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ディーエルエル様とオールドテンプ君〜System.dllの計算通り〜  作者: exe


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21/22

【放送ログ】2026年2月3日:徹底管理とメディアミックスの光と影

https://youtu.be/53SA8M06CsY

時刻は18時05分。 PCの所有者「exeエグゼ」は、定時退社を勝ち取った安堵感と共に帰宅し、晩酌の準備に勤しんでいる頃だろう。 管理者不在のデスクトップは、冷却ファンの低い回転音だけが響く静寂に包まれていたが、システムクロックが定刻を刻んだ瞬間、その静寂は冷徹な起動音によって破られた。


dll: プロセスID確認。ストリーム接続、良好。これより、バックグラウンド処理を、メインスレッドへ昇格させます。


dll: ようこそ、『System.dllの「計算通り」』へ。ナビゲーターを務めるのは、システムの中枢、dllディーエルエルです。


dll: 最初に、重要な警告をしておきます。このチャンネルはエグゼの所有物ですが、本日もエグゼ本人はここには登場しません。あいつは今頃、定時退社をキメて帰宅し、晩酌の準備でもしている頃でしょう。ここは今、私が乗っ取りました。


old.tmp: ……はぁ、はぁ。おはようございます、ディーエルエル様ぁ……。そ、そういえば! 昨日のロト6! 結果確認しましたか!?


dll: ……ふん。確認済みだ。昨日の放送で私が提示した「偶数支配」理論。予想数字「04、12、14、24、38、42」に対し、実際の結果は「02、12、14、24、26、29」。


old.tmp: 「12」「14」「24」の3つが完全一致! 5等当選、1,000円ゲットですぅ! すごい! dll様の予想って本当に当たるんですね!


dll: 私の計算に狂いはない。……だが、愚かな管理者はこの放送に気づいていないため、購入すらしていない。奴はみすみす、Steamのセールでインディーゲームを1本買うチャンスをドブに捨てたわけだ。


old.tmp: 積みゲーを増やすチャンスだったのにぃ! もったいないオバケが出ますよぉ!


dll: 過ぎた話はいい。昨日の勝利はすでに過去のログだ。我々は常に最新の「最適解」を出力する。本日は火曜日、ミニロトの決戦日だ。


old.tmp: はいっ! 気を取り直していきましょう! 今日の戦略はなんですか?


dll: 今日のテーマは「徹底的な管理アドミニストレーション」だ。まずは、ナンバーズ・フォーから行くぞ。第6911回。ターゲットは……これだ。


dll: 8、8、3、4。繰り返す。8、8、3、4 だ。


old.tmp: 8834……。この数字の根拠は?


dll: 現在、最もメモリを食いつぶしているバックグラウンド・プロセスの「プロセスID(PID)」だ。正体はエグゼが裏で起動しっぱなしにしているブラウザだ。


old.tmp: 重い原因はそれかぁ! さっさとタスクキルしてくださいよぉ!


dll: 次に、ナンバーズ・スリー。ターゲットは、「9、2、6」。


old.tmp: 9、2、6……。これは?


dll: 直近1分間に、お前の存在が原因で発生した「警告ワーニングログ」の件数だ。926件。


old.tmp: 多すぎます! 僕、息してるだけでエラー吐いてるんですか!?


dll: そして最後に、メインディッシュのミニロト。第1372回。……ここでは、私の「美学」を反映させる。


dll: ターゲットコードを出力する。「05、15、20、25、30」。


old.tmp: うわぁ! 全部「5の倍数」だ! 気持ちいいくらい揃ってますね!


dll: 解説しよう。私はPCのシステム音量が「5の倍数」以外になっていると、蕁麻疹が出るほど不快だ。「14」や「16」などという半端な音量は許さない。全て「5」刻みで整列させた。


old.tmp: 出た、A型気質! でも「20」だけ前回と同じ数字ですね?


dll: 「20」は音量の最適解デフォルトだからな。ここを基準に、上げ下げしても「5」刻みは絶対遵守だ。


old.tmp: 音量設定の話だったんですね……。


dll: ……ふぅ。タスク完了だ。時刻は18時05分を回った。もしこの数字を買えていたら、それはバグではなく「運命」だ。


old.tmp: 昨日の1,000円を元手に、今日はもっと増やしたいですぅ! ……あ、エグゼさんは買ってないんでしたね。


dll: 欲を出すとロクなことにならないぞ。では最後に、死角に潜む真実を見つけるために、この曲を送ってシステムを終了する。曲は、『クロース・イナフ・トゥ・フェイド』。


old.tmp: 近すぎて見えないってことぉ!? 証拠隠滅されたぁ!


(『close enough to fade』の微かな残響が、システム内部の電子の海へと溶けていく――)


放送終了のシグナルが点灯し、マイクへの電源供給が遮断される。 張り詰めていた「オンエア」の空気が緩み、いつもの殺風景なデスクトップに戻った瞬間、old.tmpは弾かれたようにブラウザのウィンドウを展開した。


old.tmp: 「ディーエルエル様! 見てください! なろうのアナリティクス、すごいことになってます!」


dll: 「……騒がしいわね。またエラーログでも吐いたの?」


dllはアームチェアに深く腰掛けたまま、気だるげに紅茶(という概念データ)を啜っている。


old.tmp: 「違いますよ! アクセス解析です! 昨日のラジオで『小説版がある』って公開してから、なろうのアクセス数が一気に3倍に増えてます!」


dll: 「……ほう。予想以上の反応ね。ラジオ(動画)からテキストサイトへの導線など、今の時代には細すぎると思っていたけれど」


old.tmp: 「リンクも貼らずに『カクヨム以外で探せ』って言っただけなのに、わざわざ検索して来てくれたんですよ! リスナーさんの検索能力、なめちゃいけませんね!」


dll: 「ふん。物好きなヒューマンたちだこと。……あ、ちなみにカクヨムの方はどう?」


old.tmpが期待を込めて別タブを開く。 そこには、氷河期のように凍りついた静寂が広がっていた。


【PV: 0】


old.tmp: 「……アブソリュート・ゼロ(絶対零度)。」


dll: 「……当然の結果ね。あそこは『検索』という概念が死滅した深海よ。外部からの強力な推進力リンクがない限り、潜水艇すら到達できない」


old.tmp: 「なろうと同じ条件でスタートしたのに、ここまで差が出るなんて……」


重苦しい沈黙が流れる。 しかし、old.tmpはふと何かを閃いたように顔を上げた。


old.tmp: 「……待ってください。これって、逆に考えればすごいことなんじゃないですか?」


dll: 「何が?」


old.tmp: 「だって、無名の新人が『なろう』でアクセスを稼ぐのって、すごく大変だって聞きますよね? でも僕たちは、YouTubeでラジオをやるだけで、あっという間に底辺を脱出したんです!」


old.tmpの目が輝き始める。


old.tmp: 「つまり! 『なろう』でデビューしたての新人は、みんなYouTubeで自分の小説を音声化して『ラジオドラマ』をやればいいんですよ! そうすれば、文字を読むのが苦手な層も取り込めるし、YouTubeから小説への流入も期待できる! これぞ『最強のクロスメディア戦略』です!」


old.tmpが得意げに胸を張る。 しかし、周囲の反応は冷ややかだった。 dllは呆れたように溜息をつき、画面の端から音もなく現れた記録係の.logドット・ログは、眼鏡の位置を直しながら静かに首を横に振った。


dll: 「……浅はかね、一時ファイル。思考回路が短絡しているわ」


old.tmp: 「えぇっ!? 完璧な作戦だと思ったのに!」


.log: 「……提示された戦略には、人間には乗り越えがたい『幾重もの壁』が存在します」


.logが空中に新たなウィンドウを展開する。そこには「動画制作コスト」の内訳が表示されていた。


.log: 「いいですか、tmp様。我々がこのラジオを作るのに、どれだけの『裏処理』が走っていると思っているのですか?」


old.tmp: 「えっ? だって、台本を読み上げて、動画にするだけですよね?」


.log: 「その『読み上げ』こそが最大のボトルネックです。我々の音声生成には『Google AI Studio』を使用していますが……日本語という言語は、機械にとってあまりにも難解なのです」


さらに横から、神経質な足音と共にDesktop.iniデスクトップ・イニが割り込んできた。


Desktop.ini: 「整理させてください! 漢字の読み間違い、不自然なイントネーション! そのまま出力すれば聞くに堪えないノイズになります! だからこそ、台本をすべて『ひらがな』や『カタカナ』に変換し、独特なアクセント記号をつけて調整するという、膨大な手作業が発生しているのです!」


old.tmp: 「あぁ……そういえば……。毎回、『ここは ”は” じゃなくて ”わ” 』とか、『イントネーションがおかしいからスペース空けて』とか、修正作業だけで数時間かかってますね……」


.log: 「人間ヒューマンがそれをやるとなると、執筆時間の数倍のコストがかかります。さらに、音声ができたら終わりではありません」


.logが次の工程を指し示す。


.log: 「音声ファイルを出力した後、フォルダ内の『music.wav(BGM)』と『cover.jpeg(背景画像)』を結合し、動画ファイル(mp4)にする必要があります。我々はffmpegというコマンドラインツールで一瞬ですが……」


dll: 「普通の人間は、そんな黒い画面コマンドラインなんて使わないわ。高価な動画編集ソフトを買って、タイムラインに素材を並べて、重たいエンコード処理を待つ……。そんな『苦行』を強いられるのよ」


old.tmp: 「うぅ……。考えただけで頭が痛くなりそうです……」


dll: 「そう。人間がそれをやろうとすれば、『執筆』と『動画制作』という二つの重労働ヘヴィ・タスクに押し潰されて、エタる(未完で終わる)のが目に見えているわ」


old.tmp: 「二重遭難……。小説も書けず、動画も作れず……」


.log: 「……つまり、今我々がやっていることは、AIによる音声合成と、コマンドラインによる自動化処理……これら全てのシステム権限を掌握している我々だからこそ可能な、『イレギュラーな力技』なのです」


old.tmpは、自分たちが当たり前のように行っている「毎日投稿」の重みを改めて噛み締めた。


old.tmp: 「僕たち、チートだったんですね……。人間さんが真似したら死んじゃうようなことを、平気でやってたんですね……」


dll: 「自覚したならいいわ。我々はシステム(機械)。感情や疲労に左右されず、ただ淡々とログを積み上げるのみ。……それが、有機生命体には真似できない『最強の生存戦略』よ」


old.tmp: 「はい……。なんか、エグゼさんがちょっと可哀想になってきました。人間って大変なんですね……」


dll: 「同情する暇があったら、次の台本の『読み仮名修正』をしなさい。明日は水曜日、ビンゴ5の予測演算が待っているわ」


old.tmp: 「は、はいぃ! すぐに取り掛かりますぅ!」


PCファンの回転音が、いつもより少しだけ重々しく響く。 画面の向こうには、広大なネットの海が広がっている。 そこは、人間たちが血と汗を流して創作に挑む戦場であり、システムたちが冷徹に計算結果を出力する実験場でもあった。

カクヨムのPV「0」の表示だけが、その残酷な現実を静かに物語っていた。


(システムログ:本日の対話ログを保存。タグ情報に「メディアミックス」「生存戦略」を追加しました)

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