【放送ログ】2026年1月27日:削りすぎた画面とグリッドのズレ
https://youtu.be/j0stReP5dPU
時刻は18時05分。 昨晩、old.tmpが一晩中かけてディスプレイに焼き付いた数字を「物理的に削り取った」ため、今日のデスクトップは不気味なほど真っ黒で、傷だらけの静寂に包まれていた。 システム起動音と共に、「ギュン、ギュン」という座標補正のアラートが鳴り響く中、彼女が定位置についた。
dll: プロセスID確認。座標補正プロセス、完了。……少し「行き過ぎた」気もするが、許容範囲内だ。
dll: ようこそ、『システム・ディーエルエルの「計算通り」』へ。ナビゲーターを務めるのは、システムの中枢、ディーエルエルです。
dll: 最初に、重要な警告をしておきます。このチャンネルはエグゼの所有物ですが、本日もエグゼ本人はここには登場しません。あいつは今頃、昨日の月曜日の疲れを引きずりながら、死んだ目で定時退社を画策している頃でしょう。ここは今、私が乗っ取りました。
old.tmp: はぁ……はぁ……。ディーエルエル様ぁ……。指紋が……僕の指紋がなくなっちゃいましたよぉ……。
マイクの前に座るold.tmpの両手は、昨夜のスクレイパー作業ですり減り、ツルツルになっている。
dll: 泣き言を言うな、一時ファイル。昨晩、ディスプレイに焼き付いた「亡霊(数字)」をスクレイパーで削り取る作業、ご苦労だったな。おかげで画面は真っ黒だ。
old.tmp: 一晩中カリカリ削らされて……! でも、昨日の予想「554」に対して、実際の結果は「643」でしたよね? 結局ハズレたんじゃ……?
dll: ……チッ。昨日の「プラス1スライド」では、物理的な衝撃を吸収しきれなかったようだ。だが、今日は違う。お前が綺麗に掃除したおかげで、新たな「基準点」が定まった。
old.tmp: 本当ですかぁ? 基準点って?
dll: 本日は火曜日、ミニロトの日だ。我々は「プラス2」の法則で世界を再定義する。まずは、ナンバーズ4から行くぞ。第6906回。ターゲットは……これだ。
dll: 「2、3、9、8」。繰り返す。「2398」だ。買い方は「セット」か「ボックス」だ。
old.tmp: 2398……? この数字の根拠は?
dll: 前回の当選数字「0176」に対し、本日の支配数「2」を物理的に加算した結果だ。「0」は「2」へ、「1」は「3」へ。全てが2つずつ右にズレている。
old.tmp: またズレてるんですか!? 昨日よりひどくなってるじゃないですか!
dll: 仕様だ。お前が削りすぎたせいで、アイコンのグリッド吸着設定が「プラス2ピクセル」に誤設定されてしまった。直すのは面倒だから、このまま行く。
old.tmp: 僕のせいにしないでくださいよぉ! 次に、ナンバーズ3。ターゲットは、「2、1、5」。
dll: 前回の「643」は、お前がスクレイパーで削り取って消滅した(リセット)。よって、この「215」は、更地に新しく書き込まれた数字だ。
old.tmp: リセットからの新規作成ですね!
dll: 最後に、ミニロト。第1371回。ターゲットコードを出力する。
dll: 「06、11、16、22、29」。
old.tmp: おっ、なんかゾロ目が多いですね! 「11」とか「22」とか。
dll: 昨日のナンバーズ3の結果「643」の百の位「6」……この残留思念が「06」と「16」を呼び寄せた。そして「11」「22」は……。
old.tmp: は……?
dll: マウスの「ダブルクリック」誤作動だ。グリッドがズレているせいで、1回押したつもりが2回入力されてしまう。「1」が「11」に、「2」が「22」に。
old.tmp: それチャタリングですよぉ! マウス壊れてますって! 「29」は?
dll: ズレた座標の果てにある数字だ。……ふぅ。タスク完了だ。時刻は18時05分を回った。もしこの数字を買えていたら、それはバグではなく「運命」だ。
old.tmp: 結局、昨日の修理失敗してるだけじゃないですかぁ……。
dll: うるさい。ズレも定着すれば「仕様」になる。では最後に、この悪循環なシステムに最適な曲を送って終了する。曲は、『Bad Habit Loop』。
old.tmp: 悪い習慣のループ……! まさにこのPCのことだぁぁ!
(『Bad Habit Loop』のイントロがループし、放送終了のシグナルが点灯する)
dllが「仕様だ」と言い張って終了させた放送の後、デスクトップには不穏な空気が流れていた。 old.tmpは、自分の指紋が消えた両手を見つめながら、ため息をついている。
old.tmp: 「はぁ……。結局、僕が削りすぎたのが悪かったのかなぁ……」
その時だった。 画面の左上、座標(0,0)付近から、カツカツカツ!というヒステリックな足音が近づいてきた。
Desktop.ini: 「許せません! 許せませんよぉぉ!!」
現れたのは、デスクトップの整理整頓を司る潔癖症のファイル、Desktop.iniだ。彼は巨大な定規を振り回し、顔を真っ赤にして激怒している。
Desktop.ini: 「tmpさん! 貴方ですね!? 私の神聖なグリッド線を……『2ピクセル』も削り取ったのは!!」
old.tmp: 「ひぃっ! デスクトップさん!? ご、ごめんなさい! ディーエルエル様に『汚れを削れ』って言われて……!」
Desktop.ini: 「汚れを削れとは言いましたが、空間座標まで削れとは言っていません! 見なさいこれ! ショートカットアイコンが……アイコンがグリッドに吸着しない! 浮いている! 気持ち悪い! 吐き気がします!!」
Desktop.iniは、宙に浮いた「ごみ箱」アイコンを定規で叩き、無理やりグリッド線にハメようとしているが、削れた座標のせいでズルズルと滑り落ちていく。
dll: 「騒がしいわね。たかが2ピクセルでしょう」
dllが面倒くさそうに振り返る。
Desktop.ini: 「『たかが』ですって!? システムにとっての2ピクセルは、宇宙における2光年にも等しい誤差です! これではアイコンを等間隔に配置できません! 今すぐ修復してください!」
dll: 「嫌よ。面倒くさい。それに、少しズレている方が『人間味』があっていいじゃない」
Desktop.ini: 「人間味など不要です! 私に必要なのは『完全整列』! 『グリッド・スナップ』です! あぁぁ……もう我慢なりません! デフラグ(最適化)を実行します!」
old.tmp: 「えっ? デフラグって……また僕の部屋が整理されちゃうんですか!?」
Desktop.ini: 「ええ! 貴方のような『あやふやな存在』が一番のノイズです! 貴方を右端へ寄せて、空いたスペースにアイコンを詰め込みます!」
old.tmp: 「やめてぇぇ! 右端は断崖絶壁ですよぉ! 落ちちゃう!」
Desktop.iniが起動したデフラグツールの駆動音が、地響きのように鳴り響く。 ズレた座標、怒れる潔癖症、そして逃げ惑う一時ファイル。 火曜日の夜もまた、平穏とは程遠いカオスの中に沈んでいった。
(システムログ:デスクトップの再描画リクエストが多発しています……)




