行はラクダに乗り、ミアロスへ帰ってまいりました。
「あー着いた着いたー!」
シオは、その言葉の後に、我が故郷、と続きそうなほど感慨深い感じで言う。
町の入り口がキラキラ輝いて見えた。セカに会う前までは本当に辛い旅だった…。
「『レイニー』まで送るよ」
私が一人、泣きそうになっていると、セカがそう言ってくれた。
「ありがとうございます。お言葉に甘えます」
私は軽く会釈をしながら答えた。
三人でこうやって歩くのも最後かー、と思うと名残惜しい気がしてしまった。
「セカおじちゃん、私のかき氷食べて行ってーー!!」
「か、かき氷?」
「魔法で出した氷で作ったかき氷!!」
と、シオがグイグイとセカを引っ張っていく。
そして、ついにバーの入り口に着いた。
私たちが賑やかに話していると、扉が凄い勢いで開いた。
「レイニー…ちゃん!!…じゃない。ごめんなさい」
てっきりレイニーさんが出てくるものと思っていたが、別の人が出てきて、シオは驚いて謝った。
そこに立っていたのは、黒髪に緑の瞳の、見たことのある、人。
「シアン…さん…」
「え…」
私は驚きすぎて、一歩下がって息を呑んだ。
「え?誰?」
シオは私と『彼』をきょろきょろ見て困惑している。
その瞬間、一番最初に動いたのはセカだった。
シオを自身の後ろに引っ張り、剣の柄に手をかけた。
「セカ様…?」
しかし、『彼』は動かなかった。動けなかったのかもしれない。
…この状況、どうしたらいい??
「はいはい。ストップ。うちの前でもめ事は厳禁よ」
そこでやっとレイニーさんが出てきて、私たちの間に入ってくれた。
「あら?ヨアンちゃん、貴女男連れなのー?しかも、超イカした男連れてるじゃない!!」
「話を余計ややこしくしないでください、レイニーさん…」
セカをなめまわす勢いで見ているレイニーさんを止めつつ、全員店の中へ入った。
「えーっと、どこから説明したらいいのかしらね。数日前から、ユラちゃんがうちに、自分に似た女の子を探しに来てたのよね」
ユラくんは、ジッとシオを見ながら頷く。
並んでみるとますます似ている。
「噂を聞きまして。私に似ている女の子がこの町にいると…。何かの手掛かりになるかと思い、訪れました」
「え?え?もしかして、シオの本当のパパなの?おにーさんが?」
シオはレイニーさんの膝に乗りながら、身を乗り出して聞いている。
「…それは…」
ユラくんは少し、いや、非常に困惑した表情を浮かべている。
「私も、貴女の存在を初めて知りまして…すみません…」
「えー」
シオも困ったような表情を浮かべている。
「シオのこと。黙っていてくれませんか?ラドクリフ様に…」
私は懇願するしかなかった。
その様子を見て、
「できないのなら、俺がこの場で…」
とセカが脅すように言う。
「ちょっと、アンタたちは早とちりなのよ!しかもその解決方法やめてちょうだい」
ここでレイニーさんが止めに入る。
「もう、ママとセカおじちゃんは黙っててよ!!!」
シオも怒ってテーブルを叩いた。
「シオ…さん。私が貴女の父と名乗っていいのか、貴女が許すのなら…」
ユラくんはおずおずと名前を呼び、シオに言った。
「だって、そうなんでしょ。似てるもん。事実だもん。ま、シオのパパはレイニーちゃんだけど」
「え?あたしをパパだと思ってるの!?うれしいけど、複雑…
」
せめて、ばぁばがよかったわ、とレイニーさん。
「私は、シオさんのことも、シアンさんのことも、ラドクリフ様に報告するつもりはありません」
ユラくんは、そこはきっぱりと言ってくれた。
私とセカは眼を合わせてホッと胸を撫でおろした。
「でも、私のこと探してたのは、ラドクリフ様の命令じゃないの?」
一番の疑問をぶつけた。
だって、そうじゃないとおかしいもの。それ以外に、なぜ私の行方を探す?
「貴女が心配だったからですよ…」
私のその疑問に、ユラくんは深いため息をついた。
「え?シンパイ…ですか?」
「自分の妻が、謎の男に攫われたのを見て、心配しないわけがないでしょう」
「でもでも、もう七年以上経ってるし…」
「時間は関係ないですよ」
ユラくんは少し安心したのか、脱力している。
「それに私はもう、ラドクリフ様にはお仕えしていませんので報告する義務もありませんね」
「え!?そうなんですか!!?」
「まあ…そうですね。婚姻も、離縁という形になりました」
わぁお。知らぬ間にバツイチやんけ!
なんだか、ユラくんには苦労をかけてしまった気がする、すごく。
「ごめんなさい…」
この一言で、今までの苦労が報われるとは思わないけど、私は謝らずにはいられなかった。
「貴女が無事だったので、ぜんぜんかまいませんよ」
ユラくんはそう言って首を振った後、
「そんなことより。なぜセカ様がこちらにいらっしゃるのでしょうか?」
熱のない目をしながら言う。
「何年経っても、変わらないな…ユラ殿。
俺はフェンリルで迷子になってたシアンたちをここまで送り届けただけだ」
「そうですか…ならよかったです」
なんだか相変わらず二人はバチバチしているなぁと思った。
「ユラ殿はもう、シアンとはなんの関係もない立場だろう。俺がここにいようがいまいが何か言える立場じゃないだろ」
「それはお互い様ですよね」
「「……」」
なんか前より仲悪くなってない?
「ママ、モッテモテだね!」
と、シオがなんか言ってた気がする。




