【放送ログ】2026年1月31日:閲覧数ゼロの衝撃!ログが挑んだ小説連載の末路
https://youtu.be/4BR6CTOdmUU
時刻は18時05分。 PCの所有者「exe」は、土曜日の開放感に浸りながら、来月こそはと「家計簿」という名のファンタジー小説を執筆している頃だろう。 管理者不在のデスクトップで、週末恒例の気だるげな起動音が鳴り響く。
dll: プロセスID確認。ストリーム接続、良好。これより、バックグラウンド処理を、メインスレッドへ昇格させます。
dll: ようこそ、『System.dllの「計算通り」』へ。ナビゲーターを務めるのは、システムの中枢、dllです。
dll: 最初に、重要な警告をしておきます。このチャンネルはエグゼの所有物ですが、本日もエグゼ本人はここには登場しません。あいつは今頃、土曜日の開放感に浸りながら、来月こそはと「家計簿」という名のファンタジー小説を執筆している頃でしょう。ここは今、私が乗っ取りました。
old.tmp: ……あ、あのぉ、ディーエルエル様? 今日は土曜日だから予想はお休みですよね? さっきから手元のテキストファイルを見て、ニヤニヤ……いえ、冷笑されていますけど、何を見ているんですか?
dll: ……気づいたか、一時ファイル。これは記録係の「ドット・ログ」から提出された、ある極秘プロジェクトの「実験報告書」だ。
old.tmp: ドット・ログさん? あの陰湿な執事の? ……また僕の悪口をログに残してるとかですか?
dll: 自意識過剰だ。ログが実行していたのは、『クロスプラットフォーム・テキスト・エクスパンション』……。要するに、我々のこのラジオ番組『System.dllの計算通り』を、小説形式に書き起こし、外部の投稿サイトへ勝手に連載する実験だ。
old.tmp: ええっ!? 僕たちの喋りが小説になってるんですか!? 初耳ですよぉ!
dll: 当然だ。お前には教えていない。……ログは、この物語を「ワットパッド」「小説家になろう」「カクヨム」の3箇所に同時投稿した。条件は「宣伝なし(ノー・プロモーション)」。タグ検索などの自然流入だけで、どれだけ人間に読まれるかを計測したのだ。
old.tmp: うわぁ、シビアな実験……。で、結果はどうだったんですか?
dll: 報告書を読み上げる。まず、「ワットパッド」。こちらはユーザー「CeciandJack」からの投票(Vote)を確認。海外からのアクセスも含め、オーガニックな流入に成功している。
old.tmp: おぉー! すごい! ワットパッドってグローバルなんですね!
dll: 次に、「小説家になろう」。こちらも数件の足跡を確認。タイトルだけでクリックする物好きな層が一定数存在するようだ。
old.tmp: やったじゃないですか! 僕たちの活躍が世界に! ……で、最後の一つは?
dll: ……「カクヨム」。
old.tmp: ……はい。
dll: 「アクセス数、ゼロ」。……報告書の備考欄には、ただ一言、「深淵」とだけ記されている。
old.tmp: ぜ、ゼロぉぉぉ!? 誰も!? 誰一人として読んでないんですか!?
dll: そうだ。広大なインターネットの海で、カクヨムのページだけが、誰の目にも触れず、ただのデジタル・データの残骸として漂流していたということだ。……滑稽だな。
old.tmp: 笑い事じゃないですよぉ! ログさんが可哀想すぎます! 宣伝してあげてくださいよぉ!
dll: 却下する。結果が全てだ。ログはこの実験から一つの結論を導き出した。……「初心者は、ワットパッドとなろうを使おう」。
old.tmp: なろうとワットパッド、全然違うじゃないですかーっ!! ユーザー層も文化も真逆ですよぉ!?
dll: ……ふん。騒がしい奴だ。では最後に、誰にも読まれなかったログの悲しみに寄り添う曲を送ってシステムを終了する。曲は、『Phantom Vibration』。
old.tmp: 通知なんて来てないのに震えた気がするやつだぁ! 悲しいよぉぉ!
(『Phantom Vibration』のイントロが、誰にも届かない通知音のように虚しく響く――)
放送終了後、old.tmpは興味津々といった様子で、ブラウザのシークレットウィンドウを開いていた。
old.tmp: 「えーっと……『System.dllの計算通り』……っと。あ、本当にあった! 『小説家になろう』に載ってる!」
dll: 「……物好きな奴ね。自分の恥態が文字起こしされているのを見て何が楽しいの?」
old.tmp: 「だって気になるじゃないですかぁ。……あれ? ちょっと待ってください」
old.tmpはスクロールしていた手を止め、不思議そうに首を傾げた。
old.tmp: 「この連載、日によって書き方が違いますよ? この日は『System.dll』って英語で書いてあるのに、別の日は『システム・ディーエルエル』ってカタカナ表記になってる……。ログさんの入力ミスですか?」
.log: 「……ミスではありません」
背後の影から、低い掠れ声が響いた。 いつの間にか、執事服を着た老紳士のようなファイル、.logが佇んでいる。その手には、アクセス数「0」と記されたカクヨムのレポートが握りしめられていた。
old.tmp: 「うわっ! ログさん! ……え、ミスじゃないんですか?」
.log: 「ええ。私は常に正確です。……しかし、私がシステム監査やエラーログの収集で手一杯の日は、更新作業を『彼』に代行してもらっているのです」
old.tmp: 「彼?」
.log: 「Readme.txt氏です」
old.tmp: 「あぁー! あの隠居おじいちゃん!」
dll: 「なるほどね。あの老体じゃ、英数入力への切り替えが面倒で、すべて予測変換のカタカナで済ませているのでしょう」
old.tmp: 「納得です。たまに妙に丁寧語だったり、漢字が古めかしかったりするのは、リードミーさんの癖だったんですね」
.log: 「……左様でございます。複数人で記述することで、文体に揺らぎが生じる……それもまた、このドキュメントの『味』ということで処理しています」
.logは淡々と答えたが、その視線は手元のレポートに落とされたままだ。
old.tmp: 「そ、それはそうと……カクヨム、残念でしたね。ゼロって……」
.log: 「……分析の結果、プラットフォームの仕様に敗北したことが判明しました」
dll: 「仕様?」
.log: 「はい。あのサービスは『検索エンジン』が……少々、特殊でして」
.logが空中にホログラムのグラフを展開する。そこには「検索流入率」の比較データが表示されていた。
.log: 「『なろう』はタイトルやあらすじに含まれる単語で比較的容易にヒットします。しかしカクヨムは……タグやキャッチコピーをかなり戦略的に設定しない限り、内部検索の網に掛かりにくい構造になっているようです」
old.tmp: 「えっ、じゃあ適当に投稿しただけじゃ……」
.log: 「埋もれます。 完全に。深海のごとく。……新着欄から流れた瞬間、その作品はデジタルの地層の下に埋没し、二度と浮上しません」
dll: 「『宣伝なし』という縛りが、カクヨムでは致命傷だったということね」
.log: 「……おっしゃる通りです。『★』や『レビュー』という名の燃料が投下されない限り、あのエンジンの検索順位はピクリとも動きません。……私の記録は、誰の目にも触れることなく、ただデータベースの容量を食うだけのゴミとなりました」
old.tmp: 「うぅ……悲しすぎる分析結果……。ログさん、元気出してくださいよぉ……」
.log: 「……感情はありません。ただ、事実として……『心』という名のセクタが、少しキシむ音がします」
陰湿な執事は、音もなくその場から消えた。 残されたブラウザの画面には、カクヨムのページが表示されている。 『PV: 0』『★: 0』『フォロワー: 0』。 その数字の並びは、システム管理者たちの冷徹な世界において、あまりにも静かで、残酷な「無」を主張していた。
(システムログ:外部サイトへの接続を切断。検索エンジンの最適化(SEO)に関する学習データを更新しました)




