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第10章 幕間

本日2話目の更新です。

ある日、王立工学研究院の定期進捗報告会の直前、ルクスから至急の伝言が届いた。

「急用が入った。俺の代わりに共同研究者を送る。」


院長ガイゼル・ロートレックはその一言に眉をひそめた。

(あいつに共同研究者なんていたか?)


一体どこのベテラン研究者が来るのかと考えながら、彼は部屋の奥で腕を組み、来訪者を待った。


やがて時間になると、研究院の扉が軽やかに開かれる。

——入ってきたのは、どう見ても幼く可愛らしい金髪の少女だった。


会場の空気が凍りつく。

ガイゼルはゆっくりと机から目線を落とし、恐る恐る問いかける。


「……迷子か?」


少女はぷくっと頬を膨らませ、腕を組んだ。

「——陛下、説明してないんですね!全くもう!」


そう言って、しっかりと背筋を伸ばし、落ち着いた口調で名乗った。


「ルクス陛下の共同研究者、ヴァイオレット・オルフェです。」


沈黙。


そして、周囲に衝撃が走る。


「数年前に陛下が電撃婚約したという、あの……?」

「あの時の……!? ということは……」


「……おいくつ、ですか?」


誰かが恐る恐る尋ねる。


「十二歳です。」


再びの衝撃。


(この少女と研究の話って、できるのか……?)


*


ヴァイオレットが椅子をひかれて席に着いた。戸惑いの中、定期進捗報告会が始まる。


口火を切ったのはヴァイオレットだった。彼女は淡々と、しかし淀みなく口を開いた。

「まずこちらの進捗ですが、光コンピュータの壁となっていたシグナルノイズ比についてですが、バイアス光の調整により……」

「大規模魔力送受信網については、水の魔力を上水、火の魔力を動力源、光の魔力を通信に使用する方針で進めるべきとの結論が出ました。ただし、相互干渉の問題が……」

次々と飛び出す専門用語、的確な分析、論理的な考察——まるで王立学術会議でも開かれているかのようだった。


研究員たちは次第に言葉を失い、目を回し始める。


そして、すべての報告を終えたヴァイオレットは、周りを見回すと、凛とした表情で問いかけた。


「以上です。何か質問ございますか?」


静寂。


やがて、誰かが恐る恐る口を開いた。


「……あのー……、何歳ですか?」


「十二歳です。」


その瞬間——


ガイゼルは腹を抱えて爆笑した。


「なるほど、あの王が電撃婚約するわけだわ!」


研究員たちも、呆れ半分、感嘆半分で顔を見合わせる。


こうして、この日を境にヴァイオレットは王立工学研究院、その院長室にまで顔パスで入れる存在となったのだった。

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