第10章 塔の扉が開く時
アルヴェオン王国歴一五一年、春。
西の空が茜色に染まり、やがて群青の帳がゆっくりと広がり始めるころ、ヴァイオレットを乗せた重厚な馬車は、王都の石畳を離れ、緩やかな丘陵地帯へと差し掛かっていた。
窓辺に肘をついた十一歳の少女は、頬杖をつきながら、徐々に色を失っていく空を眺める。夜の静寂が、少しずつ世界を包み込み始めていた。
(……久しぶりに、実家でだらだらできる!)
そんな思いが胸をよぎる。
長らく王宮での生活を送っていたが、年に一度の帰省が許されていた。両親と兄に会える喜びもさることながら、西部でしか手に入らない特殊な魔石を調達できる機会でもある。ヴァイオレットにとって、この帰省は研究の合間の貴重な息抜きだった。
しかし——
突然、馬車が激しく揺れた。
「……っ!?」
次の瞬間、車輪が軋みを上げ、馬の悲鳴が響き渡る。
「襲われています!伏せてください!」
御者の叫びが夜闇にこだました。
強い衝撃がヴァイオレットの体を前方へと投げ出す。咄嗟に座席の縁を掴み、なんとか体勢を立て直すと、すぐに窓の外を覗き込む。
月明かりの下——
黒いフードを被った男たちが、無言で馬車を取り囲んでいた。
彼らの手には、鈍く光る刃。静かに、そして確実に、包囲網を狭めてくる。
「光魔法使いよ……滅びよ。」
低く響く声。
それは、憎悪に満ちた呪詛だった。
(まさか、教団……!? まだ王国で活動を……)
警戒を怠った自分を悔いる暇もない。
(このまま捕まれば、確実に殺される——)
冷静に判断を下す。
(逃げるしかない!)
ヴァイオレットは、横転しかけた馬車の扉にそっと手をかけた。喧騒に紛れ、慎重に隙間を作る。そして、追っ手に気づかれぬよう、闇の中へと身を滑り込ませた。
*
冷たい夜風が、肌を刺す。
ヴァイオレットは、湿った草の上を這いながら、森の闇に紛れた。
「くそっ! ターゲットが馬車にいない!」
背後から響く怒声。
追っ手の足音が近づいてくる。枝を踏みしめる音、鋭い息遣いが森の静寂に溶け込む。
(……まずい!)
息を殺し、身を屈める。
じっとしている暇はない。この静寂の中では、光学迷彩の魔法を使っても、足音ひとつで居場所が割れるだろう。
ヴァイオレットは、慎重に立ち上がると、一気に駆け出した。風を切るように走る。靴が湿った土を蹴り、枝葉が視界をかすめる。
——どこか、この森には見覚えがある。
葉の匂い、木々のざわめき——胸の奥に、遠い記憶が蘇る。
(まさか……)
無我夢中で駆け抜けた先。
ふと、森の開けた場所に出ると、そこには——
ひっそりと佇む、小さな屋敷があった。
懐かしい扉。
(……ここは……)
かつて、自分がアストリアとして暮らしていた「森の家」。
ヴァイオレットは、扉へと駆け寄った。
*
王城の窓の外には、秋の夜風が冷たく吹きすさび、遠くで枯葉が舞い散る音が微かに響いていた。空には薄雲がかかり、月の光がぼんやりと城壁を照らしている。
ルクスは、茨の塔の奥深くにある研究室で報告を受けた。
ヴァイオレットが、帰省の途中で光魔法使いの撲滅を謳う集団に襲撃されたという報告。護衛の奮闘により襲撃犯は撃退したものの、ヴァイオレットの姿はどこにもなかった。行方不明。
その言葉を聞いた瞬間、ルクスの手元の羊皮紙が、強く握りしめられて歪んだ。
室内の魔導灯が、淡く揺れる。
「……そうか。」
それだけだった。
静かな声。だが、そこに宿る冷え冷えとした怒りを察し、報告に来た騎士たちは息を呑んだ。
ルクスは、ゆっくりと立ち上がる。
「襲撃犯は?」
「すでに捕えて、地下牢に——」
言い終わる前に、ルクスは踵を返していた。
「陛下!」
騎士たちが慌てて声をかけるが、誰も彼を止めることはできなかった。
*
石壁に囲まれた地下牢は、湿気を含んだ冷気が漂い、灯された魔導灯の光が粗末な鉄格子に淡い影を落としていた。その奥——暗闇の中で、ルクス・アルヴェオンは沈黙のまま、座り込む男を見下ろしていた。
「……ヴァイオレットをどうした?」
低く抑えられた声。だが、その静けさこそが、研ぎ澄まされた刃のような威圧感を生み出していた。
牢の中の男は、荒い息を吐きながら震える手で顔を覆った。顔には無数の切り傷が走り、唇は血で染まっている。それでもなお、彼は必死に口を閉ざし、何かを守ろうとするかのように首を振る。
「……言わないか。」
ルクスは無感情に呟くと、ゆっくりと指を持ち上げた。
次の瞬間、青白い光が奔る。
鋭利な光の刃が男の頬をかすめ、皮膚を浅く裂いた。焼け焦げるような痛みに、男は息を呑み、呻き声を上げる。
「最後に聞く。背後にいるのは、教団か?」
光の煌めきが牢獄の薄闇に鋭く揺れる。だが、男は答えなかった。ただ、切れた唇からじわりと血を滲ませながら、苦しげに笑った。
「……光魔法使いは……滅べ……!」
掠れた声で吐き出されたのは、呪詛であり、肯定だった。
ルクスの瞳が僅かに細まる。
「なるほど。」
彼は、ゆっくりと手を下ろした。そして、ひとつ深く息をつくと、目の前の男を冷然と見つめる。
——もはや、これ以上聞く価値はない。
次の瞬間、牢獄の中に閃光が迸った。
白銀の光が空気を切り裂き、男の体を貫く。悲鳴すらあげる間もなく、その命は光の奔流に飲み込まれた。
静寂。
血の匂いがかすかに広がる中、ルクスは冷ややかに手を払い、床に転がる亡骸に一瞥もくれず、ゆっくりと背を向けた。
ヴァイオレット——。
心の中でその名を呼ぶ。
また、教団に光を奪われてなるものか。
彼は歩き出す。胸の奥に燻る冷たい怒りとともに。
「馬を用意しろ。」
短く命じると、外套を翻し、闇夜へと踏み出した。
彼が向かう先は、秋の森。
ヴァイオレットの行方を追い、彼は迷いなく馬を駆る。
*
白み始めた秋の森は、夜の名残をわずかに湛えながら、静寂に包まれていた。
ルクスは馬を木に繋ぐと、一人で歩き出した。夜通し駆け続けた馬の息遣いが荒く、森の冷えた空気に白い吐息が溶けていく。
木々の間を吹き抜ける風が、乾いた落ち葉をわずかに舞い上げる。森の奥、うっすらと朝の日差しを受けて佇む煉瓦造りの家。
——森の家。
かつて彼が、アストリアとともに過ごした場所。
外壁は変わらず、深い緑のツタが絡まり、窓には薄く埃が積もっている。しかし、その時と決定的に異なるのは、赤外線の救難信号が、定期的に家から発されていることだった。
ルクスは、微かな光の波を感じ取り、静かに目を細める。
「さすがだ……いるな。」
迷うことなく、ルクスは赤外線信号を返しながら、ゆっくりと扉へと向かう。
蹄の音が遠のく。革靴が落ち葉を踏むたびに、小さな音が静寂の中に消えていく。
扉の前で立ち止まり、ルクスは喉の奥にこみ上げる得体の知れない感情を押し殺した。
怒りか、それとも安堵か。
壊されたままの扉を押し開けると、僅かに埃っぽい空気が鼻をかすめる。
ランプをかざし、室内を見渡す。
魔導書が並ぶ書棚、古びた机、温もりの残るソファ——すべてが、彼の記憶に刻まれているままだった。
そして——
「ヴァイオレット。迎えに来たぞ。」
その言葉に呼応するように、部屋の奥で古い置き時計が小さく揺れる。
——カタン、と。
その隙間から、彼女が現れた。
ヴァイオレット・オルフェ。
服の埃を軽く払い、静かにこちらへ歩み寄る。ランプの明かりが彼女の髪を柔らかく照らし、深い紫の瞳が、まっすぐにルクスを捉える。
その目には怯えも、不安もない。ただ、懐かしさを孕んだ穏やかさがあった。
そして——
「お帰りなさい。」
微笑む彼女の声が、ひどく自然に、森の静寂に溶けていった。
ルクスの足が止まる。
「……何を言っている?」
低く、押し殺した声が漏れる。
ヴァイオレットは一瞬だけ目を伏せ、静かに息を整えるようにしてから、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「私、実はアストリア・フェルナの記憶があるんですよ。」
——その言葉が、音もなく静寂に落ちた。
ルクスの瞳が、大きく揺れる。
彼は目の前の少女を凝視する。
ヴァイオレット・オルフェ。
そういう名の少女だったはずだ。だが——
彼女の声の調子、言葉の選び方、そして、彼を呼ぶその響き。
それは、確かに懐かしいアストリアのものだった。
ランプの火が、ぱちりと小さく弾ける。
*
秋の森は静かだった。夜の冷え込みがまだ残る澄んだ空気の中、朝日が木々の隙間から差し込み、黄金色の光が柔らかに大地を照らしている。
「そうだ!久しぶりに、パウンドケーキでも焼きましょうか。」
ヴァイオレットがそう言ったのは、朝もやがまだ森を包んでいた頃だった。
——そして、ルクスは朝一番に市場へと向かわされることになった。
王を使い走りにするとは、まったくアストリアらしい。ルクスはそんなことを思いながら、黙って買い出しへと出かけた。
彼がいない間、ヴァイオレットは一生懸命に台所を片付け、久しぶりの料理に胸を弾ませていた。
やがて、彼が戻ると、早速調理が始まる。
さらさら。
小麦粉を篩う音、卵が割れる軽やかな響き、泡立て器がボウルの中をくるくると回る音——それらが、暖炉の薪が爆ぜる音と共に、静かに室内に満ちた。
ヴァイオレットは木のボウルをしっかり抱え込み、一生懸命に生地を混ぜていた。時折、顔をしかめながら、ぎゅっと力を込める。その横で、ルクスは砂糖を計量する。
「……手際が悪いな。」
ぼそりと呟く彼に、ヴァイオレットはぴたりと手を止め、じとっとした目で見上げた。
「この体では、慣れていないんです。」
慣れた手つきで砂糖を計量し、スプーンをボウルの中に傾けるルクス。さらさらと砂糖が舞い落ち、ヴァイオレットは再び泡立て器を動かす。
出来上がった生地を型に流し込み、即席非接触温度測定魔法陣を使い、かまどでパウンドケーキを焼き上げる。
馴染ませる時間を待ちきれず——主にヴァイオレットが——二人は遅い朝ごはんとして、数切れずつ口に運んだ。
久しぶりに焼いたケーキは、一部が膨らみすぎ、一部が少し焦げていたが、それでも懐かしく、温かい味がした。
そして——残ったパウンドケーキを包み、二人は森の中へと向かって歩き出す。
甘く優しい香りが、木漏れ日の中で微かに広がる。
足元には、秋の草花がひそやかに揺れていた。風の音に混じって、小鳥の囀りが遠くで聞こえる。
しばらく歩くと、小さな白い墓標が現れた。コスモスが墓の周りに咲き誇り、柔らかな風に吹かれて揺れている。
ヴァイオレットはそっと膝をつき、指先で静かに墓標をなぞる。
「ただいま。」
そう呟く彼女の声は、どこか穏やかで、それでいて切なげだった。
隣でルクスは、黙って花束と、パウンドケーキを手向ける。風がケーキの甘い香りを運び、彼の金の瞳がゆっくりと閉じられた。
そこに立つ二人の姿は、森の木漏れ日に照らされ、どこか夢のように儚く、美しかった。
*
森は静かだった。金色の陽が木々の隙間からこぼれ、コスモスの花を優しく照らしている。秋の風が吹き抜け、淡い香りが二人の間を満たしていた。
「……ルクス。」
静寂を破るように、ヴァイオレットはそっと呟いた。
「あなたは、今、幸せですか?」
ルクスはすぐには答えなかった。
吹きすぎる風がふわりと彼の金の髪を揺らす。まるで迷いのない彫像のような横顔。しかし、その琥珀色の瞳は、どこまでも空虚だった。
長い沈黙の末に、彼はただ一言、短く呟いた。
「……わからない。」
彼の声は驚くほど静かで、落ち葉が舞う音にさえかき消されそうだった。
視線を落とし、握った手をじっと見つめる。
「王になり、教団を追放し、光魔法の有用性を示した。俺がやるべきことは、すべてやったつもりだ。」
淡々とした声の中に、どこか乾いた響きが混じる。
「ヴァルターは国を見ろとでも言いたげだ。でも、俺を捨て、アストリアを殺した国を、どうして見なければならない?」
言葉を吐き出すように、ルクスは呟いた。
ヴァイオレットは言葉を失った。ただ、彼の声に潜む孤独と、癒えることのない傷を感じ取るだけだった。
「研究に没頭し、アイデアが成功した時だけ、小さな光が俺を満たす。それが過ぎるとーーまた闇の中だ。」
ルクスは静かにコスモスの花を見つめる。
「……俺はずっと、探しているだけなんだ。かつて、あなたがくれた、あたたかい光を……。」
コスモスの花が、風に揺れた。その花を見つめるルクスの横顔は、どこか無機質で、感情を押し殺したかのように冷たい。しかし、ヴァイオレットには、それが小さなルクスが涙を流している姿であるように見えて仕方がなかった。
ヴァイオレットは目を瞑り、小さく息を吐いた。そして、迷いのない瞳でルクスを見つめる。
「ルクス、今日これから、二人で旅をしませんか。お忍びで。」
彼は一瞬、驚いたように顔を上げた。
「……旅?」
「王と王妃候補なのだから、一度くらいいいでしょう。」
ヴァイオレットは微笑んだ。しかし、その声には確かな意志が込められていた。
彼の世界は、今、茨に囲まれた闇に閉じ込められている。けれど——本当は、彼がどんな国を築いたのか、彼がどんな光を皆に与えたのか、自分の目で確かめるべきではないか。
「あなたと私の研究を使って、宰相が作った国を見てみましょう。」
ルクスはその言葉を噛みしめるように黙り込んだ。
風が吹き、森の木々がざわめく。
やがて、ルクスはゆっくりと目を伏せ、低く呟く。
「……好きにしたらいい。」
ヴァイオレットの唇が、安堵するように微かに綻んだ。
こうして、一日限りの旅が始まることとなった。
*
馬車の車輪が、滑らかに整備された石畳を転がっていく。目的地は、最寄りの蒸気機関車の停車駅。窓の外には、黄金色の穂が一面に広がる西方ルヴェラン領の風景が流れていく。
かつてこの道は、雨が降れば泥に沈み、乾けば土埃が舞うだけのひどい悪路だった。それが今では、土魔法で舗装され、馬車の揺れすらほとんど感じないほどに整備されている。
ルクスは窓の外を見つめながら、静かに息を吐いた。
「……昔とは、ずいぶん変わったな。」
ヴァイオレットは微笑みながら、ルクスの横顔を見つめる。
最初に見えたのは、かつて水没していた農村地帯だった。
馬車の窓を開けると、ふわりと麦の香りが風に乗って漂ってくる。秋の陽射しを浴び、黄金色の穂が穏やかに揺れていた。この地は、かつてヴェルナ川の氾濫によって浸水し、農地としての機能を失っていた。廃村同然となった土地に人の姿はなく、荒れ果てた水辺が広がるばかりだった。しかし今は——
「おーい、頼んでた新しい農機、来たぞ!」
屈強な農夫たちが、見慣れない機械の周りに集まり、期待に満ちた声を上げる。その中心には、蒸気機関を利用した耕運機があった。光魔法と土魔法、火魔法を組み合わせた新型の農業機械。試作段階ではあったが、これまでの手作業に比べ、格段に効率が上がることが見込まれていた。
車輪がゆっくりと動き出し、刃が土を鋤き返していく。
「これ、すごい楽だぞ!」
一人の農夫が笑顔を浮かべる。
「ぜーんぶ、国王陛下が光魔法で作ったらしいぞ!すっげえよなあ。」
忌憚のない言葉に、ルクスは思わず苦笑する。
*
蒸気機関車の駅に到着すると、ルクスはヴァイオレットと共に一等の切符を二枚購入した。改札口の向こう、遠くから警笛の音が響き、秋の澄んだ空気の中に白い蒸気がゆっくりと立ち上る。
次の瞬間、轟音とともに黒鉄の車両が駅へと滑り込み、圧倒的な質量が作る風がホームに渦を巻いた。列車が完全に停止するや否や、荷物の積み下ろしが素早く行われる。駅員たちは慣れた手つきで荷台を押し、商人たちは忙しなく声を張り上げている。
「行くぞ。」
ルクスは短く言い、ヴァイオレットとともに車両へと乗り込んだ。
車内は広々としており、磨き上げられた木製の座席が整然と並ぶ。窓の外では、煙を上げた機関車が再び動き出し、車輪がレールを噛み締めながら滑らかに進み始めた。
蒸気機関車は、馬車とは比べ物にならない速度で街道を駆け抜ける。車窓から流れる景色が目まぐるしく変わり、黄金色の穀倉地帯を過ぎ、深い森を抜け、遠くに都市の灯が見え始めた頃には、もう次の目的地に到達していた。
「……速いですね。」
ヴァイオレットが感嘆の声を漏らす。
駅を降りると、目の前には活気に満ちた交易都市ベルカストの風景が広がっていた。
かつて、アストリアとルクスがこの街を訪れた頃は、泥にまみれた荷車が道に嵌まり込み、魔物の襲撃を恐れる商人たちが怯えながら行き交っていた。だが今は——
「いやー、アルヴェオンは道がいい!荷馬車が楽に動くようになった!」
道端で果物を売る商人が、活気のある声で話している。
舗装された石畳がどこまでも続き、荷車は軽やかに進んでいく。
「大街道と蒸気機関車のおかげで、大儲けよ!熊も出ないしな!」
通りを歩く人々の表情は明るく、行き交う商人たちは皆、笑顔を浮かべながら取引をしていた。
ルクスは、楽しげに賑わう市場の様子を眺めながら、無意識のうちに拳を握りしめた。
「あなたたちの政策の成果ですよ。」
ヴァイオレットが優しく囁く。
ルクスは視線を落とし、低く呟いた。
「……そうか。」
最後に訪れたのは、ルヴェランとフロステンの境界にある、大規模な織布工場だった。二人は一般の見学者に紛れ、工場内を巡ることにした。
広々とした工場の中では、風魔法を利用した飛び杼と織機が、リズミカルな音を立てながら布を織り上げている。
かつては、職人たちが手作業で行っていた工程が、今では魔法技術によって大幅に効率化されていた。
「新しい服がこんな値段で買えるなんて!」
町の人々が笑顔で新しい服を手に取り、嬉しそうに布地の感触を確かめている。
ルクスは、その光景を見ながら、ゆっくりと息を吐いた。
かつて彼は、この国を「ただの道具」としてしか見ていなかった。
だが——今、目の前に広がるのは、自らが築き上げた新しい世界だった。
石畳を踏みしめる人々の足音。忙しく働く職人たちの掛け声。
どれもが確かに、この国が生きていることを証明している。
ああ、俺は——この国の人々に光を見せることができていたのか。
*
夜の帳が降りる中、蒸気機関車は再び王都ミナスへと向かっていた。窓の外には無数の星が瞬き、冷えた秋の風が頬を撫でる。車輪がレールを刻む音が一定のリズムを奏で、夜の静寂と調和している。
ルクスは無言のまま、車窓越しに流れる景色を見つめていた。
家々の窓に灯る暖かな光、街道を行き交う人々の笑い声。静かに揺れる街の明かりは、まるで夜空の星が地上に降りたようだった。
ここに広がるすべてが、彼の国——彼が築いた国だった。
「ルクス。」
ヴァイオレットの声が静かに響く。
彼女は向かいの席に座り、風に揺れるすみれ色のワンピースの裾をそっと押さえながら、真っ直ぐに彼を見つめていた。
「あなたは、確かにこの国を自身の光で照らしているんですよ。」
ルクスは、そっと目を閉じる。
「……私はただ、閉じこもって研究をし、それを宰相に渡していただけだ。」
「それが、この国の人々の可能性を広げたんです。」
ヴァイオレットはそう言いながら、夜風に吹かれた髪を耳の後ろへとそっと払う。
「あなたはずっと、光を失ってなんかいません。あなたは死んだ私から光を引き継いで……自身の光で、この国を照らし続けてきたんですよ。」
ルクスのまぶたが、かすかに震えた。
「これからも、あなたの研究でこの国は光に照らされるでしょう……でも、宰相閣下は、あなたにもっと学んで、もっともっと世界を広げてほしいみたいですね。」
ルクスは、眉を寄せる。
学ぶことが、世界を広げる——
ふと、胸の奥で、長らく閉ざされていた記憶が蘇る。
『変化することは、広がり、深くなることでもあります。あなたは、今よりもっと大きくなれますよ。』
——アストリアの声だった。
心が、ほんの少し、軋むように揺らぐ。
「私が貴族に生まれ変わったのは、あなたと一緒に国のことを学ぶためかもしれないと思うんです。」
ヴァイオレットの紫紺の瞳が、月光を受けて静かに輝く。
「これは、決してこれまでの人生の否定ではないです。もっと、世界が大きくなるってことなんです。」
彼女の言葉には、迷いがなかった。
「……俺は、間違っているのか?」
ルクスは、ふと呟くように問いかける。
ヴァイオレットは柔らかく微笑んだ。
「いいえ。あなたはあなたのままでいいんですよ。」
彼女は小さく肩をすくめると、少しだけ悪戯っぽく微笑む。
「でもね、光を見つけようともがかなくても、あなたの中にはもう光はあります。それでずっと私たちを照らしてきたってことを伝えたかったんです。それと、国の政治についても、ちょっと一緒に勉強したいなっていうのは私のわがままですよ。」
まるでいたずらを仕掛けるような微笑み。しかし、その言葉の奥には、深い愛情と信頼が滲んでいた。
ルクスはゆっくりと空を見上げる。
車窓の向こうには、果てしなく広がる夜空。星々が煌めき、蒸気機関車の窓にかすかに映り込んでいる。
——俺は、光をもう持っていた。
そして、学ぶことで、世界はまだまだ広がる。
その言葉が、ゆっくりと彼の中に染み込んでいった。
長い間、暗闇に閉ざされていた心の奥に、微かな光が差し込む。
いや、もしかしたら——
ずっと見ないようにしていただけなのかもしれない。
その光を。
*
王都ミナスの朝は、穏やかな陽光とともに始まった。
蒸気機関車の長い汽笛が静かな街に響く。霧がまだ薄く残る石畳の道を、サンクタス城に向かって二人はゆっくりと歩いた。
ルクスの足取りには、かつての迷いがなかった。
王宮の中庭に足を踏み入れると、朝の光が静かに降り注いでいた。
黄金色の葉が風に舞い、石畳の隙間に落ちていく。宮廷の侍従や近衛騎士たちが、王の帰還を目にして僅かにざわめくが、ルクスは彼らに目を向けることなく、まっすぐ研究塔へと歩を進めた。
サンクタス城の片隅にそびえる、分厚い茨に覆われた塔。
王だけの城。閉ざされた茨の塔。
ルクスは静かに手を上げる。
指先に宿る光が、絡みついた茨の根元をなぞるように輝き、瞬く間にそれらを切り落としていく。長年塔を覆っていた棘の壁が崩れ、秋の陽光が無防備に降り注いだ。
その瞬間——
「……これは驚いた。」
低く、どこか愉快そうな声が背後から響いた。
ルクスが振り向くと、そこには黒い外套をまとった宰相ヴァルター・カイムが立っていた。彼の鋭い茶色の瞳が、珍しく驚きの色を帯びている。
「研究塔を覆う茨が、ようやく取り払われるとは。」
ヴァルターの視線は、顕になった塔の外壁とルクスの表情を交互に映しながら、意味深に細められた。
「……ヴァルター。」
ルクスは真正面から彼を見据えた。そして、迷いなく言葉を紡ぐ。
「あなたにこの国のことを教えてほしいと思うのは、もう遅いのか。」
ヴァルターの目が、かすかに見開かれた。
長年、国政から逃げ続けていた王が、今、自ら求めてきたのだ。
かつて、ヴァルターが初めてこの少年を見たとき、その瞳に感じた輝き——あの光が、再び宿っていた。
「……ようやくその気になりましたか。」
ヴァルターは小さく息をつき、ゆっくりと微笑んだ。
——こうして、ルクス・アルヴェオンは、再び学ぶ道を選んだ。
王としての世界を広げるために。
そしてヴァイオレットとともに、宰相から渡された膨大な資料を前にしながら、一つずつ国政の要点を学び取っていった。
固く茨に閉ざされていた扉は、今、確かに開かれたのだった。
*
久しぶりに訪れた王立工学研究院の廊下は、ルクスの記憶の中より少し......いや、大分慌ただしくなっていた。高い天井に響く機械音、魔力を運ぶ管の微かな振動、そして通りすがる研究者たちの忙しない足音——そのすべてが、この場所が今まさに王国の技術発展の最前線であることを物語っていた。
院長室の扉を叩くと、中から気だるげな声が返ってくる。
「どうぞー……って、ルクス・アルヴェオン陛下が直々にこちらに足を運ぶとは、一体どんな風の吹き回しでらっしゃいますか?」
扉を開くと、そこには相変わらずのガイゼル・ロートレックがいた。ぼさぼさの髪、目の下の深いクマ、机の上には読みかけの論文と魔導設計図が山のように積まれている。明らかに寝不足のその男は、胡乱げな視線をルクスへ向け、棘のある口調で続けた。
「俺からの連絡は散々無視して、次々と論文だけ送りつけてきた挙句、今さら何の用でいらっしゃいます? まさかまた新しい技術の理論を放り投げて、こっちに全部丸投げするつもりでいらっしゃるんじゃないでしょうね?」
皮肉たっぷりの言葉に、ルクスは頭を下げた。
「……悪かった。ここ数年、お前たちに頼りすぎだったことは自覚している。工学研究院がいなければ、俺の構想はどれも机上の空論のままだった。本当に感謝している。」
その言葉に、ガイゼルの眉がわずかに動く。
「へえ......。それで、今度は何を思いつかれたんです?」
ルクスは机の上に、新たな設計図を広げた。その図には、王国全土を縦横に走る魔力伝達網と、それを基盤とした都市計画が描かれていた。
「今後十年で、王国全土に魔力通信網を張り巡らせる計画をヴァルターと立てている。それをエネルギー源かつ水源かつ通信網として活用し、街道、蒸気機関車網、上下水道を含めたインフラを根本から作り直すつもりだ。国策として予算は惜しまないつもりだ。」
ガイゼルの目が設計図を捉えた瞬間、その表情が僅かに変わった。
「……本気ですか?」
「当然だ。」
ルクスの金色の瞳が真っ直ぐにガイゼルを見据える。
しばらくの沈黙の後、ガイゼルは天を仰ぎ、顔を覆いながら呻いた。
「過労死……!」
それでも、その指の隙間から覗く口元は、どこか楽しげに歪んでいた。
「言っておきますけどね、陛下。俺は今でも貴族とか王族とか大嫌いなんです。けど……まあ、技術屋としては、この話を断る理由はございません。」
そう言いながら、彼は図面に手を伸ばし、指で滑らせるように確認していく。その目には、明らかに興奮が宿っていた。
「定期的に情報交換をする。俺がいけない時は、俺の共同研究者を行かせる。おそらくお前に、この計画のトップに立ってもらうことになるだろう。……それと、前のように砕けた物言いは今後も許可する。」
「......へえ、陛下、随分丸くなりましたね。」
からかうような言葉に、ルクスは肩をすくめる。
「あなたたちは我が国の柱であり、至宝だ。これからもよろしく頼む。」
そう言い残すと、院長室を後にした。
背後で、ガイゼルの独り言が聞こえる。
「……さっすがヴァルター、最終的にはいい王を選んだな。」
*
サンクタス城の秋は、澄んだ空気と穏やかな陽光に包まれていた。
王宮の回廊を進むルクスの足音が、石造りの廊下に静かに響く。彼の足取りは迷いなく、向かう先は異母弟であり、海軍最高司令官であるカイオス・アルヴェオンの執務室だった。
北部フロステンと東部エルヴァインにかけて帯状の工業地帯を築く——それが、ヴァルターから与えられた今回の議題だった。
「東部の新しい工業地帯について......?」
カイオスは、机上に広げた航海図の上から顔を上げ、僅かに眉を上げた。
「そうだ。」
ルクスは短く答える。
「エルヴァインの多くは塩害で農耕には向いておらず、王都ミナスと領都セリオスの間には、いまだ活用されていない土地が広がっている。しかし、ヴェルナ川が中央を通り、少し行けば石炭鉱山、さらに北部には光石と闇石を産出する鉱山ノクトリスがある。この条件を活かし、思い切って工業地帯として開発するというのはどうかと考えている。」
カイオスは一瞬、驚いたように目を細めたが、すぐに口元を歪め、短く笑う。
「……今さら、国王として僕に意見を聞こうというんですか?」
かつて、ルクスはこの国をただの道具として見ていた。そして、カイオスもまた、即位後の彼の姿勢を冷ややかに見ていたのだ。
しかし、ルクスは微動だにせず、その問いに静かに頷く。
「……そうだ。」
カイオスはしばらく黙ってルクスを見つめていたが、やがて肩をすくめ、航海図を端へ寄せると、新たな地図を広げた。そこには東部地域の詳細な地形が描かれている。
「確かに、あの土地を活用できるのはありがたいですね。」
指先で地図の一点を示しながら、彼は静かに語り出す。
「領都セリオスから海運で国内外への輸出入も可能です。工業化すれば経済的にも大きなメリットがあるでしょう。しかし……心配なのは公害です。」
カイオスは思案するように指を組む。
「今でも、石炭鉱山の影響で空気と水の汚染が問題になりかけています。東部の基盤産業である漁業への影響も懸念されるし、一部残る農業地域との水源の奪い合いにならないか、慎重に検討が必要だと思う。」
ルクスはその指摘を聞き、僅かに顎に手を当てた。
「なるほど……新しい視点だ。」
国を動かすということは、単に技術を導入するだけではない。その土地に生きる人々の営みを、細かく見据えなければならない。
「また、カイオスの意見を聞きにきても構わないか。」
ルクスは視線を合わせ、わずかに口元を引き結んで言った。
「……よかったら俺のことは、兄と呼んでくれ。前のように。」
カイオスは目を見開いた。
——長年、遠ざけられていた兄弟という関係。
驚きの後、彼は短く笑い、軽く肩をすくめる。
「……まあ、考えておきますよ。」
その言葉に、ルクスは微かに微笑みを浮かべた。
国を知り、関係を築く。新たな未来への一歩が、ここに刻まれた。
*
サンクタス城の隅の小さな塔、秋の午後の陽が静かに差し込む小さな客間。
ルクスが足を踏み入れると、奥の長椅子に腰掛けた、自分とそっくりの男と目が合った。
イグニス・アルヴェオン。かつて王位を争った双子の兄。
火傷の痕が残る頬を、窓から差し込む光が淡く照らしている。療養中という名目で人前にはほとんど出ていなかったが、彼の視線は鋭く、衰えなど微塵も感じさせなかった。
「俺の意見?」
手にしたワイングラスを軽く揺らしながら、イグニスは小さく苦笑する。
「お前が、俺に意見を聞きにくるとはな。」
ルクスは椅子に腰掛け、真っ直ぐ彼を見つめて言葉を発した。
「南部ラディアスとロマス帝国が警戒を強めているようだ。ノルデン皇国との同盟が決定的になったことで、アルヴェオンが次にロマス帝国を排除しようとしているのでは、という憶測が飛び交っている。」
イグニスはワイングラスの縁を指先でなぞりながら、静かに息をついた。
「ふん、南部の貴族どもは単純な連中だが、警戒心だけは無駄に強い。そして、やつらは利益だけで動くような連中じゃない。強さと、婚姻関係。両方が揃って初めて、納得する生き物だ。」
ワインを一口含み、イグニスは窓の外へと視線を投げる。
「そうだな……北部の水産資源を利用するのはどうだ。昆布や鮭、あわびの加工品。南部の貴族どもは、高級志向の贅沢品に目がない。海を越えて貿易路を拡大する余地があることを示せば、経済的な関心を引けるだろう。」
「それだけで、南部は納得するか?」
「いや、それだけじゃ足りない。」
イグニスはワイングラスを机に置き、指で軽く叩く。
「蒸気機関による兵力輸送をちらつかせて、いざというときの軍事力を誇示する。そしてもう一つ——ロマス帝国の血統を、王族か高位貴族に取り込むことだ。南部の連中は、血のつながりを重んじる。これを組み合わせれば、奴らはぐっと大人しくなるさ。」
その言葉に、ルクスは僅かに目を細める。
以前のイグニスならば、ただ力を誇示し、強さのみで従わせようとしたはずだ。しかし、彼の言葉には、より広い視野と戦略的な柔軟性が感じられた。
「……かつてとは違うんだな。」
ルクスが静かにそう言うと、イグニスは短く笑った。
「ミレイユのおかげだ。」
視線の先には、侍女のミレイユが控えていた。給仕をしながらも、彼を気遣うような穏やかな表情をしている。
ルクスは、二人の間に流れる静かな絆を感じ取った。かつては己の力のみを信じていたイグニスが、今は寄り添う者の存在を受け入れている。
「……また相談させてもらってもいいか。」
ルクスは静かに問いかける。
「……兄上。」
イグニスの動きが一瞬止まった。
驚いたようにルクスを見つめるが、すぐに目を伏せ、苦笑する。
「……手間のかかる弟だ。」
それは、遠い昔に交わされるはずだった兄弟の会話のようだった。
ルクスは微かに微笑み、立ち上がる。
「助言に感謝する。」
そう言い残し、彼は静かに部屋を後にした。
*
サンクタス城の執務室に戻ると、ヴァルターが既にそこにいた。
彼は長椅子に深く腰を下ろし、指先で梟の形をしたペンを弄びながら、書類の束を傍らに積み上げていた。その表情には、どこか余裕と探るような色が滲んでいる。
「どうでしたか、王政の実地研修は?」
ヴァルターは何気なく問いかけたが、その茶色の瞳には鋭い光が宿っていた。
ルクスはふと息をつき、口元に微かな笑みを浮かべる。
「……面白かった。」
その答えに、ヴァルターは一瞬驚いたように目を見開く。
だが、すぐに満足そうに頷き、手元のペンを軽く回した。
「それは、何より。」
その日から、ルクスはヴァルターのもと、本当の意味での王としての歩みを始めた。
机上の理論だけでなく、国のあらゆる動きに目を向け、経済、軍事、貴族社会の力学を学び、王国の舵取りを担う者としての責務を理解していった。
そして——
数ヶ月後、ひとつの大きな出来事があった。
イグニスの侍女ミレイユが、遠くロマス帝国皇帝の血統を引く家系であることが判明したのだ。
南部貴族を懐柔し、ロマス帝国との関係を安定させるための一手として、イグニスと南部貴族の養女になったミレイユの婚約が決定された。
かつては力のみを求め、戦いに生きていたイグニスが、静かに寄り添う者を得た瞬間だった。
婚約の祝いの席で、ルクスはイグニスに向き合い、光魔法を展開した。
「……兄上、目を閉じてください。」
イグニスは訝しげにルクスを見つめたが、やがて素直に目を閉じた。
彼の頬に刻まれた火傷の跡。過去の弟との戦いの傷——それを、ルクスのレーザー光が包み込む。
弾かれたような痛みの後、傷痕が白く、変化した。
「……これは?」
イグニスが鏡を覗き込む。
そこには、火傷の痕の薄くなった、かつての顔が映っていた。ここから数ヶ月かけて、さらに薄くなっていくだろう。
「婚約の祝いです。」
ルクスは静かにそう告げた。
イグニスはしばし沈黙した後、ふっと短く笑った。
「まったく、大した弟だ。」
ミレイユが、そっと嬉しそうに微笑む。
ヴァルターは、それを見ながら静かにグラスを傾けた。
その夜、王城の祝宴は、穏やかな喜びの光に包まれていた。
*
婚約の祝宴で賑わうサンクタス城の塔の上で、ルクスは一人、無言のまま石造りの欄干に手を置き、遥か彼方の地平を見下ろしていた。王都の街並みは暖かな灯りに包まれ、川沿いには、蒸気機関を積んだ船が静かに往来している。舗装された街道には、行き交う商人たちの馬車の轍が刻まれ、夜風が吹き抜けるたびに遠くから人々の談笑が微かに聞こえてきた。
かつて憎んでいた国だった。
己を捨て、たった一人の恩人を奪った国。
どれほど発展しようと、どれほど富もうと、心の奥底ではこの国を道具としか思えず、ただ利用するだけだった。
だが——今は、少しだけ違って見えた。
ガイゼル「陛下の共同研究者が子供なのに超賢いんだけど......?」




