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美しくあれ

鏡の中に移る私の姿は、誰がどう見てもふくよかでは表現しにくいほどの重量級のみため。確かにこの体型で何もないということはないけれど私は本当の美しさというのが何であるのかは理解している。


人は何が一番の幸せなのか、愛した人に愛され一生を終えること、病に犯されず寿命で命を終わらせること。そして何よりひもじい思いをしないこと。私の母親はすべて得ることができなかった。


 遡ること私たちはどんな家族よりも強いきずなを持っていた温かい家庭だった。けれど父はそんなことは思っていなかった。突然きれいな女性と同い年の少女を連れてきたと思えば、母に見せつけるように妾を作っていたことを告げた、彼女はすらりとした長い手足に、異国情緒漂うミステリアスな黒髪を流し父に寄り添い勝ち誇ったように「そんなデブだから愛想をつかされるのよ」と告げた。母はその日を境に食事の量を減らすようになっていく、最初はメインを抜き、それがどんどんエスカレートしていき、ついには、流行り病に犯されてしまった。


その時の母の姿は以前の柔らかくて、春の日差しのような温かさと香りに包まれたものとは異なり、鳥の皮のように伸び、その皮は細い骨にへばりついていた。ごつごつとした関節や骨が目立ち、優しい香りとは異なり薬と病人の独特の嫌な臭いをあびていた。


 そんな母が最期に弱弱しい腕を伸ばし、私の頬に触れ「貴女は美しくいて」とかすれた声で私につげた。けれど私は知っている、その彼女の求めた美しさが彼女を蝕んだことを、病に犯される前の母が一番美しかったことを。


 父の再婚と新しくできた妹の存在で、私のストレス発散方法は何かを食べることになってしまった。母に似てもとからふくよかだった私はどんどん大きくなった。背もだけれどもっ横幅も、貴族の令嬢がだらしない体つきになってしまうのは父親としても体裁がわるとおもったのか、私を領地にある農場へと連れて行った。そこにはたくさんの野菜が生き生きとして育ち、家畜たちが放牧されていた。そのとき私ははじめて食事になるものは元から生きていたということ、自分は命をもらって生きているのだ、…自分はなんて知らずに、与えられるだけの立場に甘えていたのだろう。家畜たちも同じだった。世話をし、健康を守り、最期のときには無駄にしない。

 肉となり、乳となり、皮となり、骨となる。どれひとつとして、命は余らない。


 私はその現場に立ち会い、初めて「食べる」という行為の重さを、身体で理解した。


 もっと知りたい、どうすれば健康な作物が育つのか、どうすれば食卓に並ぶ家畜たちの最後の苦痛を軽くしてあげられるのか。


私はその現場に立ち会い、初めて「食べる」という行為の重さを、身体で理解した。


この貴重な資源を、ただ消費するだけで終わらせてはいけない。

そう思ったとき、胸の奥に小さな火が灯った。


もし、もっと多くを育てられたなら。もし、飢えぬよう工夫ができたなら。もし、同じ材料でも、違う形で、違う命として食卓に並べられたなら。父親の意向とは異なり私は今まで以上に食事に、農作物、畜産業に興味を示すようになった。


食べすぎな体は一日の農作業をしていくうち、役に立つことになっていく。体力だけはどんどんついていく家畜の乳しぼり。寝床の藁を敷く作業、畑の管理それらをするたびに体感が鍛えられていったのだ。主治医も私は確かに体重はあるがそれは日々の農作業をしていることでできたからだということと父親に告げてこれ以上太るなと言われただけで何もお咎めがなく10年が過ぎた。


私の母国ルミナリエ王国には魔力を持つものは16歳になると創造主に祈りを捧げ自分の新しいギフト(名前)


学園で一番大きなサイズの制服をみにつけて王都中心にある大聖堂に向かうとギフトをもらうために並んでいる学友が歓談しており、私の姿を見ると駆け寄り自分のもらうギフトがどんなものなのか、逆に新しい名前を教えてくれる。


「では私の番になりますので聖堂の中に行ってまいりますわ」


シルクでできたローブを羽織りろうそくが導く大聖堂の中を歩いていく、王族、貴族、有名な資産家がこの神聖な儀式を見守っているその視線を見て見ぬふりをしながら私は、司祭様の前に行き、真実の泉という魔法具の前に手をかざすと真実の泉から。黄色、青、緑のひかりがあふれ私の体を包む。まるで初夏の日差しにつつまれ、優しい風が私の頬をなでる。


「コレー・ローゼンフェルトそなたのギフトを皆の前で真名を、ここに集う王族、貴族の前で告げよ。

そなたは、どのような名を授かったのか」


光が私の中に入り、目の前の司祭様の顔が見えた。


「私、コレー・ローゼンフェルト改め、セフィア・コレーローゼンフェルト」

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