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第十八話

女王アリを倒したことで、魔物の気配がなくなったため、地下二階で一泊することになった。



その夜、シオは疲れたのかぐっすりと眠っていたが、私は一睡も出来ずにいた。



かなり怖かったからだ。



私自身も怖かったけど、シオに何かあったらと思うと怖かった。



私はテントから出ると、テントの外にはレイチェルさんが見張りをしていた。



「お怪我のあとなのに、大丈夫ですか?」



私はレイチェルさんに駆け寄ると、



「私たちは、ヨアンさんが思っているよりずっとタフなので、大丈夫ですよ」



と笑って答えた。



しばらく談笑しながら、焚火をしていると、不意にレイチェルさんは真剣な表情をした。



「…シオちゃんのことなのですが…。


やはり王都に行って、然るべき教育を受けるべきだと私は思います」



「…王都…魔法使い登録をしたほうがいいってことですか?」



「魔法使い登録、というシステムがこの国にあるのかは聞いたことがありませんが、きっと似たようなシステムがあると思います。


シオちゃん自身も冒険者になりたがっているみたいなので、もっと大きくなったら、ギルドに正式に登録して、冒険者になるのはいかがですか?」



国に登録するのは、私はちょっと苦い思い出があるので嫌なのだが、シオは冒険者になりたがっているし、悩ましいところだ。



「うーん、すぐには決められませんね…最終的に決めるにはシオだろうけど…」



シオは嬉々としてギルド登録しそうだな。


…考えるだけで悩ましい。



「…私たちも、できればシオちゃんにお願いしたいですし」



どうやらこのメンバーは、一様に貴族嫌いらしい。



「私たち以外にも、いますよ!魔法使いになるべく頼らず冒険している人たち!」



「そうなんですね…。でも皆さん強いから、魔法使いいなくても大丈夫じゃないですか?」



と私が聞くと、



「それがねぇ。魔法しか効かない魔物もいるから、魔法使い必須のダンジョンもあるんですよね。悔しいけど攻撃の幅も広がりますし」



とレイチェルさんはため息をつく。



なるほどなぁ…。



こんな話をしながら、夜は更けていった。






「ママー起きよー」



今日もシオに起こされてしまった。



…夜遅かったから、いつもより眠い。



でもレイチェルさんが見張りをしてくれているから、早く起きないと。



皆に挨拶した後、軽く朝ごはんを済ませ、地下三階の階段までやってきた。



「またか…」



私は下の階の漆黒の闇を眺めながらぼやいた。



なんとか中腹まで来たとき、アマンダさんが言った。



「なんか、こっちに来る!」



「ええええこんなところでぇ!!」



ちょうど中腹。まだまだ下は漆黒の闇だ。



「鳥みたいな魔物がこっちにくる!リック、松明の炎消したほうがいいかも!」



アマンダさんの言葉に、すばやく火を消したリックさん。



光の届かない漆黒の闇が広がる。



バサバサと遠くから、羽ばたく音だけが聞こえる。



そして、私たちも息を潜め、じっと鳥が過ぎ去るのを待つ。



バサバサ、バサバサと頭をかすめそうなくらいの距離を飛んでいった。



羽の音が遠ざかるのを確認すると、火はつけずにそのまま再び下り始める。




もー!絶対!!金輪際!!ダンジョンには行かない!!





その後、なんとか地面にたどり着き、私は本気で泣きそうだった。


足ががくがくだ。



「この先、何があるかわからないので、固まっていきましょう」



とレイチェルさんが言う。



抜刀できる距離は空けつつ、私たちは固まって歩いた。



そんな時、



「ねえねえ、あそこ何か、あるよ?」



とシオが私に声をかけてきた。



「何かって何?歩くのに集中しないと!」



「あ!そ!こ!」



あまりに強く言うので、そちらを見てみた。



少し離れたところ、壁の近くに、木の箱が置いてあった。



「え?人工物?」



私がそう言って立ち止まると、みんな一斉に立ち止まった。



明らかに誰かが持ってきたような箱が一つポツンと置いてあった。大きさは人ひとりが入れそうなくらい大きい物。



みんなも興味を持ち、そちらに歩いていく。




そして目の前に立った時、私は例のあの気配を強く感じた。



(マッドの気配がする…マッドの荷物?)



私は開けたい衝動に駆られた。



しかし、レイチェルさんは冷静で、



「いったん、落ち着きましょう。なにかの罠かもしれないわ」



と言った。



でも、この気配…



「特に、鍵とかはついていないみたいだから、開けることはできそう」



とアマンダさんが言った瞬間、





グォォォォォ!!




と地面が揺れるくらいの激しい咆哮が背後から聞こえた。



咄嗟に意味もなく頭をかばう。



「オークだわ!!」



「オーク…」



聞いたことはある



ファンタジー映画とかに出てくる、巨大で恐ろしい怪物だった気がする。



そう、そのものがすぐ近くにいるのだ。



そして、棍棒を振り回し、こちらに向かって突進してくる。



リックさんが素早く盾を構えるが、オークに跳ね飛ばされてしまった。



え?もしかして、ピンチじゃない?



私は、魔法を撃とうとするシオを抱きしめて、その場に座り込む。



「いっけーーー!!」



そんなのお構いなしに、シオは大きなつららを出し、オークに向かって撃つ。



腕にぶつかった。



オークは少したじろいだが、余計怒ってしまい、こちらに向かってきた。



「こちらへ!」



レイチェルさんが、私たちを木箱の陰に案内してくれた。



「ここに隠れていて」



そう言って、レイチェルさんはオークに向かって行った。



棍棒を避けながら、何太刀も斬りかかるも、なかなか深い傷を与えられない。



その間にも、少し距離をおいたアマンダさんが矢を射る。



「リック、大丈夫か?」



「ああ、問題ない」



ダウニーさんがリックさんを助け起こしにいき、少しずつ体制を整える。



「あ。ママ…」



私がハラハラ見ていると、シオが私を呼んだ。



「何?今ちょっと…」



大変なところ、と言いかけると



「ここに階段あるよ」



とシオが言った。



「え?」



シオの指す、木箱の下に、なんと石でできた階段があったのだ。



「ダウニーさん!こっち!!」



私は急いで近くにいたダウニーさんを呼び、階段を確認すると、一斉に逃げる準備に取り掛かった。



「あたしが巻いちゃう!」



そう言ってアマンダさんが弓矢を射ながら、走り回り、オークをかく乱する。



その隙に全員木箱の近くへ。



そして、最後にアマンダさんが階段までやってきて、木箱で蓋をした。



その場で皆、息を潜めると、ドシンドシン足音がウロウロしていたけど、あきらめたのか去って行った。



その後、リックさんが松明に火を着けた。



すると、階段には一段一段宝石のような物が散りばめられていて、光に反射してキラキラした。



「綺麗…」



シオがしゃがんで宝石?を触っている。



「ここは、なんなんですかね?今までロープの階段だったのに…急に人工物…」



と、私はレイチェルさんに聞いてみるも、レイチェルさんにもわからないらしく、首を捻っていた。



「とにかく先に進んでみましょう」



そう言って、レイチェルさんは先を歩き出した。



階段を降り切ると、そこには長い廊下があり、ろうそくに火がついていて、明るかった。



「どうみても、人工物…」



レイチェルさんは壁に手を当てながら言う。



そして廊下の先に、光が見えた。



「外だ…」



全員警戒しながら、外に出ると、そこは禍々しい庭が広がっていた。



食虫植物みたいのがいっぱい植えてあり、油断するとこちらが食われそうな植物ばかりだった。




そして、その庭の先。



毒々しい紫色をした、巨大な城が建っていた。

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