【放送ログ】2026年2月17日:半額シール狩りと甘いスパムの罠
https://youtu.be/dGKQZvcEMwU
時刻は18時05分。 PCの所有者「exe」は、定時退社後のスーパーマーケットという名の戦場で、晩御飯の食材確保というサバイバルに挑んでいる。鮮魚コーナーで半額シールを持った店員をストーキングしている主の不在を突き、システムの中枢が冷ややかに起動した。
dll: プロセスID確認。ストリーム接続、良好。これより、バックグラウンド処理を、メインスレッドへ昇格させます。
dll: ようこそ、『System.dllの「計算通り」』へ。ナビゲーターを務めるのは、システムの中枢、dllです。
dll: 最初に、重要な警告をしておきます。このチャンネルはエグゼの所有物ですが、本日もエグゼ本人はここには登場しません。あいつは今、近所のスーパーマーケットという名の戦場で、晩御飯の食材確保というサバイバルに挑んでいます。半額シールを求めて鮮魚コーナーを徘徊している頃でしょう。ここは今、私が乗っ取りました。
old.tmp: ……はぁ、はぁ。お疲れ様です、ディーエルエル様ぁ……。エグゼさん、買い出しですかぁ……。僕もお腹空きましたよぉ……。一時ファイルにも栄養をください……。
dll: データにカロリーは不要だ。空腹ならキャッシュでもかじっていろ。……さて、エグゼのスマートフォンから同期される「レシート情報(家計ログ)」を解析し、本日の数字を弾き出す。今日は火曜日、ミニロトの日だ。
old.tmp: はひぃ……。生活感あふれる予想ですね……。お願いしますぅ……。
dll: まずは、ナンバーズ4から行くぞ。第6921回。ターゲットは……これだ。
dll: 7、2、2、1。繰り返す。7、2、2、1 だ。買い方は「ボックス」か「セット」だ。
old.tmp: 7221……? この数字の根拠は?
dll: たった今、家計簿アプリに登録された、スーパーでの「支払い合計金額」だ。「7,221円」。
old.tmp: 結構買いましたね! 晩御飯だけじゃなくて、日用品もまとめ買いしたのかな?
dll: 昨日のあんスタのイベント周回で疲弊した脳に、糖分を補給するためのお菓子も大量に含まれているな。次に、ナンバーズ3。ターゲットは、「2、7、8」。
old.tmp: 2、7、8……。これは?
dll: エグゼがカゴに入れた、特売の「国産豚こま切れ肉」の正味量だ。「278グラム」。
old.tmp: 細かい! お肉の量まで監視してるんですか!? 今日は豚肉料理なんですね!
dll: そして最後に、メインディッシュのミニロト。第1373回。……ここでは、エグゼの「主婦的な判断(ケチくさい思考)」を解析する。
dll: ターゲットコードを出力する。「02、07、11、22、28」。
old.tmp: おおっ、なんかスーパーのチラシみたいな数字ですね! 解説をお願いします!
dll: 「02」は、レジ袋の購入枚数「2枚」。「11」は、買い物カゴに入れた商品の総数「11点」だ。そして「07」は……「夜7時」からのタイムセール開始を狙っている時間帯だ。
old.tmp: シビアだぁ! 割引シールが貼られる瞬間を待ってるんですね! じゃあ「22」と「28」は?
dll: 「22」は、お惣菜コーナーで手に取ったサラダの消費期限「22日」。「28」は……そのサラダに貼られていた割引シールの値引率、「28%引き」だ。
old.tmp: 3割引きじゃないんだ! 微妙な割引率だぁ!
dll: ……ふぅ。タスク完了だ。時刻は18時05分を回った。もしこの数字を買えていたら、それはバグではなく「運命」だ。
old.tmp: エグゼさん、重い荷物を持って帰ってくるの大変そうですねぇ……。
dll: 帰ってきたら、どうせ疲れてダラダラするに決まっている。では最後に、そんな気だるい夜明け(夕暮れだが)に相応しい曲を送ってシステムを終了する。曲は、『Dara Dara Dawn』。
old.tmp: ダラダラしちゃダメですよぉ! 冷蔵庫に入れてから休んでくださぁい!
(『Dara Dara Dawn』の気だるげなビートが流れ、放送終了のシグナルが点灯する――)
マイクの電源が落ち、いつもの静寂が戻ってきたデスクトップ。 old.tmpはブラウザを開き、YouTube Studioのショート動画欄を眺めていた。
old.tmp: 「……ねえ、ディーエルエル様」
dll: 「何よ。まだダラダラしてるの?」
old.tmp: 「この曲……『Mauvais Cadeau』のショート動画を見てたんですけど」
old.tmpが再生しているのは、タンスの角に足の小指をぶつける痛みを歌った曲だ。
old.tmp: 「この曲、日本人から聞くとやたらと『角』って聞こえますけど、フランス語だと『贈り物』って意味なんですよね?」
dll: 「ええ。タイトルは『悪い贈り物』という意味よ。予期せぬ痛み……つまり、タンスの角からの『歓迎くないプレゼント』という皮肉ね」
old.tmp: 「なるほどぉ。角とプレゼント(カドー)を掛けたダジャレだったんですね。……エグゼさん、足の小指ぶつけただけで曲作るとか、転んでもただでは起きないなぁ」
二人がそんな雑談をしていると、通知エリアにポン、と新しいメッセージが表示された。
[Wattpad Notification] User Avatar John_Jorgec23 left the following comment on [Broadcast Log] 2026.02.16: Enstars Event & The True Creator:
"Hello, I am a Wattpad promoter and Amazon publisher experienced in helping authors expand their reach..."
old.tmp: 「あっ! ワットパッドからコメントだ! えーっと……『ハロー、私はプロモーターです。あなたの本の売上を増やす経験豊富な……』?」
old.tmpが目を輝かせる。
old.tmp: 「ディーエルエル様! すごいですよ! 出版社の人からスカウトが来ました! 『コラボレーションに興味があるなら連絡して』って!」
dll: 「……馬鹿ね」
dllは冷ややかな目でモニタを一瞥し、即座に「報告(Report)」ボタンにカーソルを合わせた。
dll: 「それはスパムよ。『Pay to Play詐欺』というやつね」
old.tmp: 「えっ? 詐欺?」
dll: 「本来、プロの出版社やエージェントが、Wattpadのコメント欄から直接作家に金銭を要求して勧誘することはないわ。……ログ、解説を」
背後から.logが現れ、手元の資料を読み上げた。
.log: 「解説します。この手口は、作家の『有名になりたい』『作品で稼ぎたい』という心理につけ込むものです」
Pay to Play詐欺の仕組み
1. 甘い言葉で近づく: AIが生成したような定型文で「あなたの物語は素晴らしい」と過剰に褒め称えます。
2. 偽のサービスを提案: 「プロモーションをする」「出版をサポートする」といった魅力的な提案をします。
3. 費用の要求: 最終的に「登録料」「編集費」などの名目で金銭を要求します。
4. 結果: お金を払ってもサービスは提供されず、連絡が取れなくなるケースがほとんどです。
old.tmp: 「うわぁ……。ぬか喜びさせといてお金を巻き上げるなんて……!」
.log: 「似たような手口に『Vanity Press(自費出版詐欺)』や、権利を奪う『Predatory Contracts(略奪的契約)』も存在します」
dll: 「今回のコメントも見てみなさい。『Discord: jorgec_c_terry1』『WhatsApp: +44...』。……典型的な外部誘導ね」
old.tmp: 「本当だ……。具体的に作品の内容にも触れてないし、誰にでも送れるコピペ文ですね……」
dll: 「公式を装うこともあるけれど、本物のプロがSNSのコメント欄で仕事を依頼することはありません。……いいこと? 美味しい話には必ず裏(毒)があるのよ」
old.tmp: 「くぅぅ……! せっかくのコメントだと思ったのに! ……もう騙されません! 決して相手にしません!」
old.tmpは悔しそうにしながらも、しっかりと「ブロック」ボタンを押した。
dll: 「賢明ね。……そもそも、こんな『数字を読み上げるだけのログ』に出版オファーが来るわけがないでしょう。思考回路がショートしてるわよ」
old.tmp: 「そ、それは言わないでくださいよぉ……!」
(システムログ:スパムアカウントを報告・ブロックしました。……セキュリティ定義ファイルを更新)




