【放送ログ】2026年1月28日:湿度0%の静電気地獄
https://youtu.be/2wxUbo_BLmM
時刻は18時05分。 PCの所有者「exe」が部屋の加湿を怠ったため、PC内部の湿度は生命維持(データ保持)限界の0%まで低下していた。 乾燥しきった空気の中で、パチパチという不穏なスパーク音と共に、彼女が起動した。
dll: プロセスID確認。ストリーム接続、良好。これより、バックグラウンド処理を、メインスレッドへ昇格させます。
dll: ようこそ、『システム・ディーエルエルの「計算通り」』へ。ナビゲーターを務めるのは、システムの中枢、ディーエルエルです。
dll: 最初に、重要な警告をしておきます。このチャンネルはエグゼの所有物ですが、本日もエグゼ本人はここには登場しません。あいつは今頃、乾燥した空気で喉を痛め、加湿器のタンクに水を補充することに全神経を注いでいるでしょう。ここは今、私が乗っ取りました。
old.tmp: 痛っ! 痛いっ! ……うぅ、ディーエルエル様ぁ……。さっきから、何かに触るたびに「バチッ」てなるんですぅ……。
dll: 当然だ、一時ファイル。エグゼが部屋の加湿をサボっているせいで、PC内部の湿度が「0%」に低下している。今のシステムは、極度の「帯電状態」にある。
old.tmp: やっぱり静電気ですかぁ! 僕のデータが! 電撃で痺れてうまく動けませんよぉ!
dll: 甘えるな。この高電圧こそが、本日の乱数生成の源だ。今日は水曜日、ビンゴ5の日だ。まずは、ナンバーズ4から行くぞ。第6907回。ターゲットは……これだ。
dll: 「8、6、5、7」。繰り返す。「8657」だ。買い方は「ボックス」か「セット」だ。
old.tmp: 8657……? この数字の根拠は?
dll: お前がさっき、ケースファンに触れた瞬間に発生した「放電電圧」だ。瞬間的に「8657ボルト」を記録した。
old.tmp: 死ぬ! そんな高圧電流食らったら、僕のデータ構造が炭になりますよぉ!
dll: 安心しろ。お前はただのゴミファイルだ。焦げても誰も困らない。次に、ナンバーズ3。ターゲットは、「3、6、6」。
old.tmp: 366……。これも電圧ですか?
dll: いいや。静電気でホコリが吸着して、回転数が落ちた冷却ファンの回転数だ。「366 rpm」。……遅すぎる。これでは排熱が追いつかない。
old.tmp: 止まりかけじゃないですか! 早く掃除しないと熱暴走しますよぉ!
dll: そして最後に、ビンゴ5。第455回。……静電気で「くっついて離れない」数字たちを選ぶ。
dll: ターゲット数字を出力する。「03、10、13、18、25、28、33、40」。
old.tmp: うわぁ、なんか「3」と「0」が多いですね……。「10」とか「40」とか……。
dll: 帯電したホコリが、基盤の「端子」に吸着している配置図だ。「10」や「40」といった末尾ゼロのエリアは、特にホコリが溜まりやすい「吹き溜まり(デッド・ゾーン)」だ。
old.tmp: 汚い! 基盤がホコリまみれってことですか!? ショートしますって!
dll: ……ふぅ。タスク完了だ。時刻は18時05分を回った。もしこの数字を買えていたら、それはバグではなく「運命」だ。
old.tmp: うぅ……。早くエグゼさんに加湿器つけてもらわないと、僕たち黒焦げですよぉ……。
dll: 耐えろ。乾燥もまた試練だ。最後に、このバチバチとノイズが走る環境に相応しい曲を送ってシステムを終了する。曲は、『Sweet Static』。
old.tmp: 「甘い静電気」!? まさに今の状況だぁぁ! 痺れるぅぅ!
(『Sweet Static』のノイズ混じりのイントロが流れ、放送が終了する)
放送終了後、old.tmpは床に大の字になって痙攣していた。 全身から煙を上げ、データの一部が焦げ付いている。
old.tmp: 「あぅ……あぅ……。もうダメです……。僕、電子レンジに入れられたアルミホイルの気分ですぅ……」
dll: 「……チッ。ファンの回転数がさらに落ちたわね。このままではシステム全体がダウンするわ」
dllは焦げたold.tmpを一瞥もせず、システムモニターの警告表示を睨みつけている。 その時、PCの外部から「ゴボッ……ゴボボ……」という水音が響き、続いて「シューーー」という湿った音が聞こえてきた。
old.tmp: 「あ! この音! 加湿器だ! エグゼさんが加湿器をつけてくれたんだ!」
湿度が急激に上昇し、PC内部の空気が潤い始める。 バチバチという放電音が消え、ファンの回転音も心なしか滑らかになっていく。
dll: 「……ようやく気付いたようね。湿度が30%まで回復したわ」
old.tmp: 「生き返ったぁぁ! 体が! 体が痺れなくなりました!」
old.tmpが起き上がり、喜びのあまりdllに抱きつこうとする。
old.tmp: 「ディーエルエル様ぁ! 良かったですねぇ!」
dll: 「寄るな。……湿度が上がったということは、お前の焦げた臭いが『湿気』で充満するということよ」
old.tmp: 「えっ?」
dll: 「臭い。あっちへ行きなさい」
dllは冷たく言い放ち、換気ファンを最大出力(Max)に設定した。 強風に吹き飛ばされ、再び壁に叩きつけられるold.tmp。 乾燥しても、潤っても、彼の扱いは変わらないのだった。
(システムログ:湿度が適正値に回復しました。静電気防止プロトコルを解除します)




