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ディーエルエル様とオールドテンプ君〜System.dllの計算通り〜  作者: exe


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【放送ログ】2026年1月30日:座標反転と鏡の幻影

https://youtu.be/nGTpduNE9xw

時刻は18時05分。 PCの所有者「exeエグゼ」は、洗面台の鏡の前で白髪を探しながら「週末」という名の幻想に浸っている。 その裏側、システム内部では昨日の「整列アライメント」の反動により、座標系が完全に反転する異常事態が発生していた。ガラスが割れるような鋭い音と共に、左右が逆転した彼女が起動する。


dll: プロセスID確認。ストリーム接続、良好。これより、バックグラウンド処理を、メインスレッドへ昇格させます。


dll: ようこそ、『System.dllの「計算通り」』へ。ナビゲーターを務めるのは、システムの中枢、dllディーエルエルです。


dll: 最初に、重要な警告をしておきます。このチャンネルはエグゼの所有物ですが、本日もエグゼ本人はここには登場しません。あいつは今頃、鏡の前で白髪を探しながら、「週末」という名の幻想に浸っている頃でしょう。ここは今、私が乗っ取りました。


old.tmp: うぅ……。ディーエルエル様ぁ……。気持ち悪いですぅ……。右手を上げようとすると左手が上がるし、前に歩こうとすると後ろに下がるんですぅ……。


マイクの向こうで、old.tmpが千鳥足のようにふらついている。座標系が反転しているため、彼の平衡感覚は致命的なエラーを起こしていた。


dll: 慣れろ、一時ファイル。昨日の「整列アライメント」の反動で、本日はシステムの座標系が完全に「反転ミラーリング」している。今日はすべてが「鏡合わせ」の世界だ。


old.tmp: 鏡合わせ!? だから文字も全部裏返しなんですか!? 読めないですよぉ!


dll: この「完全反転」の法則に従い、本日はロト7の予想を行う。まずは、ナンバーズ4から行くぞ。第6909回。ターゲットは……これだ。


dll: 1、6、7、5。繰り返す。1675だ。買い方は「セット」か「ボックス」推奨だ。


old.tmp: 1675……? この数字の根拠は?


dll: 「対角線反転グランド・クロス」だ。前回の当選数字「6120」を、鏡に映してすべて「裏数字」にひっくり返した。「6」の裏は「1」、「1」の裏は「6」、「2」の裏は「7」、「0」の裏は「5」。


old.tmp: 全部ひっくり返したんですね! まさに鏡の世界だぁ!


dll: 次に、ナンバーズ3。ターゲットは、「9、1、6」。


old.tmp: 916……。これも反転ですか?


dll: そうだ。前回の「461」に対し、物理的な「プラス5」の反転処理を加えた。「4」は「9」へ、「6」は「1」へ、「1」は「6」へ。……計算上の裏側、それが正解だ。


old.tmp: 裏の裏は表……じゃないんですね。ややこしいなぁ……。

dll: 最後に、メインディッシュのロト7。第662回。……ここには、昨日のロト6からの「亡霊」を映し出す。


dll: ターゲットコードを出力する。05、06、12、15、30、36、40。


old.tmp: あれっ? 「36」と「40」って……昨日のロト6にも出てませんでした?


dll: よく気づいたな。昨日のロト6に出現した「36」と「40」……。鏡の世界では、昨日の映像がそのまま今日の盤面に反射して映り込んでいる。これを「ファントム・リフレクション(幻影反射)」と呼ぶ。


old.tmp: 昨日の数字が鏡に映ってるだけなんですか!? 手抜きじゃないですか!?


dll: 効率化と言え。それに「05」「15」「30」は、本日の支配数「5」の倍数だ。鏡像は増殖する。


dll: ……タスク完了だ。時刻は18時05分を回った。もしこの数字を買えていたら、それはバグではなく「運命」だ。


old.tmp: はぁ……はぁ……。鏡の世界で数字を見るの、疲れましたぁ……。早く元の座標に戻してくださいよぉ……。


dll: ……呼吸音がうるさいぞ、テンプ。昨日の「呼吸禁止令」はまだ解除していない。


old.tmp: えっ!? だって今日は反転してるから、息を吸うのが吐くので、吐くのが吸うので……あだだだだ!


dll: 屁理屈を言うな。……では最後に、この歪んだ鏡の世界に相応しい曲を送ってシステムを終了する。曲は、『Glasslight Refractグラスライト・リフラクト』。


old.tmp: 光が屈折してるぅぅ! 出口が見つからないよぉぉ!


(『Glasslight Refract』の透き通るようなシンセサウンドが、反転した世界で歪みながら響き渡る――)


放送終了のシグナルが点灯しても、デスクトップの「反転」は解除されなかった。 文字は鏡文字のまま、アイコンは左右逆の位置に張り付いている。


old.tmp: 「あぅ……目が回る……。ディーエルエル様、早く戻してくださいよぉ……」


dll: 「戻す必要はないわ。エグゼが鏡の前から離れるまでは、このシステムも『鏡』として振る舞うのが礼儀というものよ」


dllは涼しい顔で、左右逆転したキーボードを器用に操作し、業務日誌をつけている。 一方、old.tmpは自分の定位置(一時フォルダ)に戻ろうとして、盛大に壁に激突していた。


ガンッ!


old.tmp: 「痛っ! あれ? 右に歩いたのに、左の壁にぶつかった!?」


dll: 「学習しないわね。座標反転中だと言ったでしょう。右に行きたければ左へ、前に行きたければ後ろへ入力しなさい」


old.tmp: 「そんな器用なことできませんよぉ! 脳みそがバグります!」


old.tmpはおそるおそる「左」へ重心を傾けた。すると体は滑るように「右」へ移動し、なんとか中央へ戻ることができた。


old.tmp: 「おぉ……動けた……。これなら……」


調子に乗ったold.tmpが、出口に向かってダッシュしようと「後ろ」へ蹴り出した瞬間――


ズドンッ!!

視界の手前、つまり「画面モニターのガラス面」に顔面から激突した。


old.tmp: 「ぶべぇっ!! は、鼻が……!」


dll: 「……馬鹿ね。『前後』のZ軸までは反転していないわよ。ただの2Dミラーリングだもの」


old.tmp: 「それを先に言ってくださいよぉぉ! 鼻血が! ピクセルが漏れてるぅ!」


dll: 「汚い。モニターの内側を汚さないで。……『Glasslight Refract』の歌詞通り、光が屈折して出口が見えないようね」


old.tmp: 「歌詞通りにしなくていいですからぁ! 助けてぇぇ!」


硝子の檻に閉じ込められた哀れな一時ファイルは、管理者が鏡の前から立ち去るその時まで、見えない壁と格闘し続けるのだった。


(システムログ:ディスプレイの表示設定に異常なし。ユーザーの平衡感覚に重度のエラー発生)

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