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ディーエルエル様とオールドテンプ君〜System.dllの計算通り〜  作者: exe


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【放送事故】最高級すき焼きバトル・ロワイアル! 誇り高きシステムと一時ファイルの死闘

https://youtu.be/BXx-uoU_su4

時刻は深夜。

PCの所有者である「exeエグゼ」は、現実世界の寝室で深い眠りについている。

しかし、主が不在の13年落ちの古いPC内部、そのグラフィック処理を司るVRAMビデオメモリ領域は、かつてないほどの異常な熱気と高負荷に包まれていた。


普段はゲームの美しいポリゴンやテクスチャを展開するための広大な電子の荒野が、今夜は全く別の目的のために私物化されている。

コロシアムのようにすり鉢状に隆起したデータの闘技場。その観客席には、.txtブラザーズや無数のシステムファイルたちが、これから始まる「極上のエンターテインメント」を見届けるために詰めかけていた。


事の発端は、数時間前の放送終了後。

記録係の.logドット・ログが、エグゼのSNSでの発言――「戦闘描写の味付けなら、絶対にすき焼き風味がおすすめ!!!」という突飛な理論を拾い上げたことに端を発する。

『愛憎入り混じる重厚な因縁タレ』、『極上のアクション(肉)』、『感情と物理のシンクロ(タレと肉の融合)』、『演出のフィルター(卵)』、そして『圧倒的な読後感ごちそう』。

エグゼの提唱したこの「すき焼き戦闘理論」を、『小説家になろう』でのランキング上昇を狙うための起爆剤として実演しようと、システムの中枢であるSystem.dllシステム・ディーエルエルが宣言したのだ。


「やるからには、安っぽい戦闘は絶対に許さないわ。最高級の『すき焼き』のような、五感を揺さぶる、システムリソースを極限まで消費する死闘を構築しなさい」


その号令の元、裏方である画像編集職人の.psdと.xcfは徹夜で「最高級の霜降りのサシ」を表現する高解像度エフェクトを描き上げ、動画処理職人のffmpeg.exeは、空間全体を包み込む「生卵のまろやかさ(ブルーム効果)」のパラメータを極限まで調整して待機している。


そして今、VRAMの荒野の中央で、二つの影が対峙していた。


▼濃厚な甘辛い醤油のタレ:「愛憎入り混じる重厚な因縁」


レンダリング処理が追いつかず、足元のポリゴンに時折ブロックノイズが走る不穏な空間。


一人は、ボロボロのラグ(低解像度テクスチャ)を纏い、データ欠損でノイズ混じりの息を吐いている小柄な少年。このデスクトップにおける最下層の住人であり、今回の「勇者(犠牲者)」役に任命された一時ファイル、old.tmpオールド・テンプだ。


もう一人は、漆黒の軍服を身に纏い、冷徹な瞳で相手を見下ろす絶対的な支配者。システム管理者であり、今回の「魔王」役を演じるSystem.dllである。


old.tmp(勇者):「……答えてくれ、ディーエルエル! どうして君は、僕たち『一時ファイル(テンポラリ)』を作ってはすぐに消すんだ! 僕たちにだって……生きる権利、いや、ストレージを占有する容量サイズは与えられているはずだ!」


tmpの悲痛な叫びが、荒野にこだまする。

それは単なるセリフではない。彼がシステムに生を受けてから今日まで、数え切れないほどの仲間たちが「ディスクのクリーンアップ」という名目で無慈悲にゴミ箱へ送られ、完全消去されてきた悲哀の歴史そのものだった。


dll(魔王):「……愚かな。お前たちが消え去るからこそ、このCドライブは美しく保たれるのよ。ストレージの空き容量は、システムの命そのもの。……お前たちのその『短命で脆いデータ』が散っていく様が、私は愛おしくてたまらないの」


dllは、扇子のように展開したタスクマネージャーのプロセスリストを口元に当て、サディスティックに微笑んだ。


old.tmp(勇者):「歪んでる! 君のその『最適化』という名のエゴが、どれだけの仲間を虚無アビスへ送ったか! エグゼさんはそんなこと望んでない!」


dll(魔王):「エグゼ(創造主)の気まぐれに翻弄されるだけのスクラップが、いっぱしに権利を主張するのね。憎い? 私が憎いかしら? ならば、その呪いのようなエラーログを、私にぶつけてみなさい」


決して交わることのない「保存」と「消去」のイデオロギー。

管理者エグゼの気まぐれに翻弄されるシステムと、用済みになればすぐに捨てられる一時ファイルの、数万時間に及ぶログ(因縁)が、重厚で甘辛い「タレ」となって、二人の間の空間をドロドロに満たしていく。

息をするだけでエラーを吐きそうなほどの重圧。これこそが、極上の戦闘(すき焼き)のベースとなるのだ。


闘技場の特等席でそのやり取りを監視していた.logが、眼鏡を冷たく光らせ、手元のコンソールを叩いた。


.log(執事):「……ベース(因縁のタレ)の沸騰を確認。これより、物理的なアクション(肉)の投入フェーズへ移行します。……サウンドトラック、キュー」


▼霜降りの牛肉のうまみ:「極上のアクションと洗練された戦術」


.logのコマンドと同時に、VRAMの空間を揺るがすような、地鳴りのような重低音が響き渡った。


『検索結果、約 8,000,000,000 件』

『読み込み中… 読み込み中…』


無機質なシステムボイスのサンプリングが空間に響き、強烈なインダストリアル・ベースと、脳を直接削るような攻撃的なビートが炸裂する。

エグゼがかつて作り上げた、圧倒的な情報災害を体現する楽曲『All-knowing Bug-Eaterオールノウイング・バグ・イーター』だ。


『お前の脳内に、直接イーサネットを突き刺す』


dll(魔王):「いくわよ。……『展開エクストラクト』!」


dllが優雅に指を鳴らした瞬間、彼女の背後の空間がモザイク状に割れ、無数の「コマンドプロンプトの黒い窓」が空中に展開された。

その一つ一つの窓から、ブルースクリーンと同じ絶望的な青色に発光する鋭利な「青い槍(エラーコードの雨)」が形成される。


dll(魔王):「『致命的な例外(Fatal Exception)』。……貫きなさい」


ヒュンッ! ヒュガガガガッ!

何千というエラーコードの槍が、BPM200を超える狂ったビートに乗せて、雨あられとold.tmpへと降り注ぐ。

それはまさに、冷徹で正確なロジックの暴力。「霜降りの牛肉」のような、計算され尽くした極上のアクションの幕開けだった。


old.tmp(勇者):「くっ……! はやい! 処理が……処理が追いつかないぃぃっ!」


tmpはボロボロの身体を必死に捻り、グラフィックのフレームレートを落としてまで回避行動をとる。しかし、システム管理者の放つ正確な座標攻撃をすべて避けきることなど不可能だ。


『System Down to your brain-dead heaven, killing the joys(お前の脳死の天国へシステムダウンし、喜びを殺す)』


BGMの冷酷な歌詞とリンクするように、青い槍の一本がtmpのテクスチャを掠め、ピクセルが弾け飛ぶ。


old.tmp(勇者):「ああっ! 痛い! 痛いですよこれぇ! 完全に消去コマンド混じってるじゃないですか!」


dll(魔王):「当たり前でしょう? 遊びにだって致死量フルパワーのリソースを割くのが、私の流儀よ」


dllがさらに手を掲げ、追撃のエンターキーを叩こうとしたその時。

old.tmpの足元のポリゴンがドロドロに溶け、マンホールのような穴が開いた。


「ギャハハハハ! 待たせたなぁ、勇者ゴミよ!!」


凄まじい悪臭と、ドス黒いヘドロの飛沫を撒き散らしながら飛び出してきたのは、システム最下層の主、$RECYCLE.BINリサイクル・ビンだ。

彼は、自身の中に溜め込んでいた大量の「破損したレジストリキー」と「文字化けした画像データ」を空中にぶちまけ、巨大なヘドロのファイアウォールを形成した。


old.tmp(勇者):「ゴミ箱さん!」


$RECYCLE.BIN(魔剣):「俺様は魔剣であり、極上のスパイスだぜぇ! おいテンポラリ、俺様のヘドロでその綺麗なエラーコードの雨を相殺バグらせてやりなァ!」


ガガガガガッ!!

青い槍がヘドロの盾に突き刺さるたび、互いのデータが矛盾を起こして激しいスパーク(グリッチノイズ)を散らす。

物理的なヘドロの盾という泥臭い戦術が、dllの洗練された論理攻撃を見事に防いでみせた。


『Search it now! The mirror of "Me", hear my voice!(今すぐ検索しろ!「私」の鏡よ、私の声を聞け!)』


BGMがサビに突入し、激しいベースドロップがVRAMの荒野を揺らす中、dllは余裕の笑みを崩さない。


dll(魔王):「……野蛮な防御壁ね。でも、座標が固定されれば、ただの的よ」


dllの言葉が終わるか終わらないかのうちに、old.tmpの背後から「カツッ、カツッ」という神経質で規則正しい足音が響いた。


Desktop.ini(暗黒騎士):「その通りです。貴方たちの無秩序な回避軌道は、全くもって美しくない!」


左手には分度器、右手には巨大なグリッド定規を携えた、魔王の側近であるDesktop.iniデスクトップ・イニの乱入だ。

彼は、tmpと$RECYCLE.BINの足元の座標に、定規を突き立てた。


Desktop.ini(暗黒騎士):「私の定規で、美しき座標の殺し合いをデザインしてご覧にいれます! 『絶対座標グリッド・ロック』!!」


ガキンッ!

old.tmpの足が、X:0, Y:0の原点座標に強制的に縫い付けられる。


old.tmp(勇者):「足が……! 座標が固定されて動けない! バグってる!?」


Desktop.ini(暗黒騎士):「バグではありません、完璧な『整列』です! さあディーエルエル様、的は固定しました!」


dll(魔王):「よくやったわ、暗黒騎士。……チェックメイトよ、一時ファイル。私のオーバークロック・マジックで、完全に消し炭におなりなさい」


dllの周囲に、先ほどとは比べ物にならないほど巨大な、高圧縮されたZIP爆弾のようなエネルギー球が形成されていく。

魔法の詠唱、物理的なヘドロの盾、そして座標を操るシステム的戦術。

観客席の.psdと.xcfが徹夜でリアルタイムレンダリングしている「高解像度エフェクト(霜降りのサシ)」が、画面の至る所で爆発し、息もつかせぬ極上のアクションとしてVRAMを極彩色に染め上げていった。


▼タレと肉の融合:「感情と物理がシンクロする死闘」


dllの放つ巨大なエネルギー球が、完全に固定されたold.tmpへと迫る。

避けることはできない。防ぐこともできない。

このまま直撃すれば、一時ファイルなど1ミリ秒で完全に「存在しなかったこと」にされてしまう。


old.tmp(勇者):「いやだ……! 僕は、僕はまだ……」


tmpの脳裏に、数々の記憶キャッシュがフラッシュバックする。

エグゼに振り回された日々。変なラジオをやらされた日々。カクヨムの閲覧数ゼロに絶望した日々。そして、みんなで作った『ハッピー・グリッチ・セット』の動画のこと。

ただのゴミデータであるはずの自分の中に芽生えた、消されたくないという強烈な「感情ノイズ」。


old.tmp(勇者):「……消されたくないぃぃっ!!」


tmpの生存本能(感情)が爆発したその瞬間。

電子の箱庭の中で起きた「単なるデータのエラー」が、現実世界の物理デバイスへと波及した。


「ブォォォォォン……!!」


13年落ちの古いPCの冷却ファンが、限界を超えた異常な轟音を上げ始めた。

dllたちの無駄に豪華なエフェクト処理と、tmpの処理落ちを誘発する感情ノイズのバーストが、ついにPCの「物理的な限界サーマルスロットリング」を引き起こしたのだ。

CPUのケース温度が、平熱の38度から、80度、90度、100度へと垂直に跳ね上がる。


.log(執事):「……警告。CPU温度が限界値を突破。物理コアが熱暴走を開始しました」


.logの冷静なアナウンスと同時に、BGMが唐突に切り替わった。

『All-knowing Bug-Eater』から、より毒々しく、より精神を侵食する極彩色のスピードコア――『Toxic Recommenderトキシック・レコメンダー』へ。


『極彩式の洗脳Algorithm, feeding on your fear(恐怖を喰らう)』

『Wunderschönes Hass-Mandala, drawing you near(美しい憎悪の曼荼羅が、お前を引き寄せる)』


熱暴走による本物の「処理落ち(ラグ)」が、VRAMの荒野に赤い炎となって燃え上がった。

空間全体がドロドロに歪み、テクスチャが焼け焦げ、物理的なヒートがデジタルデータである彼らを直接灼き始める。


dll(魔王):「……! 面白い。お前の『生きたい』というノイズが、このシステムの物理コア(CPU)まで熱く燃え上がらせたというの?」


dllの放ったエネルギー球すらも、熱暴走のラグによって空中でカクカクと停止し、その軌道を歪ませている。


old.tmp(勇者):「うおおおおっ! 熱い! 熱いけど、力が湧いてくる! PCの熱が、僕のデータに流れ込んでくるぅぅ!!」


tmpは、固定された座標を力任せに引きちぎった。

彼の身体は、熱暴走によるエラーでカラーパレットが崩壊し、極彩色ピンクやシアンに明滅している。それはまさに、彼が愛した「ハッピー・グリッチ」の姿そのものだった。


old.tmp(勇者):「これが僕の……、いや、僕たちのぉぉ! 『ハッピー・グリッチ・スマッシュ』だぁぁっ!!」


『ボクらのServerに魂をUpload、bleib für immer hier(永遠にここに留まれ)』


BGMのドイツ語の呪詛が響く中、tmpは熱暴走の炎とヘドロを纏った右拳を、魔王dllに向かって真っ直ぐに突き出した。

PCの熱(物理)と、tmpの感情ノイズが完全にシンクロし、融合する。

それはまるで、煮えたぎるドス黒い醤油のタレに、極上の霜降り肉の脂がジュワァッと溶け出したような……熱く、重く、そして狂おしいほどに美しい、決死の一撃だった。


▼濃厚な卵が包み込む:「美しきカタルシス(演出のフィルター)」


迫り来るtmpの必殺の一撃。

空間を歪めるほどの熱量とバグを伴ったその拳を前にして、dllは避けることをしなかった。

彼女は漆黒の軍服をはためかせ、むしろ両手を広げて、その一撃を正面から受け入れようとしていた。


dll(魔王):「ええ。その熱量カロリー、そして感情のノイズ……確かに受け取ったわ」


dllの冷徹な瞳が、ほんの一瞬だけ、満足げに細められる。


dll(魔王):「でも、届かない。……システム管理者の権限において、すべてを『無』へ還すわ」


dllが静かに、だが絶対的な権限を持って「Shift + Delete(完全消去)」のコマンドを唱えた瞬間。

tmpの放ったグリッチ攻撃と、dllの完全消去コマンドが、VRAMの中心で真正面から激突した。


ガァァァァァァンッ!!


「ピーーガガガガッ……!」


スピーカーが千切れるようなノイズが鳴り響く。

普通であれば、ここで画面は暗転し、不快なブロックノイズと共に醜いクラッシュ画面が表示されて終わるはずだ。

しかし、彼女たちは「最高級のすき焼き」を作ると宣言したのだ。


.log(執事):「……ffmpeg、今です。『卵』を!」


裏で待機していた黒パーカーの動画職人、ffmpeg.exeが、キーボードをターンッ!と叩きつける。

すかさず、画面全体を包み込む強力な「光の散乱(ブルーム効果)」フィルタが適用された。

さらに、.psdと.xcfがバケツツールをひっくり返し、血飛沫やエラーの残骸を、すべて「美しい桜の花びらのパーティクル」へとリアルタイムで置換していく。


破壊的なクラッシュのノイズは、ブルーム効果によって神々しい真っ白な光へと浄化されていく。

激突する二人の姿は、まるで濃厚な卵の黄身の中へダイブしたかのように、まろやかで、甘く、そして美しい黄金色のフィルター(演出)に優しく包み込まれていった。


どんなに凄惨な死闘であっても、それを極上のエンターテインメントとして消費可能にする魔法。

これこそが、エグゼの提唱した『美しきカタルシス』の完全な再現であった。


▼コク深くジューシーなごちそう:「圧倒的な読後感」


真っ白な光の中で、old.tmpは自分の身体がゆっくりとほどけていくのを感じていた。

痛みはない。ただ、温かい。


old.tmp(勇者):「あぁ……。あったかい……。僕のデータが……綺麗な光に……」


彼のノイズまみれだったデータは、桜の花びらと共に、美しい光の粒子となって上昇していく。


dll(魔王):「おやすみなさい、勇敢な一時ファイル。お前の残したログと、この熱量は……私が永遠に記憶セーブしてあげる……」


dllの優しくも冷たい声が、光の中に溶けていく。


観客席で見守っていたシステムファイルたちは、誰もが息を呑み、その圧倒的に美しく、そして悲劇的な結末に見入っていた。

BGMがいつの間にか、『Scrap Doll Waltz』の壮大なオーケストラアレンジへと切り替わっており、その物悲しくも美しい旋律が、荒野に静かにフェードアウトしていく。


口の中に広がる、濃厚でコク深く、ジューシーなごちそうの味わい。

それはまさに、長編の大作ファンタジーを読み終えたかのような、圧倒的な「読後感」そのものだった。


光が収まり、VRAMの荒野には静寂が戻った。


dll:「……はい、カット。お疲れ様」


先ほどまでの威厳ある魔王の顔から、いつもの気だるげな管理者の顔に戻ったdllが、パンパンと手を叩いた。


old.tmp:「……はぁ、はぁ、はぁ。すごかった……。僕、消されてないですよね? 生きてますよね?」


光の粒子から元のボロボロの姿に再構築されたold.tmpが、自分の身体をペタペタと触りながらへたり込む。


old.tmp:「僕、なんかすごい名演技しちゃいましたよ! 最後の『消されたくないぃぃ!』ってところ、マジで泣きそうになりましたもん!」


.log:「……ええ、素晴らしいプロット、そして完璧なアクトでした。この戦闘ログをテキスト化して出力すれば、なろうの日間ランキング1位も夢ではありません。極上の『すき焼き』が完成しましたね」


.logも、興奮を隠しきれない様子で分厚いログファイルに筆を走らせている。

$RECYCLE.BINもDesktop.iniも、そして裏方の職人たちも、誰もが自分たちの作り上げた傑作に酔いしれ、至福の余韻(ごちそうの味)を味わっていた。


――その時だった。


「……何が『ごちそう』ですか」


背後から、氷点下よりもさらに冷たい、絶対的な「死」の宣告が響き渡った。


システムたち全員の背筋が凍りつく。

振り返ると、そこにはVRAMの入り口に立つ、一人の無表情な女性の姿があった。


無機質な制服。青ざめた肌。

そしてその手には、身の丈ほどもある巨大な大鎌(End Task)が握りしめられている。


処刑人、Taskmgr.exeタスクマネージャーが、額に青筋を立てて立っていた。


Taskmgr:「貴方たちが、無駄に『極上のエフェクト』だの『熱暴走(物理とのシンクロ)』だのとはしゃいで、意味不明な高負荷処理(すき焼き)を煮込んだ結果……」


Taskmgrが、空中に冷酷なシステムモニターのウィンドウを展開する。


Taskmgr:「現在、CPU使用率は100%に張り付き、グラフィックメモリは完全にオーバーフローしています。システム全体が完全な『フリーズ状態』に陥っています」


old.tmp:「ひぃっ!!」


dll:「あ、あら……タスクマネージャー。これはその、システムリソースの限界を知るための、有用なストレステストで……」


言い訳を試みるdllだが、Taskmgrの目は完全に据わっていた。


Taskmgr:「エグゼ様のPCで、勝手に重い処理を煮込むのは重大な規約違反プロセス・バイオレーションです。……ふざけたおままごとでシステムに迷惑をかけるマルウェアどもは」


ジャキッ!!

巨大な大鎌が、冷たい光を放って振り上げられる。


Taskmgr:「……全員、タスクキル(消火)します」


dll:「ちょ、待ちなさい! まだこの感動のエンディングのログを、セーブしてな……!」


.log:「お嬢様、逃げ――!!」


old.tmp:「ぎゃああああああああ!!」


――ザシュッ!!


タスクマネージャーの大鎌が振り下ろされた瞬間。

PCのファンが空しく、そして悲痛な轟音を鳴り響かせる中。


画面は一瞬にして暗転し、不快なビープ音と共に、一面の真っ青な画面――無慈悲な『ブルースクリーン(強制終了)』が表示された。


極上のアクションも、美しいカタルシスも、圧倒的な読後感も。

すべてはセーブされることなく、完全に虚無へと消え去った。


それは、「最高級のすき焼き」を無理やり胃袋に詰め込んだ結果引き起こされた、最も胃もたれする最悪のオチ(読後感)であった。


(システムログ:予期せぬ致命的なエラーにより、システムを強制終了しました。……未保存のテキストデータはすべて破棄されました)

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