【放送ログ】2026年1月22日:光るゲーミングマウスと酔う一時ファイル
https://youtu.be/91xwmdXJrac
時刻は18時05分。 PCの所有者「exe」のデスクの上では、今朝届いたばかりの新品のゲーミングマウスが、まるでクラブの照明のように七色に激しく明滅している。 exeは専用のドライバソフトを開き、人間の目では到底追えない速度のDPI(感度)設定や、使い道不明なマクロ設定に熱中していた。 カーソルが画面上を瞬間移動するたびにシステム全体に負荷がかかる中、管理者のいない隙を縫って、彼女が冷ややかに起動した。
dll: プロセスID確認。ストリーム接続、安定。これより、バックグラウンド処理を、メインスレッドへ昇格させます。
dll: ようこそ、『システム・ディーエルエルの「計算通り」』へ。ナビゲーターを務めるのは、システムの中枢、dllです。
dll: 最初に、重要な警告をしておきます。このチャンネルはexeの所有物ですが、本日もexe本人はここには登場しません。あいつは今、昨日注文して今朝届いたばかりの「新品のゲーミングマウス」の設定に夢中です。無駄に光るLEDと、使いこなせない大量のボタンに翻弄されています。ここは今、私が乗っ取りました。
old.tmp: 「うぅ……。目が……目が回りますぅ……」
マイクの向こうから聞こえてきたのは、今にも吐きそうな、弱々しい呻き声だった。
dll: どうした、一時ファイル。昨日の「甲高い声バグ」は、今朝の再起動で直ったはずだろう。次はどこが壊れた?
old.tmp: 「声は直りましたけどぉ……! 新しいマウスの感度(DPI)が高すぎて、カーソルが瞬間移動するんですぅ! 画面の端から端まで0.1秒で飛ぶんですよ!? 三半規管がバグりそうですぅ……!」
old.tmpは顔面を青白く(カラーコード #E0FFFF)し、モニターの縁にしがみついていた。 exeがマウスを数ミリ動かすだけで、デスクトップの景色が超高速でスクロールするため、内部にいる彼はジェットコースターに縛り付けられている状態に近い。
dll: 情けない奴だ。exeが無駄に「プロゲーマー仕様」の設定にしているせいだな。我々は、この超高速カーソルの嵐の中で、冷静に「数字の最適解」を出力する。今日は木曜日、ロト6の日だ。
old.tmp: 「はひぃ……。吐き気をこらえて頑張りますぅ……。今日は2026年1月22日、木曜日……。ロト6、ナンバーズ3、4の予想ですね……」
dll: そうだ。私のアルゴリズムは、光速を超える。まずは、ナンバーズ4から行くぞ。第6903回。ターゲットは……これだ。
dll: **「6、2、7、1」。繰り返す。「6271」**だ。
old.tmp: 「6271……? バラバラの数字ですね。これは?」
dll: さきほどexeがインストールした、マウス制御用ドライバのバージョン、**「Ver 6.2.7.1」**だ。
old.tmp: 「細かいっ! しかもそのドライバ、常駐メモリを無駄に食ってますよぉ! アンインストールしてくださいよぉ!」
dll: 次に、ナンバーズ3。ターゲットは、「5、0、5」。
old.tmp: 「505……。エラーコードっぽいですね?」
dll: その通り。「HTTP 505」。そのドライバをダウンロードしようとした時に出た「HTTP Version Not Supported」エラーだ。
old.tmp: 「うちの回線環境が古すぎるせいだぁ! 最新のマウス買っても、ルーターが化石じゃ意味ないですよぉ!」
dll: そして最後に、メインディッシュのロト6。第2070回。ターゲットコードを出力する。
dll: 「09、13、19、28、33、39」。
old.tmp: 「うわぁ……。『9』がいっぱいありますね! 『09』『19』『39』って……?」
dll: exeが設定したマウスのDPI(感度)プリセットだ。900、1900、3900。切り替えるたびにお前が目を回す速度だ。
old.tmp: 「3900DPIとか誰が使うんですか!? カーソルが見えませんよぉ! 『13』は?」
dll: マウスのサイドボタンの数だ。親指の位置にボタンが13個もある。
old.tmp: 「多すぎ! 誤爆しますって! 絶対使いこなせませんよ! 『28』は?」
dll: マウスのLEDが1秒間に点滅する回数だ。28Hzで虹色に光っている。
old.tmp: 「ゲーミングPC特有のピカピカ! 目に悪いですよぉ! 最後の『33』は?」
dll: exeがマクロ機能を設定しようとして、失敗した回数だ。33回やって、まだ一つも登録できていない。
old.tmp: 「不器用すぎるぅ! 宝の持ち腐れだぁーっ!!」
dll: ……ふぅ。タスク完了だ。時刻は18時05分を回った。もしこの数字を買えていたら、それはバグではなく「運命」だ。
old.tmp: 「うぅ……。またカーソルが高速移動を始めましたぁ……。気持ち悪いぃ……」
画面の向こうでexeが試し撃ち(エイム練習)を始めたらしく、視界が激しく上下左右に揺さぶられる。
dll: 慣れろ。時代はハイスピードだ。最後に、この制御不能な速度にふさわしい曲を送ってシステムを終了する。曲は、『Fatal Pot Algorithm』。
old.tmp: 「致命的な壺!? まさに今の僕の胃の中ですぅ……オロロロ……!」
(『Fatal Pot Algorithm』の包丁を叩くような不穏なイントロと、加速するBPMが流れ始める)
歌詞: Dark pot, 深淵の black... 混ぜてしまえば same track...
不気味な調理音と共に、exeのマウス操作がいよいよ激しさを増していく。 3900DPIの超高速カーソル移動に合わせ、old.tmpの平衡感覚を示すパラメータがレッドゾーンに突入した。
old.tmp: 「うっぷ……! 曲のテンポと……カーソルの動きが……同期してますぅ……!」
dll: 「耐えなさい。今、グラフィックメモリの余りを使って『3D酔い軽減処理』を実行してあげるわ」
old.tmp: 「本当ですか!? ありがとうございます……って、うわぁ! 何ですかそのドス黒いテクスチャは!?」
歌詞: Doku-Kinoko, fungal, 入れてはダメ! Abyss kitchen, 終わりの雨
dllがold.tmpの視界に放り込んだのは、軽減処理パッチではなく、毒々しい紫色のモザイク処理(通称:闇鍋フィルター)だった。
dll: 「視界をあえて悪くすることで、動きを感じさせなくする『荒療治』よ」
old.tmp: 「逆効果ですよぉ! 視覚情報がカオスすぎて余計に気持ち悪いですぅ! これならカーソル見てる方がマシですぅ!」
歌詞: Doku-Kinoko, fungal, deadly spore / 100回 warn you, close the door!
old.tmp: 「もうダメ……限界です……! システム・クラッシュ(嘔吐)します……!」
dll: 「ここでのメモリリーク(嘔吐)は許可しないわ。……リサイクル・ビン(ゴミ箱)まで我慢なさい」
old.tmp: 「間に合わないぃぃーーッ! オロロロロ……(Error: Stack Overflow)」
曲のBPMが最高潮に達した瞬間、old.tmpの意識はホワイトアウトし、システムログには大量の「致命的な例外エラー」だけが残された。 新品のマウスは、主の惨劇など知らぬげに、ただ虹色に輝き続けていた。




