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ふーちゃんのシャボン玉

作者: 月咲 幻詠

 これはちょっとだけ未来のお話。


 ある日、わたしたちの住んでいる地球が泣いてしまいました。


 地球が泣くと、大変です。大雨が降って、地面はゆれて、雷が落ちるのです。


 心のやさしいふーちゃんは、地球に聞きました。


「どうしてないているの?」


 すると、地球はこう答えたのです。


「にんげんが重くてつぶれそうなの」


 ふーちゃんは困りました。人は、地球でしか生きることができないと思ったからです。


 でも、地球のことも心配で、なんとかしてあげたいと思いました。


 けれど、うーんうーんと考えても、ふーちゃんにはどうしたらいいかわかりません。


 そこで、あることを思いつきました。


「そうだ! まっててね、おかあさんにどうしたらいいかきいてみるね」


 ふーちゃんはお家に帰って、お母さんに聞きました。


「おかーさんたいへん! ちきゅうがないてるの」

「どうして?」

「ひとがおもいって!」

「そんなわけないでしょう? 地球は大きいのよ」


 ふーちゃんはひっしになってお母さんにせつめいしました。


 けれど、お母さんは地球のことをしんじきって、ふーちゃんの話を聞いてくれませんでした。


 次に、ふーちゃんは学校の先生に話してみることにしました。


「せんせいせんせい、ちきゅうがないているの」

「どういうことだい?」

「ひとがおもいってないているの」

「大丈夫、地球は泣かないよ。生き物じゃないからね」


 先生もふーちゃんの話を信じてくれませんでした。先生はかしこいから、地球が泣くということをわからなかったのです。


 最後に、ふーちゃんは町の物知りなおじいさんに話をしてみました。


 おじいさんは不思議な人で、まわりの大人は近づきませんでしたが、ふーちゃんとは仲良しでした。


「ねぇねぇ、おじいさん。ちきゅうがないているの」

「地球が、どうしてかな?」

「ひとがおもいって」

「そうか、なるほどの」


 なんと、おじいさんはふーちゃんの話を信じてくれました。それがうれしくて、ふーちゃんは言いました。


「しんじてくれるの!?」

「信じるとも。君はいい子じゃからな」


 そう言って、おじいさんはやさしくふーちゃんの頭をなでてくれました。


「ふーちゃんは何か好きなことはあるかい? 好きなことをかいけつに役立ててみるのはどうかね?」


 ふーちゃんはなるほどと思いました。

 そして、おじいさんにありがとうを言って、お家でいっしょうけんめい考えました。


 ふーちゃんはシャボン玉が好きでした。だから、それを使って地球を助ける方法を考えたのです。


 次の日、ふーちゃんは公園に出かけました。そして言うのです。


「みんなシャボン玉になれば、シャボン玉はかるいから、ちきゅうもなかなくてよくなるよね」


 ふーちゃんはそう言うと、シャボン玉を飛ばしました。


 きれいに光るシャボン玉は、風に乗って世界中に飛んでいって、なんとさわった人をシャボン玉に変えてしまいました。


 シャボン玉は、お家や、車、電車に、船とか飛行機なんかも、全部シャボン玉に変えてしまいました。


 ふーちゃんは空にたくさんのシャボン玉を見ました。それはとてもとてもきれいで、楽しいものでした。


 けれど、シャボン玉はやがて消えてしまいます。一斉に割れて、飛び散ったシャボン玉はちょっと甘い匂いがしました。


————————


 あれから、長い時間が経ちました。


 地球はふーちゃんが子供の時とちがって、緑ゆたかでとても美しい星になりました。


 けれど、ふーちゃんはかなしい顔をしています。


「どうしてこんなことになっちゃったのかな」


 ふーちゃんは一人ぼっちになってしまったのです。


 もうふーちゃんには楽しいお話をしてくれるおじいちゃんはいませんでした。

 もうふーちゃんにはべんきょうを教えてくれる先生はいませんでした。

 もう、ふーちゃんにはやさしくだきしめてくれるお母さんはいませんでした。


 そうして、ふーちゃんは一人またシャボン玉を飛ばすのです。


 今のさみしさをわすれようとするように。


 楽しかったあの時を思い出すように。

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