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いってはいけない場所だった

作者: 青竹の芽

古地図の収集を趣味としている鈴木恭一すずききょういちは、江戸時代から昭和初期にかけての地図を200枚以上集めていた。彼の家は春日井市にあり、古地図を眺めることで過去と現在の変遷に思いを馳せることが楽しみだった。ある日、恭一は古地図の中に一つの不思議を発見する。南町にあった昭和初期の墓地が、現在では住宅地に変わっていることに気づいたのだ。GoogleMapで確認する限り、新築の家が立ち並び、特に古びた家は見当たらなかったが、隣の家だけは明らかに年季が入っていた。


興味を持った恭一は、その週末に現地を訪れることに決めた。土曜日の朝8時、彼は家を出発したが、道に迷ってしまい、目的地にたどり着くまでに2時間もかかってしまった。ようやく到着したその場所は、新築とされていたはずの家で、ツタが絡まっている空き家になっていた。夏の暑さにもかかわらず、彼の背中には寒気が走り、空気が重く感じられた。


不安を感じた恭一は、隣の古びた平屋に目を向けた。そこに住むと思われるおばあさんが家に入っていくのを見て、彼は思い切ってその家に向かい、インターホンを押した。少しの間が空いた後、扉が開き、そこには年配のおばあさんが立っていた。


「けぇりな」と一言だけを口にし、すぐに扉を閉じるおばあさんに対し、恭一はさらに質問を続けた。「ここは空気が変な感じがしますけど、何かあるんですか?」


おばあさんはちらりと彼を見つめ、静かに答えた。「ここはよそ者が来ちゃいけねえとこだ。」


その言葉だけで扉が閉じられると、恭一はその場に立ち尽くし、深い不安と謎の感覚に包まれた。帰り道、彼は「穢れ地」という言葉を思い出していた。ネットで調べてみると、穢れ地とは過去の出来事や不幸が積もり、神聖性を失った場所を指すことがわかった。もしかしたら、あの場所も何らかの「穢れ」を抱えているのかもしれないと、恭一は確信した。


それ以来、恭一はその場所を思い出すたびに、何か恐ろしいものが潜んでいるのではないかという考えに囚われ続けた。そして、彼は改めて地図を眺めながら、過去と現在の境界線に潜む暗い影について、ますます深く考えるようになった。



それ以降、仕事から帰るたびに、家に入る前に周りを気にするようになった。どこからともなく視線を感じるような気がして、誰かに見られているような不安に苛まれるからだ。夜の街灯の下で、背後から誰かが忍び寄っているのではないかと不安になり、無意識に足早に玄関まで向かう自分がいる。古地図の収集という趣味が、私の中に潜む恐怖を引き起こし、日常生活の中に影を落としている。あの「穢れ地」の出来事が、私にとっての謎の一部となり、日々の安寧をわずかに蝕んでいるのだ。

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