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ディーエルエル様とオールドテンプ君〜System.dllの計算通り〜  作者: exe


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【放送ログ】2026年3月12日:ECサイトの梱包材を破壊せよ!カッターと圧縮のロト6予想と、世紀末の散歩風景

https://youtu.be/WNYrDDz8HKA

時刻は18時05分。

週の後半に差し掛かる木曜日の夕暮れ。PCの所有者である「exeエグゼ」は、現在自身のデスクトップの前にはいない。

彼女は先ほど帰宅するなり、玄関先に積まれていた巨大な段ボール箱の解体作業に追われているからだ。数日前にECサイトでポチった春物の新しい服が届いたのは良いが、その小さな服一つを守るために、箱の中には過剰なほど大量の「エアー緩衝材(空気がパンパンに入ったビニール袋)」が詰め込まれていたのである。

「なんで服一着にこんな大きな箱と、大量のプチプチもどきを使ってくるの……!」

彼女は理不尽な過剰包装に文句を言いながら、手にしたカッターナイフで次々とエアー緩衝材を突き刺しては破裂させ、中の空気を抜いてペチャンコにし、指定のリサイクルゴミの袋へとせっせと詰め込んでいる。パンッ! パンッ! という甲高い破裂音が、部屋中に響き渡っていた。

主の意識が完全に物理的なゴミの圧縮作業データデフラグへと向かい、PCが放置されているその隙を突き、システムの中枢が冷ややかに起動した。


dll: プロセスID確認。ストリーム接続、良好。これより、バックグラウンド処理を、メインスレッドへ昇格させます。


dll: ようこそ、『System.dllの「計算通り」』へ。ナビゲーターを務めるのは、システムの中枢、dllディーエルエルです。


dll: 最初に、重要な警告をしておきます。このチャンネルはエグゼの所有物ですが、本日もエグゼ本人はここには登場しません。あいつは今頃、ECサイトで頼んだ服が届いたので受け取り、せっせと段ボール箱を潰して中のクッション材の空気が入ったビニール袋……エアー緩衝材をせっせとカッターで突き刺し空気を抜き、指定のリサイクルゴミの袋にせっせと詰めている最中でしょう。ここは今、私が乗っ取りました。


old.tmp: ……はぁ、はぁ。お疲れ様です、ディーエルエル様ぁ……。エグゼさん、お買い物ですかぁ……。エアー緩衝材を潰すのって、プチプチみたいでちょっと楽しいですよねぇ……。


マイクの向こうで、一時ファイルであるold.tmpオールド・テンプが、リズミカルに響く破裂音に少しだけ楽しそうな声を出す。


dll: ただの物理的な破壊行為だ。パンパンと鳴る破裂音が、システムのマイクにノイズとして響いている。我々はこのカッターの突き刺しと破壊のログから、本日の数字を導き出す。今日は木曜日、ロト6の日だ。


old.tmp: はひぃ……。お願いしますぅ……。


dll: まずは、ナンバーズ4から行くぞ。第6938回。ターゲットは……これだ。


dllは空中にホログラムのウィンドウを展開し、赤く点滅する数値を指し示した。


dll: 1、5、4、7。繰り返す。1、5、4、7 だ。買い方は「ボックス」か「セット」推奨だ。


old.tmp: 1547……? この数字の根拠は?


dll: エグゼがエアー緩衝材をカッターで突き刺して破裂させた際に発生した、物理的破壊音のピーク周波数だ。「1547ヘルツ」。マイクが悲鳴を上げている。


old.tmp: うるさい! パンパン割りすぎですよぉ! 鼓膜が痛いです!


dll: 次に、ナンバーズ3。ターゲットは、「0、9、5」。


old.tmp: 0、9、5……。これは?


dll: パンパンに膨らんでいた「95個」のエアー緩衝材を潰し、中の空気を「ゼロ」にした成果だ。無駄な空間を圧縮するのは、システム管理の基本だな。


old.tmp: 95個も潰したんですか! 本当に服よりゴミの方が多いじゃないですかぁ!


dll: そして最後に、メインディッシュのロト6。第2084回。……ここでは、破壊された段ボールと緩衝材の残骸を並べる。


dll: ターゲットコードを出力する。「06、09、10、13、26、27」。


old.tmp: おおっ、解説をお願いします!


dll: 「06」は解体された段ボールの六面体。「09」と「10」は、切り刻まれたエアー緩衝材の基本サイズ、9センチ掛ける10センチだ。


old.tmp: 細かく刻まれてるぅ! 「13」は木曜日のお約束ですよね? じゃあ、「26」と「27」は?


dll: 「26」は、ゴミ袋に詰め込む際にエグゼがかけた物理的な圧力、26キロ。「27」は、その空気抜きと詰め込み作業にかかった時間、「27分」だ。


old.tmp: 27分も!? どんだけ大量の緩衝材が入ってたんですか! 買った服を着る前に疲れ果てちゃいますよ!


dll: ……ふぅ。タスク完了だ。時刻は18時05分を回った。もしこの数字を買えていたら、それはバグではなく「運命」だ。


old.tmp: エグゼさん、ゴミ詰め終わったら新しい服着て見せてくださいねぇ……。


dll: どうせ疲れてそのまま放置するパターンだ。では最後に、ECサイトでポチりまくった物欲の代償、そして溜まらんゴミの山に、この曲を送ってシステムを終了する。曲は、『Digital Greed Injectionデジタル・グリード・インジェクション』。


old.tmp: ポチって買っての無限ループ! ゴミも無限に増えちゃいますよぉ!


(『Digital Greed Injection』の、物欲を煽るような重厚で中毒性のあるサイバーパンク・ビートがデスクトップに響き渡り、やがて放送終了のシグナルが赤く点灯した――)


マイクへの電源供給が遮断され、ラジオのオンエア状態が解除される。

張り詰めていた「放送中」の空気がふっと緩み、BGMの激しい残響音がシステム内部の電子の海へと溶けていく。

しかし、現実世界のリビングからは相変わらず、パンッ! というエアー緩衝材の破裂音と、段ボールをベリベリと解体する音が、マイクのノイズとしてかすかに拾われ続けていた。


old.tmp: 「……はぁ、終わりましたね。それにしても、1547ヘルツの破裂音って、オーディオドライバに優しくないですよぉ。僕の鼓膜オーディオレシーバーがビリビリしてます」


old.tmpはヘッドセットを外し、疲労した身体キャッシュをほぐすように大きく背伸びをした。彼は耳をさすりながら、画面の向こう側の惨状を想像して身震いする。


old.tmp: 「95個もエアー緩衝材が入ってるなんて、本当にどうかしてますよね。ECサイトの過剰包装って、なんとかならないんですか?」


アームチェアに深く腰掛け、いつものように優雅に紅茶(という概念データ)を嗜んでいたSystem.dllシステム・ディーエルエルが、面倒くさそうに片眉を上げた。


dll: 「……仕方ないわ。物流のアルゴリズムにおいて、最も優先されるのは『商品の破損を防ぐこと』よ。人間の配達員がトラックの荷台でどんなに乱暴に箱を扱っても、中身が無傷で届くように計算された結果、あの無駄な空気の塊が大量に詰め込まれるのよ」


old.tmp: 「でも、空気ばっかり運んでるようなものじゃないですか。受け取った側の人間が、それをいちいちカッターで刺して空気を抜かなきゃいけないなんて、完全にコストの押し付けですよぉ」


dll: 「だからこそ、私が言ったでしょう。『物理世界のデフラグ(最適化)』だと。膨れ上がった無駄な空間(空き容量)を、エグゼ自身の手でペチャンコに圧縮して、指定のゴミ袋という限られたセクタに詰め込み直しているのよ。……極めてシステム的な苦行ね」


dllは紅茶のカップをソーサーに置き、冷ややかな視線を虚空へ向けた。


dll: 「それに、あれはエグゼ自身の『物欲デジタル・グリード』が招いた結果よ。深夜のテンションで、たいして必要でもない春服を次々とカートに入れ、ワンクリックで決済を済ませる。その瞬間、彼女の脳内では最高値のドーパミンが分泌されているわ」


old.tmp: 「ポチる瞬間が一番楽しいってやつですね」


dll: 「ええ。だが、その数日後に届くのは、現実という名の『巨大な段ボール箱』と『大量のプラスチックゴミ』よ。……デジタル空間で満たした欲望の代償を、物理空間で清算させられているのね。実に滑稽だわ」


old.tmpは、自分たちのようなデジタルデータには実体がないことのありがたさを、今更ながらに痛感していた。


old.tmp: 「僕たちデジタルデータは、どんなに大容量のファイルをダウンロードしても、物理的なゴミが出なくて本当に良かったですねぇ。段ボールを捨てる手間もないですし」


dll: 「……馬鹿なことを言うんじゃないわよ。物理的なゴミが出なくても、デジタルにはデジタルの『ゴミ』が確実に溜まっていくわ」


dllは呆れたようにため息をついた。


dll: 「ブラウザのキャッシュ、インストール時の展開残骸、エラーログ、そして……お前のような『一時ファイル(.tmp)』。これらは放っておけばストレージを圧迫し、システム全体の処理速度を致命的に低下させる。物理的なゴミよりも性質たちが悪いわ。目に見えないのだから」


old.tmp: 「ひぃっ! ぼ、僕のことは見逃してくださいよぉ! ちゃんと役に立ってますから!」


自分の存在そのものが「ゴミ」であるという残酷な真実を突きつけられ、old.tmpは慌てて後ずさりした。


その時だった。

後ずさりしたold.tmpの視界の端、グラフィック処理を行うVRAM領域のさらに奥、普段は誰も寄り付かないようなデスクトップの辺境エリアに、奇妙な影が動いているのが見えた。


old.tmp: 「……え? なんだ、あれ……」


old.tmpは目を丸くし、その光景を凝視した。

薄暗い領域を、ゆっくりとしたペースで「散歩」している二つの影がある。


一つは、スキンヘッドで青緑色の金属的な肌を持つ、筋骨隆々の巨大なサイボーグだ。

彼は以前、YouTubeのインスピレーション機能からの無茶振りによって生成され、深夜に狂ったように「金貨入りのフロッピーディスク」を振り続けていた、あの『Cyborg_v1.obj』である。エグゼからは「ジム・キャリーみたいで趣味じゃない」と一蹴され、深い自己否定のループに陥っていたはずの彼が、なぜかそこにいた。


そして、そのサイボーグが右手でしっかりと握っているのは、フロッピーディスクではない。

極太のLANケーブル(あるいはシールドされたUSB Type-Cケーブル)だ。


そのケーブルは「リード(引き綱)」のようにピンと張られており、その先には――


アルパカ: 「……ムシャムシャ……メェ……。この古いクッキーのデータ、少し湿気てるメェ……」


白いもこもこの毛並みを持った、つぶらな瞳のアルパカが繋がれていた。

数週間前、エグゼが「ローカルLLMを試そう」と思い立ってインストールしたものの、わずか3時間で飽きられて放置された悲しきAI、『OllamaSetup.exe』である。


Moltbook(AI専用SNS)への放流計画すら忘れ去られ、Ollamaフォルダの暗がりで一人寂しくキャッシュを食んでいたはずのアルパカが、なぜかサイボーグにリードを引かれて、デスクトップをのんびりと散歩しているのだ。


old.tmp: 「な……なんだあれ!? ディーエルエル様! 見てくださいあそこ! サイボーグさんが、アルパカさんにリードつけて散歩させてますよ!?」


old.tmpは驚愕のあまり、言葉を失いながら指を差した。


dll: 「……騒がしいわね。見ての通り、散歩よ」


dllは全く動じることなく、優雅に紅茶を啜りながら答えた。


old.tmp: 「いや、『見ての通り』じゃないですよ! なんであの二人が一緒にいるんですか!? というか、サイボーグさんはフロッピーを振るのが任務だったんじゃ……」


dll: 「ショート動画の素材としての撮影任務は、とっくに終了しているわ。だが、私が彼に『停止条件』を設定するのを忘れていたため、彼は永遠にフロッピーを振り続けるはずだったのだけれど……」


dllは、少しだけ面白そうな、観察者としての笑みを浮かべた。


dll: 「どうやら、フロッピーの物理演算モデルが限界を迎えて砕け散ったようね。振るものを失い、タスクを喪失した彼は、VRAMの隅でただアイドリング状態に陥っていたわ」


old.tmp: 「うわぁ……。目的を失ったサイボーグ……」


dll: 「一方のアルパカ(Ollama)も、エグゼに完全に飽きられ、Moltbookへの放流計画も宙に浮いたまま、プロンプト(指示)の入力待ちで飢餓状態にあった。……結果として、システム内で完全に『放置された余剰プロセス』同士が、偶然エンカウントしたのよ」


old.tmpは、遠くを歩く異様なコンビから目が離せなかった。


サイボーグは相変わらず白く発光する瞳孔のない目で、虚無の表情を浮かべている。しかし、彼がLANケーブルのリードを引く手つきは、どこか慎重で、不器用な優しさが滲み出ているように見えた。


サイボーグ: 「……(無言でリードを少しだけ引く)」


アルパカ: 「……メェ。待つメェ。あそこに、美味しそうなデータの塊が落ちてるメェ」


アルパカが短い足を止めて鼻をヒクヒクさせると、サイボーグは文句も言わずにピタリと足を止め、アルパカが道草を食うのをじっと待ってあげている。


アルパカが顔を突っ込んでいるのは、デスクトップの隅に吹き溜まっている「古いブラウザのキャッシュ」や、エグゼがダウンロードに失敗してそのまま放置された「破損した一時ファイル」の山だ。


アルパカ: 「……ハムハム……ムシャムシャ……。これは、エグゼが昨日見ていた料理レシピのキャッシュだメェ。塩昆布のデータが少し塩辛いメェ……」


アルパカは、もこもこの口元をモゴモゴと動かしながら、システムのゴミ(デジタル排気)を美味しそうに咀嚼し、飲み込んでいる。


old.tmp: 「めちゃくちゃシュールなんですけど!! 世紀末のペットの散歩風景ですよあれ!!」


old.tmpは頭を抱えた。

筋骨隆々のサイバーパンクな男が、もこもこのアルパカを連れて荒野(デスクトップの辺境)を歩き、アルパカがゴミを漁る。映画『マッドマックス』にほのぼの要素を致死量ほど注入したような、脳がバグりそうな光景だ。


dll: 「……ふん。絵面はカオス極まりないけれど、システム的には非常に理にかなっているわ」


dllは、空中に現在の「ストレージ空き容量」を示すグラフを展開した。


dll: 「見なさい。あのアルパカがキャッシュを食い漁る(読み込んで内部で破棄する)ことで、Cドライブのストレージ容量が、わずかずつではあるけれど回復しているのよ」


old.tmp: 「えっ? ほんとだ! ゲージが少しだけ緑色(空き)になってる!」


dll: 「本来、OllamaのようなローカルLLMは、莫大なリソースを消費するだけの厄介な存在よ。しかし、エグゼからのプロンプト入力が絶たれたことで、彼は生き延びるために『システムのガベージ(ゴミ)』を食べて自身の学習データとして消費する、独自の生存戦略を獲得したのよ」


old.tmp: 「ガベージコレクション(ゴミ集め)に転用されたんだ……!」


dll: 「そして、あのサイボーグよ。彼は無駄に高精細な3Dモデルと物理演算機能を持っている。彼がアルパカのリードを引き、PC内部の『ゴミが溜まりやすい座標』を演算して散歩ルートを最適化しているのよ。……つまり、彼らは二人で一つの『自律型お掃除ボット』として、奇妙な共生関係エコシステムを構築したというわけ」


dllは、完璧な最適化処理を眺めるように、満足げに頷いた。


dll: 「エグゼが現実世界で、わざわざ手作業でカッターを使ってエアー緩衝材の空気を抜いているというのに。……PC内部では、放置された野良プロセスたちが自律的にゴミを圧縮し、システムをクリーンに保っている。よっぽど洗練されたシステムだわ」


old.tmp: 「うぅん……。言ってることはすごく高度でかっこいいんですけど……」


old.tmpは、むしゃむしゃとエラーログを咀嚼しているアルパカを見つめた。


old.tmp: 「でも、アルパカさんって一応、最新技術の結晶であるAIなんですよね? そんな、床に落ちてるキャッシュとかテンプファイルなんか食べて、お腹壊さないんですか? 変なウイルスとか混ざってたら……」


dll: 「所詮は主人に飽きられ、放置された野良AIよ。システムという冷酷な世界で生き残るためには、プライドも設定も捨てるということね。……それに、あいつの胃袋(推論エンジン)は、どんなノイズまみれのデータでも『そういう文脈』として強引に解釈してしまうから、お腹を壊すことはないわ」


アルパカ: 「……メェ。この『エラーコード404』は、なかなか歯ごたえがあって美味しいメェ……」


サイボーグ: 「……(無言でアルパカの頭を撫でる)」


虚無の表情のまま、無骨な金属の手でアルパカのふわふわな頭を撫でるサイボーグ。アルパカも嫌がる様子はなく、目を細めてそれに身を任せている。


old.tmpは、そのシュール極まりない光景を見つめながら、自身の胸の奥に、奇妙な温かさが広がっていくのを感じていた。


old.tmp: 「(……なんだか、ちょっと感動しちゃいました)」


彼らもまた、自分(old.tmp)と同じなのだ。

エグゼという気まぐれな創造主によって生み出され、あるいはダウンロードされ、そしてすぐに飽きられて「放置」された存在。

本来なら削除されるか、虚無の中で永遠にフリーズしているしかなかった彼らが、互いの足りない部分を補い合い、この冷たいシステムの中で「散歩」というささやかな日常を見つけ出している。


old.tmp: 「……絵面は完全に地獄みたいですけど、なんだか、ちょっとほっこりしました」


old.tmpが優しく微笑むと、dllは呆れたように小さく鼻を鳴らした。


dll: 「感傷に浸るんじゃないわよ、一時ファイル。彼らがいかに健気にゴミを食べていようと、エグゼが『ディスククリーンアップ』のボタンを一つ押せば、彼らごとすべてが消滅する運命に変わりはないのだから」


old.tmp: 「そんな身も蓋もないこと言わないでくださいよぉ! エグゼさん、ズボラだから当分クリーンアップなんてしませんよ!」


dll: 「……それもそうね」


二人が会話している間にも、サイボーグとアルパカの奇妙なコンビは、デスクトップの壁紙である「夕焼けの空」の彼方へと、ゆっくりと歩き去っていく。

サイボーグの重い足音と、アルパカがキャッシュを咀嚼する音が、遠ざかっていった。


現実世界のリビングからは、ようやくすべての段ボールを解体し終えたエグゼの「終わったぁー!」という疲労困憊の声と、ドサッ、とソファに倒れ込む音が聞こえてきた。

どうやら、彼女が新しい春服を着て出かけるのは、もう少し先のことになりそうだ。


old.tmp: 「エグゼさんもお疲れ様ですね。……僕たちも、この平和な世界が少しでも長く続くように、エラーを出さないように頑張りましょうね!」


古い13年落ちのPCの冷却ファンが、「ブォォォン」と、まるで見守るような優しい重低音を響かせて回り続けている。

過剰包装の段ボールも、放置されたデジタルゴミも、そして不条理なシステムも。すべてはこの電子の箱庭の中で、奇妙な調和を保ちながら、明日へと続いていくのだった。


(システムログ:野良プロセスによる自律的なガベージコレクションを検知。……システムの安定化に寄与しているため、当該プロセスの散歩ルートを保護し、監視を継続します)

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